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第2節 

2 野生動植物の捕獲・譲渡の規制、生息・生育環境の整備等

(1)種の保存法に基づく各種施策の推進

 国内外の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を体系的に図るため、種の保存法に基づき、各種施策を推進した。
 種の保存法では、本邦に生息・生育する絶滅のおそれのある種を国内希少野生動植物種に、また、ワシントン条約及び渡り鳥等保護条約に基づき国際的に協力して種の保存を図るべき絶滅のおそれのある種を国際希少野生動植物種にそれぞれ指定し、個体の捕獲・譲渡等や器官・加工品の譲渡等を規制している。国内希少野生動植物種については、必要に応じ、その生息・生育地を生息地等保護区として指定し、各種の行為を規制している。また、個体の繁殖の促進や生息・生育環境の整備等を内容とする保護増殖事業を積極的に推進することとしており、その適正かつ効果的な実施のために保護増殖事業計画を策定することとしている。
 国内希少野生動植物種としては、哺乳類2種、鳥類39種、爬虫類1種、両生類1種、汽水・淡水魚類2種、昆虫類4種、植物5種の計54種に加え、平成11年11月には、アマミデンダ、ヤドリコケモモ、コゴメキノエランの植物3種を新たに指定した。
 保護増殖事業計画については、既に策定されているアホウドリ、トキ等の17種に加え、オオトラツグミ、アマミヤマシギの2種について新たに策定した。
 絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖事業や調査研究、普及啓発を推進するための拠点である野生生物保護センターについては、平成11年4月にやんばる野生生物保護センターが開所し、6か所になった。また、鹿児島県奄美大島及び山形県八幡町の2か所での整備を推進した。
 国有林野においては、希少な野生動植物の生息又は生育地であり、自然環境の保全に配慮した管理を行う必要のある国有林の区域を、必要に応じて森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林、植物群落保護林等の保護林を設定するとともに、これらの生息・生育地の保護管理を適切に行った。また、森林生態系保護地域を中心に他の保護林とのネットワークの形成を図るため、いわゆる「緑の回廊(コリドー)」を設定し、野生生物の自由な移動の場として保護するなど、より広範で効果的な森林生態系の保護について検討を行った。さらに、ツシマヤマネコ等の国内希少野生動植物種を対象とした保護のための巡視を実施するとともに、その生息・生育地等の維持・整備のために必要な調査を行い、調査結果に基づき、生息・生育地及びその周辺の環境の維持・整備等を図る事業を実施した。

(2)保護増殖事業等の推進

 絶滅のおそれのある野生動植物種の保存を図るための保護増殖事業、調査等を引き続き以下のように実施した。
1) 日本産トキ(キン)及び平成11年1月に中国から到着したトキ1ペア(友友・洋洋)について、引き続き佐渡トキ保護センターにおいて飼育を続けた。
 中国産のトキ1ペアは、平成11年4月22日から5月5日にかけて計4個の卵を産み、そのうち1卵(4月24日に産卵したもの)が5月21日にふ化した。
 全国の小学生を対象としてこのヒナの名前を6月に募集したところ1万1千通を超える応募があり、7月2日に「優優」と命名された。
2) イリオモテヤマネコの生息モニタリング調査や、傷病個体のリハビリ飼育等を実施した。
3) ツシマヤマネコの生息地への再導入を目的とした飼育下での繁殖を行うための調査や、生息状況のモニタリング等を実施した。
4) アホウドリの既存繁殖地の環境を維持改善する工事を実施するとともに、新たな繁殖地に個体群を誘致するための事業等を実施した。
5) タンチョウについて、冬期の給餌及び生息状況の把握のための調査モニタリング等を行った。
6) シマフクロウについて、巣箱の設置及び給餌事業を実施した。また、野外におけるつがい形成促進のためのリハビリ飼育や放鳥等を行った。
7) イヌワシについて、個体群の維持が特に困難な地区における、繁殖率の高い地域からのヒナの移入に関し検討等を行った。
8) 北海道の希少海鳥(エトピリカ、ウミガラス、チシマウガラス)について、生息状況把握と今後の保護増殖事業の方法についての検討等を行った。
9) アベサンショウウオについて、保護増殖に資するための生息状況及び生息環境の把握調査等を行った。
10) ミヤコタナゴの生息地において、生息環境の改善、安定化のための事業を実施した。また、生息環境の監視等を行った。
11) イタセンパラについて、生息状況と生息環境の調査及び生息環境の監視等を行った。
12) 小笠原の希少植物について、人工増殖の技術開発と自生地への再導入等を実施した。
13) 沖縄県北部のやんばる地域のノグチゲラについて、生息状況把握のためにモニタリング、生態・行動圏調査等を行った。
14) 奄美の希少鳥類(オオトラツグミ、アマミヤマシギ)について、生息状況把握のためのモニタリング等を行った。

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