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第3節 

3 運輸・交通

 交通に係る環境への負荷を低減するためには、交錯輸送の排除や輸送効率の向上など交通需要そのものを軽減又は平準化することに努めるとともに、自動車構造の改善、道路交通管理、道路構造、物流の効率化等の面から環境の保全に関する施策を総合的に推進する必要がある。そのため、以下の対策を実施する。
 大気汚染防止法(平成7年4月改正)において、自動車排出ガスの排出抑制に係る国民の責務が新たに規定されたことを踏まえ、広く国民に対して自動車排出ガスの抑制のため、自動車の適正な使用等を求めていく。また、環境保全の観点から望ましい交通体系の在り方について、総合的な検討を実施する。
 中央環境審議会答申等にそって自動車排出ガス規制の強化を引き続き図るほか、車種規制の着実な実施を始めとする、自動車NOx法に基づく施策を関係省庁、地方公共団体との連携の下に総合的に推進する。また、自動車騒音対策の着実な実施、騒音の深刻な地域における地域レベルでの道路交通騒音対策への支援等を実施する。
 さらに、地球温暖化問題の重要性に鑑み、二酸化炭素排出の少ない交通体系を形成するためにも、以下の対策を進める。
 低公害車・低燃費車の普及については、国や地方公共団体における公用車として積極的な低公害車の導入を図るとともに、その開発・利用等を支援していく。
 すなわち、低公害車の導入促進に資する税制上の特例措置を講じる。また、地方公共団体による大型ディーゼル代替、低公害車の重点的な導入に対する補助等を通じ、低公害車の大量普及を促進するとともに民間事業者等に対する公健法の基金等による助成等を行う。さらに、地方運輸局単位に官民で構成したエコ・トラック推進協議会による民間活力を通じた低公害トラックの導入促進等を図る。
 また、従来の内燃機関に比べて効率が高く、静粛性にも優れるほか、NOxやSOxの排出量が少ないという特長を有する燃料電池自動車の実用化、普及に向けた戦略の検討を行い、高効率燃料電池システムの実用化技術開発や、標準基準の整備に向けた研究開発を行う。
 加えて、平成11年の運輸技術審議会答申を踏まえ、環境に与える影響の少ない次世代低公害車として、燃料電池自動車、ジメチルエーテル自動車、液化天然ガス(LNG)自動車等の現在開発中の自動車について評価方法・技術指針等の検討を行い、技術開発の促進を進めるとともに、圧縮天然ガス(CNG)自動車、ハイブリッド自動車等の実用化段階にある先駆的低公害車について評価等を行い普及を促進するほか、燃料の種類によらず、排出ガス性能基準により低公害性を評価する低排出ガス車の認定制度を創設し、低公害車の更なる普及促進を図る。
 道路交通管理については、新交通管理システム(UTMS)の一環として、交通管制システムの高度化、信号制御の高度化、光ビーコン(交通情報収集提供装置)の整備による交通情報収集・提供機能の拡充等に努めるとともに、駐車規制の見直し、違法駐車の指導取締り、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の整備、違法駐車防止条例の制定の働きかけ等の総合的な駐車対策、速度超過、整備不良及び過積載車両の違反の指導取締り、自動車交通需要そのものを軽減又は平準化する交通需要マネジメント(TDM)、客待ちや貨物の積卸し等のため自動車を継続的に停止させるときにアイドリング・ストップを実施する旨の広報啓発等を推進する。特に、UTMSのサブシステムの一つである交通公害低減システム(EPMS)、すなわち光ビーコン、環境センサー等から収集された大気汚染状況、交通量等の分析結果を基に最適な信号制御を行い、車両の発進・停止回数を減少させるとともに、ドライバーに対し、大気汚染・騒音等の顕著な地域において、う回路情報、注意喚起情報等を提供するシステムは、実証実験の結果、交通公害の低減や車両からの二酸化炭素等の排出の抑止に極めて有効であることが判明したことから、地球温暖化対策の一環として、兵庫県内の国道43号や神奈川県川崎市の幹線道路を始めとする全国の幹線道路への導入を図っていくこととしている。また、居住環境の保全の観点から、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定や各種交通規制を実施するとともに、住居系地区等において交通規制とコミュニティ道路等の面的整備を組み合わせたコミュニティ・ゾーン等の形成等を推進していく。さらに、光ビーコン、電波ビーコン及びFM多重放送により道路交通情報を車載機へリアルタイムに提供する「VICS(道路交通情報通信システム)」については、引き続き全国への展開を図ることとしている。このほか、「地球温暖化対策推進大綱」に盛り込まれているモデル事業「環境にやさしい交通管理」を全国5都市において実施し、二酸化炭素等の削減に資する交通管理の手法を確立することとしている。
 道路整備の面からの対応としては、バイパス、環状道路を始めとする道路網を沿道環境保全に配慮しつつ体系的に整備し、道路交通を円滑化するとともに、交差点改良や新交通システム、路面電車、駐車場・駐車場案内システムの整備等により交通混雑緩和に努め、環境負荷の軽減を図る。また、VICS以外の道路交通情報提供のためのシステムについても、情報収集・提供のための機器を整備拡充する。さらに、日常的な都市交通手段としての自転車利用を促進するため、モデル都市において、自転車を安全・快適に利用するための環境整備を総合的・重点的に行う。
 道路構造対策としては、低騒音舗装、遮音壁、環境施設帯、高架裏面吸音板等の整備や道路緑化による緑豊かでうるおいのある道路の整備等を推進するほか、道路環境保全技術に関する研究・開発及び道路地下空間等を利用した新たな物流システムの研究・開発を行う。
 沿道対策としては、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づく沿道整備道路の指定を促進する。この指定に基づき、道路管理者と都道府県公安委員会が協力して、道路構造対策と交通流対策(交差点改良、交通規制)を含む「道路交通騒音減少計画」を策定するなど、まちづくりと一体となった対策を総合的に推進する。また、高速自動車国道等の周辺においては、住宅の防音工事助成等を引き続き実施する。このほか、各道路管理者においては、道路交通情報の収集・提供、車輛制限令違反車両等の指導取締り等により沿道環境の保全に努める。
 物流の効率化については、引き続き「総合物流施策大綱」等に基づいて推進する。具体的には、中長距離の幹線輸送において、海運・鉄道の積極的活用を促進するため、税制上の特例措置や日本政策投資銀行等の融資により、複合一貫輸送用機器等の整備を促進するとともに、鉄道貨物輸送力増強に必要な基盤整備に対する財政上の支援措置、船舶に対する税制上の特例措置、運輸施設整備事業団の共有建造方式の活用等によるモーダルシフト船(内航コンテナ船、RORO船等)の建造促進、複合一貫輸送対応ターミナル等内貿ターミナルの拠点的な整備等の施策を講じていくこととしている。さらに、国際海上コンテナ輸送については、国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナルの拠点的整備を進めていく。また、高規格幹線道路、主要な物流拠点を結ぶアクセス道路、車両の大型化に対応した道路等の整備、広域物流拠点の整備、自家用トラックから輸送効率のよい営業用トラックへの転換、積合せ輸送、共同輸配送の推進、トレーラー化及び車両の大型化の促進、情報化による帰り荷の確保等によるトラックの輸送効率の一層の向上を図るほか、高度道路交通システム(ITS)の整備、商慣行の改善、税制上の特例措置により輸入拡大対応物流施設や流通システム効率化物流施設の整備の推進といった物流拠点の集約化・適正配置等により交錯輸送の縮減を図っていくこととしている。
 人流対策についても、環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換の促進を図る。具体的には、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を進めるとともに、都市鉄道についても、複々線化や相互直通運転化等の既設路線の改良等に加え、新線の建設を行うことにより、混雑の緩和、速達性の向上、都市構造・機能の再編整備への対応、空港・新幹線等へのアクセス機能の強化、交通サービスのバリアフリー化・シームレス化等を推進する。交通サービスのバリアフリー化の推進については、より確実かつ効果的な実現を図るため、交通事業者に対し駅や車両などの交通施設を新たに整備・導入する場合に、法律に基づくバリアフリー基準への適合を義務づけることなどを内容とする「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案」を第147回国会に提出した。また、バスについては、パークアンドバスライド、コミュニティバス等のシステムの導入やノンステップバス等の高齢者や身体障害者等が利用しやすい車両の導入などバスの利用促進対策の推進に努める。
 さらに、「交通結節点改善事業」等により、駅前広場やバスターミナル・駅自由通路・アクセス道路の整備等公共交通機関の結節点強化による利便性の向上に努める。
 なお、これらのうち、交通流対策、道路構造対策、沿道対策等の沿道環境の改善対策については、「沿道環境改善事業」等により、関係する各道路管理者の連携を図りつつ、重点的に実施する。

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