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第5節 

3 酸性雨の防止

 酸性雨問題に関して、北米やヨーロッパでは湖沼や森林等の生態系あるいは遺跡等の建造物などへの影響が早くから問題となり、昭和54年には「長距離越境大気汚染条約(ウィーン条約)」が締結され、これに基づき国際的取組が進められてきた。
 東アジア地域においても、各国の経済発展に伴い硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量が増大し、酸性雨問題が現実のものとなりつつあることから、酸性雨による悪影響の未然防止のための国際的取組を進めることが急務となっている。
 このため、東アジア地域における地域協同の取組の第一歩として、環境庁は、「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想」を提唱し、平成5年度から東アジア各国及び関係国際機関の専門家の参加を得て、東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合を開催するなど、その実現に向けて努力してきた。
 その結果、平成10年3月に横浜において開催された第1回政府間会合では、専門家会合の成果を踏まえ、ネットワークの具体的な活動内容である「ネットワークの設計」について検討が行われた。また、2000年(平成12年)に予定されるネットワークの本格稼働に必要となる各種手法を確立するためにネットワークの試行稼働を平成10年4月から実施すること、試行稼働期間中のモニタリングデータの集約・解析・保管、精度保証・精度管理等を行いネットワークの核となる暫定ネットワークセンターとして、新潟県に設置された財団法人日本環境衛生センター・酸性雨研究センターを指定すること、暫定事務局を環境庁に置くこと等が取りまとめられた。さらに、平成12年中頃に日本において第2回政府間会合を開催し、試行稼働の成果を踏まえて、ネットワークの正式稼働について検討を行うことが確認された。
 平成10年4月から開始された試行稼働には、現在、第1回政府間会合参加国に出席した10か国(中国、インドネシア、日本、韓国、マレイシア、モンゴル、フィリピン、ロシア、タイ、ベトナム)が参加している。
 平成11年度中には、平成10年度から引き続き、ネットワークの試行稼働活動として、精度管理プログラム、研修プログラム等を実施した。また、平成12年3月には第2回暫定科学諮問グループ(ISAG)会合及び第4回政府間作業グループ(WG)会合を開催し、技術的な観点からネットワークの試行稼働の評価を行うとともに、試行稼働を通じて得られた経験を基に、モニタリングガイドライン技術マニュアルの改訂等について議論を行ったほか、平成12年中のネットワークの本格稼働を目指し、ネットワークの組織や財政的な枠組み等を検討した。
 さらに、我が国としてネットワークの試行稼働に対応するため、ネットワークに登録している国内10か所の国設酸性雨測定所について、ネットワークの技術マニュアルに沿って測定項目の充実を図るとともに、暫定ネットワークセンターに分析機器等を整備し、その機能の強化を図った。

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