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第1節 

2 私たちの社会の進むべき方向

 環境は、大気、水、土壌及び生物などの間を物質が循環し、生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、決して無限、不変のものではありません。また、環境は、人類を含む地球上のすべての生物の存続の基盤であり、その活動の前提であるとともに、その恵沢は現在世代と将来世代が共有すべきものです。私たちは、こうした環境の持つ重要な意義を踏まえながら、環境の面はもとより、経済的な面、社会的な面においても可能な限り、質の高い生活のできる社会を目指さなければなりません。
 このためには、私たちの社会自体を持続可能なものに変えていくことが必要です。「持続可能な社会」とは、一体どのような条件を満たしていなければならないのでしょうか。 まず、社会全体が環境の面から見て健全性を保っていることが必要です。そのためには、私たちの諸活動から生じる環境負荷が、環境の許容範囲内にとどまり、人の健康などに悪影響を与えないことが必要です。また、有害化学物質の環境への蓄積などの環境上の「負の遺産」を可能な限り解消し、将来世代により良好な環境を継承していかなければなりません。
 さらに、私たちの活動が、環境を構成する大気、水、土壌、生物間の相互関係によって形成される生態系などのシステムと健全な関係を保ち、それらに悪影響を与えないことが必要です。
 このような状態を保っていくために、私たちは可能な限り次のような条件を満たすよう、社会経済活動を営んでいくことが求められます(図1-1-15)。
 このような社会で営まれる個々の活動においては、可能な限り、環境負荷を生み出す資源・エネルギーの使用が効率化され、生産活動や消費活動の単位当たりの環境負荷が低減されることが必要です。すなわち、資源・エネルギーと環境の両面において高い効率性が達成されなければなりません。
 私たちは、20世紀に慣れ親しんだ大量生産、大量消費、大量廃棄型の生産と消費のパターンから脱却し、経済の成熟化を伴いながら、資源とエネルギーの大量消費に依存しない新しい段階に移行していかなければなりません(図1-1-16)。
 こうして私たちの社会を持続可能なものへ転換していく過程で得られた経験や今後得られる経験を広く国際社会に伝え、世界全体を持続可能な姿に転換していく壮大な試みに、わが国として積極的な役割を担うことが重要です。それは、経済の面からも環境の面からも地球規模で大きな影響を及ぼしているわが国の責務でもあるといえるでしょう。



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