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第2節 

3 水利用の各段階における負荷の低減

(1)発生形態に応じた負荷の低減
 ア 工場・事業場対策
 (ア)排水規制の実施
 公共用水域の水質保全を図るため、水質汚濁防止法により特定事業場から公共用水域に排出される水については、全国一律の排水基準が設定されています。
内湾、内海等の閉鎖性海域に関しては、富栄養化を防止し海域環境の保全を図るため、窒素及び燐に係る排水基準を設定し、排水規制を実施しています(第1章第2節4参照)。
 (イ)上乗せ排水基準の設定
 全国一律の排水基準では環境基準を達成維持することが困難な水域においては、都道府県条例においてより厳しい上乗せ基準を設定し得るものとされており、すべての都道府県において上乗せ排水基準が設定されています。
 (ウ)水の循環利用
 排水処理による水質改善ばかりでなく、製紙パルプ業等の生産工程の改善による排水量の低減、ビル等における雑用水の利用促進など、水の循環利用による排水の改善が図られています。

 イ 生活排水対策の推進
 公共用水域の水質の汚濁の原因の一つとして、炊事、洗濯、入浴など人の日常生活に伴って排出される生活排水が大きな要因となっています。(講じた第1章第2節1(2)ア「公共用水域」参照)
 この生活排水対策を推進するためには、地域の実情に応じ、下水道、合併処理浄化槽、農業集落排水施設、コミニティ・プラント(地域し尿処理施設)等各種生活排水処理施設の整備を推進することが重要です。その際、都道府県ごとに策定された汚水処理施設の整備等に関する都道府県構想に基づき、効率的な汚水処理施設の整備を図ることが求められています。
 下水道整備については、引き続き流域別下水道整備総合計画の策定を推進し、効率的な汚濁負荷削減を進めることにしており、平成12年度は、第8次下水道整備七箇年計画(総額23兆7,000億円)の5年目として、普及が遅れている中小市町村の下水道整備及び未着手市町村における新規着手の推進、水質保全のための高度処理の積極的導入をはじめ、大都市等における下水道の質的向上、下水処理水等の下水道資源の多目的活用を推進しました。
 また、合併処理浄化槽については国庫補助制度が設けられており、平成12年度には2,325を超える市町村において、整備が図られました。
 平成13年4月1日より改正浄化槽法が施行され、下水道予定処理区域を除いて、浄化槽を設置する場合には、合併処理浄化槽の設置が義務付けられました。これにより、合併処理浄化槽の整備促進が格段に進むものと考えています。
 さらに、下水道等の汚水処理施設の効率的かつ計画的な整備を図る「汚水処理施設連携整備事業」については、平成12年度は新たに4市町の事業を認定し、平成9年度からの継続事業と併せて23市町村で実施しました。
 農業振興地域においては、農業集落におけるし尿、生活雑排水等を処理する施設を整備する農業集落排水事業1,553地区、緊急に被害防止対策を必要とする地区については、用排水路の分離、水源転換等を行う水質障害対策に関する事業直轄4地区補助31地区を実施しました。さらに、漁業集落から排出される汚水等を処理し、漁港及び周辺水域の浄化を図るため、漁業集落排水施設整備を161地区で実施しました。
 水質汚濁防止法には、1)生活排水対策に係る行政及び国民の責務の明確化、2)生活排水対策の計画的推進等が規定されています。同法に基づき、都道府県知事が重点地域の指定を行っており、平成13年3月31日現在、41都府県、195地域、461市町村が指定されています。また、これらの市町村による「生活排水対策推進計画」の策定及び生活排水による汚濁が著しい水路等を浄化する施設、廃油回収・石けん再生等設備などの整備に対して助成を行いました。
 また、ヨシ等の有する自然浄化機能の活用や木炭等の利用による浄化水路等の整備を行い、湖沼等の公共用水域へ排出される農業用用排水の水質保全対策に関する事業を25地区で実施しました。
 このほか、生活環境の保全等を図るとともに公共用水域の水質保全に資するため、毎年9月10日を「下水道促進デー」、10月1日を「浄化槽の日」とするとともに、「水環境フォーラム」を開催するなど、各種の普及、広報、国民的運動等を展開しています。

 ウ 非特定汚染源対策
 市街地、農地等の非特定汚染源については、生活排水対策の推進とともに、都市排水や農業等における対策技術の開発等を実施しており、また、初期雨水貯留による負荷削減や、水田のもつ浄化機能の把握などの調査検討も行っています。
 さらに、雨天時に宅地や道路等の市街地から公共用水域に流入する汚濁負荷を削減するため、新世代下水道支援事業制度水環境創造事業を推進しています。
(2)負荷低減技術の開発普及
 下水道事業の円滑な推進に資するため、下水道施設の合理的設計施工法、下水汚泥の処理処分法、小規模下水道技術、下水処理の高度化と水環境・水利用、下水道における雨水対策、下水道における地球温暖化防止対策、下水道における資源エネルギーの回収と利用、下水道施設の耐久性の向上、下水道の役割の多様化への対応、下水道の維持管理とその適正化等の諸課題について調査を実施しました。平成12年度は特に、処理水及び汚泥の安全性を高めるための技術開発や中小市町村における早急な下水道普及のため、施設の標準化等下水道施設のコスト縮減のための総合的な技術開発を重点的に実施しました。また、下水道の新技術、新工法を積極的に導入し、下水道技術の向上と効率的な事業執行のため、新世代下水道支援事業制度高度化促進事業を実施しています。
 窒素及び燐を除去する等の性能を有するし尿浄化槽の構造基準及び維持管理基準に基づいて、合併処理浄化槽の放流水質の安定化等のため、膜分離技術を活用した小型合併処理浄化槽の実用化に向けた技術開発とともに、維持管理面からの検討を行っています。
 水道水源地域等、高度処理を求められる地域や離島等における処理水の再生利用の要望が高い地区に対応するため、農業集落排水施設については、引き続き膜分離活性汚泥方式の開発を行いました。

(3)水環境の安全性の確保
 ア 有害物質の排水規制等
 環境基準の拡充・強化を踏まえ、ジクロロメタン等15物質を含む廃棄物の最終処分基準が定められています。
 また、平成12年3月に、ジクロロメタンによる洗浄施設及びジクロロメタンの蒸留施設を水質汚濁防止法の特定施設に追加しました。

 イ 水道水源の水質保全対策
 「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」に基づき、平成11年末までに6県11か所から該当県に対して水道原水水質保全事業の実施の促進の要請がなされ、これらを受けて、9か所に都道府県計画が、1か所に河川管理者事業計画が策定され、2か所について計画の策定が進められています。

 ウ 地下水汚染対策
 地下水汚染の未然防止対策については、水質汚濁防止法に基づき、トリクロロエチレン等有害物質を含む水の地下への浸透の禁止、都道府県知事等による地下水の水質の常時監視等の措置がとられています。
 地下水汚染問題については、汚染の未然防止に努めることはもとより、汚染された地下水の浄化のための対策が必要であり、水質汚濁防止法により、都道府県知事等が汚染原因者に対し汚染された地下水の浄化を命令することができることとなっています(図1-2-10)。
 また、「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」等により、事業者の自主的な取組を推進しています。
 環境基準項目のうち硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の地下水汚染については、公共用水域及び地下水における硝酸・亜硝酸性窒素の汚染源として、工場等からの排水、一般家庭からの生活排水、農用地への施肥が挙げられており、その対策が緊急の課題となっています。平成12年12月14日に中央環境審議会会長より環境庁長官に対し「水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目追加等について」の答申が行われたところであり、この答申を踏まえ、多種多様な汚染源の特性に応じた全国一律の対策に加え、地域の特性に応じた重点的な対策を進めていくこととしています。



 エ 農薬汚染対策
 農薬については、水質汚濁の未然防止を図る観点から、農薬取締法に基づき登録を保留するかどうかの基準を定めることとしており、平成13年3月現在、121農薬について、水質汚濁に係る基準値を設定しています。さらに、農薬による野生生物や生態系への悪影響の未然防止については、農薬生態影響評価検討会を開催し、平成11年2月に農薬の生態影響評価の基本的な考え方について中間的に取りまとめが行われ、現在、具体化に向けての検討が進められています。

 オ 水銀、PCBによる汚染底質除去対策
 水銀による底質汚染については、暫定除去基準を超え除去等の対策を講じる必要がある水域は全国で42水域ありましたが、平成2年7月末現在で対策を終了しています。なお、このほかに自然的な要因と思われる底質の汚染が1水域で確認されています。
 PCBによる底質汚染については、除去等の対策を講じる必要がある水域は全国で79水域ありましたが、このうち77水域は平成13年3月末現在で対策を終了しており、佐世保港(佐世保市)等の2水域については底質の除去等の対策又はその検討が進められています。
 カ 漁業公害等調査
 水銀、ダイオキシン類等有害物質の魚介類中での蓄積状況把握、蓄積機構解明、試験方法検討等の調査のほか、二枚貝等が体内に蓄積する貝毒のモニタリング手法の検討、複数が集中して立地する発電所の大量取放水による広域の漁業資源への影響についての検討等を行いました。

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