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第2節 

4 海洋環境の保全

 1994年(平成6年)11月に発効し、平成8年6月に我が国が締結を行った「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)の趣旨を踏まえ、排他的経済水域(最大限200海里の海域)をも考慮し、海洋生態系の保全を含めた海洋環境保全のための施策の充実強化を図る。

(1)未然防止対策

 未然防止対策としては、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海洋汚染防止法」という。)に基づき、ばら積み輸送される未査定液体物質の査定等を行う。また、漂流・漂着するプラスチック類の実態調査等を踏まえ、発生源対策をとりまとめる。
 また、近年における海洋環境問題が主として日常生活に伴う環境への負荷によって生じるものであることから年2回の「海洋環境保全推進週間」等を利用して、海事、漁業関係者のみならず広く一般市民に対し、海洋環境保全思想の普及啓発に努めるとともに、海洋環境保全講習会等を通じて、関係者に対する指導を引き続き実施する。
 巡視船艇・航空機の効率的な運用等により厳重な監視取締りを行うとともに、監視取締用資器材の整備等、監視取締体制の充実強化を図る。さらに、船舶の不法投棄については、「廃船指導票」を貼付することにより、投棄者自らによる適正処分の促進を図る。
 さらに、漁場として重要な藻場・干潟の実態を調査するとともに、消長原因究明のための調査、森林・河川からの流入水等が藻場・干潟に及ぼす影響調査を実施するほか、一般市民等への漁場環境保全のための啓発普及活動を行う。また、効率的な海浜及び漁場の美化を総合的に推進するための計画策定、指導員の養成、廃棄物の除去等を行う漁場環境保全推進事業等に助成する。さらに、開発等により失われる藻場・干潟等の人工代替物の実例把握、実態調査及び技術評価を行い漁場環境の維持・修復方策について検討する。このほか「漁場環境保全の在り方」の考え方を整理するとともに、それらの成果をも踏まえた漁場環境への影響評価を実施する。

(2)排出油等防除体制の整備

 環境保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、?情報収集・提供システムの整備、?関係地方公共団体、環境NGO等に対する研修・訓練の実施、?傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、?油処理剤等の海洋環境への影響調査等を推進する。
 また、重油流出事故等の状況把握のための衛星データ利用研究を、宇宙開発事業団において実施する。
 大規模石油災害時に災害関係者の要請に応じ油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行う。
 また、漁場保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、?油回収資機材の整備、?関係都道府県等に対する汚染防止機材の整備への助成、?漁業影響情報図の作成・情報提供、?防除指導者の育成のための講習会及び実地訓練等への助成を行う。
 運輸技術審議会「流出油防除体制総合検討委員会」の報告書に基づき、外国船舶の立入検査強化等事故の再発防止対策や、防除資機材の開発・整備等流出油防除対策についても推進する。
 また、海上における油等の排出事故に対処するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制の確保及び防除資機材の整備の充実を図るとともに機動防除隊の業務執行体制の強化、海上災害防止センターへの指導、排出油防除に関する協議会等の組織化・広域化の推進及びこれらの協議会との連携のもとに行う各種訓練等の内容の充実を図ることにより、官民一体となった排出油防除体制の充実を図る。また、漂流予測体制の強化を引き続き図る。さらに、沿岸域における情報整備として「沿岸海域環境保全情報」の整備を引き続き行い、データベースの情報の充実を図る。
 油等の海上浮遊物の防除活動に資するため、一週間程度の長期にわたる漂流予測情報の提供体制の充実についても図っていく。

(3)赤潮防止対策

 赤潮防止対策としては、ヘテロカプサ等有害プランクトンにより引き起こされる赤潮に対して、漁業被害の防止のための技術開発等を行うヘテロカプサ赤潮等緊急対策事業等を実施するとともに、赤潮発生状況等の調査等を強化する事業について助成する。

(4)漁業被害救済対策

 原因者不明の油濁事故に対処するため、(財)漁場油濁被害救済基金の救済事業等に助成を行う。また、漁業共済制度において養殖共済の赤潮特約に係る純共済掛金について助成を行う。

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