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第3節 

3 運輸・交通

 運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス・騒音規制の強化を着実に実施した。また、自動車NOx法に基づく自動車使用の合理化等の指導を適切に進めるとともに、冬季における高濃度の大気汚染に対応するため、入出荷貨物車台数の抑制等を内容とする「季節大気汚染対策」を実施しているほか、12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施した。
 また、地球温暖化防止行動計画に基づき、二酸化炭素排出の少ない交通体系の形成を進めるとともに、自動車NOx法や「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について」(平成7年12月)に基づき、大気環境負荷の低減を図るため、旅客輸送については、バス・鉄道等の公共交通機関の利用促進等、貨物輸送については、中長距離の幹線輸送における鉄道・内航海運の積極的活用を通じた適切な輸送機関の選択の促進や効率的物流システムの構築等を図るほか、バイパス等の整備を行うなど、各般の施策を推進した。そして、環境負荷の低減を図るために、平成11年2月から、霞が関周辺地域の各省庁において職員が業務に用いる共用自転車を導入して省庁間等の移動に活用した。

(1)低公害車の導入等

 国等による低公害車の普及については、「率先実行計画」に基づき、政府保有の公用車のうち通常の行政事務の用に供するものに占める低公害車の割合を平成12年度において概ね10%に高めることを念頭に置きつつ、公用車への低公害車導入の可能性を積極的に検討し、その結果を踏まえ、率先的、計画的な導入に努めた。
 また、低公害性の抜本的な改良を目指す燃料電池自動車、ジメチルエーテル自動車、都市用超小型自動車等の次世代低公害車の技術開発の促進を進めたほか、圧縮天然ガス(CNG)自動車等の実用化段階にある先駆的低公害車について評価等を行い普及を促進した。
 また、民間事業者等に対し、公健法の基金による助成等を行った。トラック事業については、地方運輸局単位に官民で構成するエコ・トラック推進協議会を設置し、民間活力を通じた低公害トラックの導入促進、アイドリングストップ等エコドライブの推進等を図っている。

(2)交通管理

 安全で円滑な交通流を形成し、維持することは、自動車交通に起因する大気汚染・騒音・振動の低減を図る上で重要なことであり、道路交通公害の防止に資する以下の対策を講じている。
? 幹線道路においては、新交通管理システム(UTMS)の一環として、交通管制システムの高度化、信号制御の高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン(交通情報収集提供装置)を始めとする交通情報収集・提供機能の拡充による交通流の分散・誘導を行い、窒素酸化物や地球温暖化の原因である二酸化炭素等の排出量の抑制、騒音・振動等の低減を図っている。さらに、光ビーコン、電波ビーコン及びFM多重放送により道路交通情報を車載機へリアルタイムに提供する「VICS(道路交通情報通信システム)」については、平成11年度末までに16都道(札幌地区)府県の一般道路と高速道路並びに全国の高速道路においてサービスを開始するなど、全国への展開に向けて積極的に取り組んでいる。
? 都市部を中心に、各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めている。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、良好な生活環境確保のための生活ゾーン規制を実施したほか、自家用自動車から大量公共輸送機関への転換を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システム(PTPS)の整備等を行っている。また、良好な生活環境を確保するためにコミュニティ・ゾーンの形成等に努めている。
? 都市内における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、悪質・危険性、迷惑性の高い駐車違反に重点を置いた取締り、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の整備、違法駐車防止条例の制定の働きかけ等の総合的な駐車対策を推進している。
? 大気汚染・騒音・振動等の原因ともなっている過積載運転に対しては、荷主等の背後責任追及を積極的に実施するなど、取締りを一層強化している。
? 地球温暖化・交通公害対策の観点から、交通の方法に関する教則に、客待ちや貨物の積卸しなどのため自動車を継続的に停止するときにアイドリング状態を避ける旨を盛り込み、アイドリング・ストップを一定の場合において実施するよう広報啓発に努めた。

(3)道路構造の改善及び沿道環境の整備

 道路整備の面からの対応としては、バイパス、環状道路を始めとする道路網の体系的整備により道路交通を分散、円滑化するとともに、交差点改良や新交通システム、路面電車、駐車場・駐車場案内システムの整備等により交通混雑を緩和し、環境への負荷の軽減を図っている。また、道路環境保全技術に関する研究・開発及び新たな物流システムの研究・開発を行っている。さらに、日常的な都市交通手段としての自転車利用を促進するため、都市における自転車利用のための環境整備を全国的に展開していく必要があり、全国のモデルに相応しい自転車道・自転車駐車場の整備を先導的に実施するモデル都市をコンペにより選定した。なお、バイパス等の整備に当たっては、所要の環境影響評価を実施し、公害の未然防止に努めている。
 また、低騒音舗装の敷設や環境施設帯、遮音壁等の整備などの道路構造の改善や、道路緑化による緑豊かでうるおいのある道路の整備を推進している。
 沿道対策としては、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づく施策等を推進している(詳細は第1章1節5ウ(イ))。
 なお、これらの沿道環境の改善対策を、関係する各道路管理者の連携を図りつつ重点的に実施する「沿道環境改善事業」を平成11年度に創設した。

(4)物流の効率化

 自動車交通に起因する環境負荷を軽減するには、自動車単体についての対策と並んで、物流の効率化を図り、環境負荷の少ない交通体系を形成することが重要である。
 そのため、平成9年4月に閣議決定された「総合物流施策大綱」等に基づき、次のような物流の効率化のための施策を講じることにより、貨物分野のエネルギー消費効率の低下などの様々な問題の対応を図っている。
? 中長距離の幹線輸送においては、海運・鉄道の積極的活用を進めるため、税制上の特例措置や日本政策投資銀行等の融資により、複合一貫輸送用機器等の整備を促進するとともに、鉄道貨物輸送力の増強に必要な基盤整備に対する財政上の支援措置、船舶に対する税制上の特例措置、運輸施設整備事業団の共有建造方式の活用等によるモーダルシフト船(内航コンテナ船、RORO船等)の建造促進、複合一貫輸送対応ターミナル等内貿ターミナルの拠点的な整備等の施策を講じている。さらに、国内陸上輸送への負荷の低減を図るため国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナルの拠点的整備を進めている。
? トラック輸送においては、自家用トラックから輸送効率のよい営業用トラックへの転換、積合せ輸送、共同輸配送の推進、トレーラー化及び車両の大型化の促進、情報化による帰り荷の確保等により輸送効率の向上を図っている。
? さらに、高規格幹線道路、主要な物流拠点を結ぶアクセス道路、車両の大型化に対応した道路等の整備、倉庫、トラックターミナル等の物流拠点の集約化・適正配置、高度道路交通システム(ITS)の推進、商慣行の改善等を積極的に進め、効率的な物流システムの構築を図っている。

(5)公共交通機関利用への転換促進

 環境負荷の少ない交通体系を形成するためには、自家用自動車に比べ環境に負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進することが重要である。
 そのため、具体的には、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行うとともに、都市鉄道についても、既存ストック活用の観点から貨物線の旅客線化、相互直通運転化、駅の改良、信号保安施設の改良といった既設路線の活用等を進めるとともに、常磐新線等の新線建設、小田急小田原線の複々線化等を進め、輸送力の増強、速達性の向上等を図っている。さらに、平成12年1月には、2015年を目標年次とする「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」(運輸政策審議会答申第18号)が策定され、混雑の緩和、速達性の向上、都市構造・機能の再編整備への対応、空港・新幹線等へのアクセス機能の強化、交通サービスのバリアフリー化・シームレス化等を推進することとされた。交通サービスのバリアフリー化の推進については、より確実かつ効果的な実現を図るため、交通事業者に対し駅や車両などの交通施設を新たに整備・導入する場合に、法律に基づくバリアフリー基準への適合を義務づけることなどを内容とする「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案」を第143回国会に提出した。また、乗り継ぎ、乗り換えの改善を図るための駅前広場や自由道路、アクセス道路の整備を行っている。さらに、バスについては、パークアンドバスライド、コミュニティバス等の導入等を推進している。さらに、バスターミナルの整備等公共交通機関の結節点強化による利便性の向上に努めている。

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