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第5節 

1 地球温暖化の防止

(1)気候変動枠組条約に基づく取組

 地球温暖化防止に対する取組を国際的に協調して行っていくため、気候変動枠組条約が、平成4年5月に採択され、平成6年3月21日に発効した。
 本条約は、気候系に対して危険な人為的影響を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガス濃度を安定化することをその究極的な目的とし、締約国に温室効果ガスの排出・吸収目録の作成、温暖化対策のための国家計画の策定とその実施等の各種の義務を課している。特に我が国を始めとする先進締約国等は、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を1990年代の終わりまでに従前のレベルに戻すことが条約の目的に寄与するものであるとの認識の下、政策を採用し、措置をとり、その内容について、条約が自国について効力を生じた後6か月以内に、及びその後は定期的に、締約国会議へ情報(通報)を送付することが義務付けられている。
 我が国は、本条約の義務の的確な履行に努めており、平成6年9月には、第1回の通報を、また、平成9年12月には第2回通報を条約事務局に提出した。
 平成7年3月から4月にベルリンで開催された同条約の第1回締約国会議において、現行の条約上の規定で不十分とされた2000年以降の期間に先進締約国等が講ずべき対策やその目標について、平成9年の第3回締約国会議で議定書その他の法的文書を採択すべく、検討するプロセスを開始することとなった(ベルリン・マンデート)。これを受け設置されたアドホックグループにおける検討等の国際的努力の結果、平成9年12月に京都で開催された第3回締約国会議において、先進締約国全体で、2008年から2012年までの間に1990年比で5%以上の排出削減を行うことが規定された京都議定書が全会一致で採択された。京都議定書では、先進締約国について排出削減のための数値目標、政策措置を定め、また、京都メカニズム(排出量取引や先進締約国間で排出削減のための事業を行う共同実施、先進締約国と開発途上締約国との間で排出削減のための事業等を行うクリーン開発メカニズム)等の新たな仕組みを導入している(5-5-1表参照)。


 同議定書の早期発効のためには、京都メカニズムのルールや吸収源による追加的なCO2の除去量の算定方法について早期にコンセンサスを形成する必要があり、平成10年11月にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催された第4回締約国会議では、京都議定書の早期発効の条件整備のための道筋を定める「ブエノスアイレス行動計画」が決定され、特に主要議題であった京都メカニズムの原則や手続きについては、第6回締約国会議においてその決定を行うための作業計画が定められた。平成11年10月から11月にドイツのボンで開催された第5回締約国会議では、「ブエノスアイレス行動計画」の実施を閣僚レベルで再確認するとともに、我が国を始め多くの国が2002年までに京都議定書を発効させる必要性を強く訴え、第6回締約国会議に向けた政治的機運の維持・強化を図ることができた。また、京都メカニズムや遵守制度などの主要な論点について第6回締約国会議で合意するために、今後の交渉の具体的な段取りが確定された。
 また、第1回締約国会議でパイロットフェーズを設定することが決定された共同実施活動については、第5回締約国会議で1999年末以降も継続することが合意された。平成11年度には、我が国としての共同実施活動の基本的枠組みである「気候変動枠組条約に係るパイロット・フェーズにおける共同実施活動に向けた我が国の基本的枠組み(共同実施活動ジャパン・プログラム)」(「地球環境保全に関する関係閣僚会議幹事会」及び「総合エネルギー対策推進閣僚会議幹事会」申合せ)に基づく認定プロジェクト(環境庁1件、農林水産省6件、通商産業省13件)のうち、新たに1件が相手国政府の承認を得た。
 また、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施事業に関するフィージビリティ・スタディを実施し、有望なプロジェクトの発掘や知見の蓄積に努めている。
 さらに、地球温暖化防止京都会議において発表した「京都イニシアティブ」に基づき、平成10年度から5年間で3000人の温暖化対策関連分野の人材育成(平成10年度は約1,100人)、最優遇条件による円借款(平成11年度末までに33件、約4,770億円を締結)等を実施したのを始め、途上国に対する研修等の政府開発援助における開発途上国の支援、関係国際機関への財政的、技術的支援を引き続き行った。環境庁では、平成11年7月に、滋賀県の彦根市において、アジア太平洋地域の開発途上国における温暖化対策を支援するため、「第9回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催した。

(2)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における検討への率先的取組

 IPCC(昭和63年に国連環境計画と世界気象機関により設立)は、平成7年に温暖化の予測、影響、対策を網羅する総合的な評価を行い、その成果を第2次評価報告書として取りまとめ、気候変動枠組条約第2回締約国会議(平成8年7月)に提出した。平成11年には、現在作成中の第3次評価報告書(平成13年完成予定)及び吸収源特別報告書(平成12年5月完成予定)の執筆者として我が国の専門家が参画した。また、我が国の提案により、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためのインベントリータスクフォースの中核的機能を平成11年7月に地球環境戦略研究機関内に設置し、本格的な活動を開始した。このように温暖化対策と密接に関連するIPCCの活動に対して、我が国は、IPCC副議長を務めていることを始め、各種報告書作成プロセスへの参画、資金の拠出、関連研究の実施など積極的に貢献を行っている。

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