前のページ 次のページ

第2節 

2 わが国に課せられた達成目標と今後の課題

(1)地球温暖化問題の現状からみたわが国の位置付け
 わが国はGDP当たりの二酸化炭素排出量の少なさにおいて、途上国を含む世界トップレベルにあります(図2-2-1)。これは石油ショック以降、産業部門を中心に省エネ技術が積極的に開発・導入されてきたことによります(表2-2-4)。
 一方、日本は温室効果ガスの排出量においては世界第4位の排出大国です(図2-2-2)。また、一人当たりの温室効果ガス排出量では、先進国においては低水準ですが、途上国との比較ではかなりの高水準となっています。したがって、わが国は地球温暖化防止において、世界に大きな責任を負っているといえます。







(2)わが国に課せられた目標と排出実態
 わが国は京都議定書において、2008年から2012年の第1約束期間において温室効果ガス排出量を1990年比で6%削減することが目標とされています。また、1990年に定められた地球温暖化防止行動計画では、2000年における目標として二酸化炭素排出量の1990年比±0%を掲げていましたが、1998年時点の排出量は逆に5.6%増加しています。温室効果ガス全体でみると1998年の排出量は基準年と比べて約5.0%増加しており、第1約束期間における目標達成のためには現時点における排出量から、約11%を削減しなければならないのです(図2-2-3)。この実質的な削減義務量は、今後排出量の増加傾向が続けばさらに大きくなるため、早めに有効な政策を講じることが必要です。
 GDPの推移とわが国における温室効果ガスの総排出量を比較すると、両者の変化はよく一致しています(図2-2-4)。
 1998年における温室効果ガスの排出量は減少しており、そのうち、部門別の二酸化炭素排出量の推移について見ると、産業部門からの排出量が最も大きく、これに運輸部門、民生部門が続いています(図2-2-5)。次に1990年における排出量を100とした場合の主要部門の推移をみてみると、産業部門と工業プロセス部門では横ばい又は漸減の傾向がみられるのに対し、運輸部門(約21%増)、民生部門(家庭)(約9%増)及び民生部門(業務)(約16%増)では大きく増加したことがわかります。民生部門(業務)の主な排出増加の原因はオフィス面積の拡大に伴う電力需要の増加ですが、運輸部門では自家用車保有台数の増加、乗用車の大型化、1台当たりの乗車率の低下、貨物車輸送量の増大が、民生部門(家庭)では世帯数の増加と家電製品の普及が主な原因と考えられています。個別の機器におけるエネルギー効率の改善効果がある一方、経済活動の拡大やエネルギー多消費型のライフスタイルの浸透によって二酸化炭素排出量は1990年比で増加しているという構図になっています。
 わが国は国産の資源・エネルギーに乏しく、資源・エネルギーの節約は直接的に低コスト化につながったこと、また二度の石油ショックの経験から省エネルギーに関する社会意識が高まったことにより、機器の効率化などにおいてはすでに世界のトップレベルにあります。また、人流、物流、交通流等の効率化など、複数主体の協力に基づく、温暖化防止に資する対策も各所で進められています。このように具体的に様々な国内における地球温暖化対策の推進を図ってきているにも関わらず、温室効果ガスの排出量は増加しています。社会全体における排出の削減を目指し、温室効果ガスの排出削減を促す仕組みが組み込まれた社会の構築が課題となっているのです。









コラム 燃料電池

 次世代型新エネルギー源として現在注目されているのが燃料電池です。燃料電池は、メタノールなどから取り出した水素に空気中の酸素を化学反応させて電気と水を取り出す発電装置で、高効率で発電が可能な上、温室効果ガスの排出が削減されます。また電池の数を増減させることで小規模から大規模までの発電量に対応できます。小型電源として利用する場合には、排熱も利用するコージェネレーションシステムとしても利用できます。日本では従来、大規模発電を前提とした開発が進められてきましたが、現在は自動車の動力源としての開発が各社で進められているほか、家庭用としての普及も期待されています。

前のページ 次のページ