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第5節 

2 化学物質環境汚染実態調査の実施

(1)化学物質環境安全性総点検調査の概要

ア 環境調査の概要
 平成10年度においては、環境調査(水系)は水質及び底質で全国56地点・24物質(物質群を含む。以下同じ)、魚類で14地点・3物質を対象に調査を実施した。
(ア)環境調査(水系)
 水質から8物質、底質から16物質及び魚類から2物質が検出された。このうちジブチルスズ化合物などについては、今後もより詳細な環境調査を行い、その推移を監視するとともに、情報収集に努めることが必要と考えられる(1-5-1表)。


(イ)環境調査(大気系)
 1,2,4-トリメチルベンゼン等29物質が検出された。このうち1,2,4-トリメチルベンゼンなどについては、今後も環境調査を行い、その推移を監視するとともに、情報収集に努めることが必要と考えられる(1-5-2表)。



イ 水質・底質モニタリングの概要
 水質・底質モニタリングは環境調査の結果等により水質及び底質中の残留が確認されている化学物質(主に第一種特定化学物質)について、その残留状況の長期的推移の把握により環境汚染の経年監視を行うことを目的として昭和61年度から実施している。
 平成10年度は第一種特定化学物質を中心に、p,p’-DDT等20物質について全国18地点で調査を実施した(1-5-3表)。
 その結果、水質からは、p-ジクロロベンゼン等5物質が検出された。底質からは20物質すべてが検出された。



ウ 生物モニタリングの概要
 生物モニタリングは、第一種特定化学物質及び環境調査結果等から選定した物質について、生物(魚類、貝類、鳥類)を対象に環境汚染の経年監視を行うことを目的として、昭和53年度から実施している。
 平成10年度は第一種特定化学物質を中心に、PCB等18物質について全国20地点の魚類8種、貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。
 その結果、魚類からは18物質、貝類からはPCB、trans-クロルデン等11物質、鳥類からはPCB、p,p’-DDE等8物質が検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続することとする。
 なお、有機スズ化合物による環境汚染の状況については、指定化学物質等検討調査結果と併せ、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において評価された。評価の概要は次のとおりである。
(トリブチルスズ化合物)
 トリブチルスズ化合物は、環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、底質においてはおおむね横ばい、生物及び水質においては横ばいないし改善の傾向にある。
 現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、引続き環境汚染対策を推進するとともに環境汚染状況を監視していく必要がある。
(トリフェニルスズ化合物)
 トリフェニルスズ化合物は、環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、近年では水質については改善、生物及び底質については横ばいの傾向にある。
 現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくものと期待されるが、今後も引続き、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。
 また、トリブチルスズ化合物、トリフェニルスズ化合物ともに内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質との指摘があることなどから、関連の情報を含め毒性関連知見の収集に努めることも必要である。

(2)指定化学物質等検討調査結果の概要

 指定化学物質を中心とした物質については、環境中の残留性及び人への暴露状況の調査を行っている。
 平成10年度の環境庁による環境残留性調査では、クロロホルム等8物質を、全国の水質・底質について36地点で、大気について33地点で調査した。また、暴露経路調査では、クロロホルム等6物質(一般大気は4物質)を、一般大気、室内空気及び食事について9地点で調査した。
 その結果、環境残留性調査においては、8物質すべてが検出された。また、暴露経路調査では、一般大気及び室内空気からは6物質(一般大気は4物質)すべてが、食事からはクロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの4物質が検出された。

(3)非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果の概要

 一般環境中における非意図的生成化学物質の環境残留性を把握するために昭和60年度から「有害化学物質汚染実態追跡調査」(平成5年度より「非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査」に名称を変更)を行っている。平成10年度は臭素化ダイオキシン類(ポリ臭化ジベンゾ-p-ジオキシン:5種類、ポリ臭化ジベンゾフラン:4種類)について、環境中(底質及び生物)の存在状況を調査した。調査結果に基づき臭素化ダイオキシン類について、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において評価された。評価は次のとおりである。
(臭素化ダイオキシン類)
 臭素化ダイオキシン類の一般環境への汚染は、現在の調査・測定方法では認められないが、今後、更に高感度の分析法を開発し、これを用いた調査により環境中の残留状況を把握していくことが必要である。
 また、臭素化ダイオキシン類に関する関連情報が少ないため、今後、その関連情報を収集し、発生源や環境中挙動などの汚染機構の解明に努めるほか、毒性関連知見の収集に努めることも必要である。

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