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第2節 

2 環境保全上健全な水循環の確保

(1)環境基準等の目標の達成・維持等
 ア 環境基準の設定
 水質汚濁に係る環境基準*、健康項目*については、現在、カドミウム、鉛等の重金属類、トリクロロエチレン等の有機塩素系化合物、シマジン等の農薬など26項目が設定されています。加えて、要監視項目として22項目を位置付け、水質測定の実施と知見の集積を行い、水質汚濁の未然防止を図ることとしています。
 また、平成11年7月に制定された「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づき、ダイオキシン類の水質環境基準が設定されています。
 生活環境項目*については、BOD、COD、DO*、全窒素及び全燐等の基準が定められており、利水目的から水域ごとに環境基準の類域を指定することとされています。国が類型指定を行う水域については、平成12年3月末までに、すべての水域において環境基準の類型が指定されました。
 なお、環境基準の水域類型指定後に、利水目的の変化等が認められる水域については、水域類型指定の見直しを計画的に進めることとしており、現在、類型指定の見直し作業が行われています。
 また、有害物質を含む底質の除去に関しては、水銀を含む底質及びPCBを含む底質について、それぞれ暫定除去基準が設定されています。

*水質汚濁に係る環境基準
水質保全行政の目標として、公共用水域の水質について達成し維持することが望ましい基準を定めたもので、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)と生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)の二つからなっている。

*健康項目
原則的に全公共用水域及び地下水につき一律に定められている。

*生活環境項目
河川、湖沼、海域ごとに利用目的に応じた水域類型を設けてそれぞれ基準値を定めている。

*DO
溶存酸素量。水に溶解している酸素の量。水生生物の生息に必要であり、数値が大きいほど良好な環境

(2)環境保全上健全な水循環機能の確保
 中央環境審議会での答申を受けて、平成12年12月に閣議決定された新環境基本計画では「環境保全上健全な水循環の確保」が、今後重点的に取り組むべき戦略的プログラムとして位置付けられました。この中で、流域を単位とし、流域の都道府県及び国の出先機関などの所管行政機関が、環境保全上健全な水循環の構築に向けた計画を策定することなどについての方策が示されました。
 また、環境保全上健全な水循環機能の維持・回復を図るため、森林については、森林計画制度に基づき、育成複層林施業等による森林の整備を通じて保水能力の高い森林の育成に努めるなど適切な維持管理を進めました。また、水を貯留するとともに地下水かん養能力等を有する水田等の農地の適切な維持管理を進めました。水質、水量、水生生物、水辺地等の保全を進めるため、ヨシ、木炭等を利用した浄化水路等の整備を行い、河川、湖沼等の自然浄化能力の維持・回復を図りました。また、流域別下水道整備総合計画の策定を推進し、効率的な水質保全施策を進めると同時に、都市域における環境保全上健全な水循環を確保するため、新世代下水道支援事業制度水環境創造事業等による下水処理水等の効果的利用及び緑化を図るとともに、透水性舗装や浸透ますの設置等による雨水の適正な地下浸透を進めました。海域においては、自然海岸、干潟、藻場、浅海域の適正な保全を推進するとともに、自然浄化能力の回復に資するよう、海岸環境整備事業、港湾環境整備事業等により人工干潟・海浜等を適切に整備しました。
 さらに、持続的発展が可能な水活用社会の構築に向けた新しい全国総合水資源計画の考え方を踏まえ、流域圏等を単位とした健全な水循環の確保に向けた計画策定を支援する流域水循環健全化プログラムの一環として、モデル流域圏において、地域の水利用形態、水循環機構等の調査及び検討を行いました。
 また、平成12年8月、水を所管する関係6省庁からなる「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」は、ホームページ「健全な水循環系構築に向けて」を共同で開設しました(http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/junkan/index.html)。

(3)地域の実情に即した施策の推進と公平な役割分担
 地域において、失われた水辺環境の再生、地下水かん養施設の設置等による枯渇しつつある井戸・湧水の復活など、水環境と市民のより良いふれあいを確保するための場を整備しました。
 水と親しむことのできる貴重な水辺である水浴場について、水質以外の要素も含めて快適性の評価を行いました。
 また、水生生物による簡易水質調査法を分かりやすく、親しみやすいものとするため見直しを行い、新たに作成した小冊子に基づき、地域住民等の参加を得て全国水生生物調査を推進しました。

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