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第1節 

5 地域の生活環境に係る問題への対策

(1)騒音・振動対策

ア 騒音に係る環境基準について
 平成10年9月に告示した「騒音に係る環境基準について」(平成11年4月施行)の円滑な施行を図るため、モニタリング体制の整備等、国、地方公共団体の緊密な連携を図りつつ、環境基準の達成に努めていく。
 その他、新たな騒音に係る環境基準に関して、騒音の性状、居住実態等に応じた騒音影響に関する知見を充実し、国民の生活に応じたきめ細かい行政対応をとるために、騒音による影響の評価に関する総合的研究を行う。

イ 工場・事業場及び建設作業騒音・振動対策
 騒音規制法、振動規制法に基づき、特定施設を設置する工場・事業場及び特定建設作業についての規制の適正な実施に努めるとともに、苦情が相当ありながら規制対象となっていない施設及び建設作業の騒音・振動対策について引き続き調査検討等を行う。また、建設作業の騒音・振動対策については、低騒音型建設機械・低振動型建設機械の開発・普及を引き続き推進する。
 さらに、騒音・振動対策の一層の推進を図るため、引き続き、騒音低減技術の開発状況の調査等を行う。

ウ 自動車交通騒音・振動対策
(ア)自動車構造の改善
 道路交通騒音対策については、自動車単体からの騒音の低減対策として、平成4年11月及び平成7年2月の中央環境審議会の答申等で示されたすべての車種について、平成13年までに騒音規制の強化が実施されることになったが、引き続き、自動車騒音低減技術の開発の促進を図るとともに、タイヤ騒音規制の有効性等について調査・検討を行う。
(イ)総合的施策
 騒音低減のための総合的施策については、平成7年3月の中央環境審議会の答申等を踏まえ、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の総合的な推進を図っていく。また、地方における道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進に資するため、地域レベルの道路交通騒音対策の基本方針の策定に対して支援を行っていく等により地域が一体となった道路交通騒音対策を推進しつつ、国においても関係各省庁が連携して各種対策を総合的に実施していく。
 具体的には、中央環境審議会答申の基本方針を踏まえつつ、実施地域レベルにおいても各施策実施主体が一致協力して、道路交通騒音の深刻な地域について、可能な限り道路構造対策を実施し、これに加えて交通流対策、沿道対策等を実施するとの考え方にのっとり、以下の施策等で構成された総合的な対策方針を立て、地域に応じた施策を推進していく。
 道路構造対策としては、可能な限り高架道路に遮音壁の設置を進めるほか、連続桁の採用及び既設桁の連結、低騒音舗装の敷設の推進等を図るとともに、特殊吸音体を備えた遮音壁、低騒音舗装の騒音低減効果とその持続性の向上等の技術開発等を行う。また、平面構造の道路においても騒音の観点に加えて沿道利用、景観等総合的な観点から地域の意向を踏まえつつ遮音壁の設置を推進するとともに、通常の遮音壁が設置できない地域においても低層の遮音壁や低騒音舗装の敷設等可能な限りの対策を実施する。二層構造の道路においては、高架、平面それぞれの道路における対策と同時に、必要に応じ、裏面吸音板の設置等総合的対策を図る。
 物流面からの対策としては、平成9年4月に閣議決定された「総合物流施策大綱」及び平成7年12月の「道路交通騒音の深刻な地域における実施方針について」に基づいて推進する。具体的には、信号機の新設・改造、交通管制センターの高度化等の交通安全施設等の整備による道路交通の円滑化、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備等港湾相互の適切な連携、港湾関連交通を幹線道路へ誘導するためのアクセス道路の整備等により、後背市街地の交通負荷の低減を図る。また、各地方において関係機関、民間事業者等で構成される推進会議を設置し、地域における物流の効率化等を推進するための具体策について検討する。さらに、自家用トラックから輸送効率のよい営業用トラックへの転換、積合せ輸送、共同輸配送の推進、高度道路交通システム(ITS)の活用、商慣行の改善、トレーラー化及び車両の大型化の促進等により、トラックの輸送効率の一層の向上を図る。また、輸送実態、道路の整備状況等を踏まえ、物流の合理化として帰り荷の確保及び代替道路の利用等、運転マナーの改善について運輸事業者に要請していく。
 人流対策としては、都市におけるバス交通の活性化や交通結節点の整備等による公共交通機関の利用促進を図る。特に、平成12年度は「交通結節点改善事業」を創設し、駅前広場・交通広場、アクセス道路、駅自由通路、パークアンドライド駐車場等の整備を重点的かつ総合的に実施する。
 交通流対策としては、沿道環境保全に配慮しつつ道路ネットワークの整備の推進、交通管制センターの高度化を図る。さらに、光ビーコン・電波ビーコン・FM多重放送により、道路交通情報を車載機へリアルタイムに提供する「VICS(道路交通情報通信システム)」については、全国への展開及びシステムの高度化に向けて取り組む。また、速度違反取締り等の強化、高速走行抑止システムの増設等による交通管理を行うとともに、ロードプライシング等の交通流の誘導措置の検討、交差点改良等により交通混雑の緩和を図り、騒音等の軽減を図る。
 沿道対策としては道路構造対策とあわせて、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づく沿道整備道路の指定を促進し、この指定に基づき、道路管理者と都道府県公安委員会が協力して、まちづくりと一体となった対策を総合的に推進する。また、高速自動車国道等の周辺においては住宅の防音工事助成等を引き続き実施する。また、都市計画等を通じた適切な土地利用の誘導、土地区画整理事業等の手法の活用等について関係地方公共団体への助言・支援を図る。
 なお、これらのうち、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の沿道環境の改善対策については、「沿道環境改善事業」等により、関係する各道路管理者の連携を図りつつ、重点的に実施する。
 また、新環境基準の達成に向け、総合的かつ計画的な対策推進を図るための検討を引き続き行っていく。

エ 航空機騒音対策
 公共用飛行場周辺における航空機騒音対策については、航空機騒音に係る環境基準の早期達成に向けて発生源対策及び空港周辺対策を強力に推進する。
 発生源対策としては、低騒音型機の導入、騒音軽減運航方式の実施等を促進する。昭和53年に強化された騒音基準に適合しない航空機については、段階的に運航の制限を行い、平成14年4月までに退役させる。
 また、空港周辺対策として、住宅防音工事、移転補償事業、緩衝緑地帯の整備等の空港周辺環境対策事業を推進し、空港と周辺地域との調和ある発展を図る。
 さらに、近年全国で立地の動きが見られるヘリポート、コミュータ空港等については、「小規模飛行場環境保全暫定指針」に基づき、その騒音問題の発生の未然防止に努めていく。
 自衛隊等の使用する飛行場についても航空機騒音に係る環境基準の早期達成に向けて、消音装置の使用、飛行方法の規制等の音源対策、運航対策に努めるとともに、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」を中心に周辺対策の整備を推進する。

オ 新幹線鉄道騒音・振動対策
 新幹線鉄道の騒音・振動を軽減するため、発生源対策及び技術開発等を計画的に実施するよう旅客会社等を指導する。
 また、「第3次75デシベル対策」の着実な実施など、引き続き環境基準の達成に向けて対策を推進するよう指導する。
 発生源対策に併せて行う民家等に対する防音及び防振工事については、今後とも対象となる家屋のうち申し出のあるものに対して助成が行われるよう指導する。
 さらに、環境基準の達成に向け技術開発が鋭意進められるよう指導していくとともに沿線土地利用の適正化を図る。

カ 在来鉄道騒音・振動対策
 在来鉄道の個々の騒音・振動問題については、関係機関と連絡をとりながら適切に対処していくこととしているが、新線又は大規模改良の計画に際しては、平成7年12月に定めた「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」に基づき騒音問題の発生を未然に防止するための対策を実施するよう指導していく。

キ 近隣騒音対策(良好な音環境の保全)
 生活騒音等の近隣騒音に対処するため、引き続き普及啓発事業等を行う。
 また、「残したい“日本の音風景100選”」事業のフォローアップを引き続き行うこととし、その一環として認定地団体等の参加による第4回音風景保全全国大会を開催する。

ク 低周波音対策
 低周波音の問題については、統一的な測定方法を確立するため、測定方法等に関するマニュアルを策定し、地方公共団体等に通知するとともに、同問題の改善を図るため引き続き調査検討を行う。

ケ その他
 社会問題化している水上オートバイ等による騒音問題対策として、(社)日本舟艇工業会との共同で、水上オートバイの利用実態に即した新たな騒音測定方法を確立し、騒音低減のための数値目標を作成するとともに、水上オートバイの利用方法、ユーザーのマナー等ソフト面での対策について検討を行う。

(2)悪臭対策

 悪臭防止法に基づく、嗅覚測定法(人間の嗅覚を用いた悪臭の測定法)による臭気指数の規制基準が整備されることに伴い、臭気指数規制制度の導入の推進を図るとともに、臭気指数規制の円滑な施行を図るため、地方公共団体の臭気指数規制導入に資するガイドラインの策定を行うとともに、嗅覚測定に係る実施体制の整備のため、地方公共団体職員を対象とした研修等を行う。
 また、悪臭対策を実施する場合の最適技術の導入等を可能とすることを目的として、脱臭機器等に係る性能評価指針策定のための調査を行うほか、悪臭防止法で採用している特定悪臭物質濃度の測定法の見直しや、におい質の評価に関する調査研究を実施する。
 さらに、事故により事業場から排出される悪臭に対する対策の強化及び臭気指数規制の実施に係る測定体制の充実強化を図る等のため、悪臭防止法の改正等、所要の措置を講ずる。

(3)その他の大気に係る生活環境対策

 良好な大気生活環境の実現方策に関する調査検討の一環として、首都圏の大都市等で、郊外と異なる気温上昇の分布を示す現象(ヒートアイランド現象)の対策手法に関する調査検討を引き続き行う。
 また、地域特性に応じた光害対策を推進するため、「地域照明環境計画」の作成の推進を図るとともに、光害対策の啓発及び環境配慮型の設備整備、製品使用を推奨していく。
 騒音等の公害により、著しく不適当な教育環境になっている公立学校の公害防止工事等に要する経費への補助を引き続き行う。また、私立学校の公害防止事業に対しては、日本私立学校振興・共済事業団が行う貸付事業において、平成12年度は貸付額5億円を計画している。

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