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第1節 

3 地域における生活環境に係る問題

 生活環境の保全上、大気汚染のほか、主に人の感覚に関わる問題である騒音、振動、悪臭が重要課題となっている(3-1-18図)。また、ヒートアイランド現象、光害等の典型7公害以外の問題も指摘されている。



(1)騒音や振動も依然大きな問題である

 平成10年度に地方公共団体に寄せられた騒音に係る苦情件数は12,679件で、前年度と比べ10.5%減少した。苦情件数の内訳は、工場・事業場に係るものが最も多く、建設作業、営業、家庭生活がそれに次いでいる。
 また、平成10年度の振動に係る苦情件数は2,124件で前年度と比べ6.7%減少した。建設作業に係る苦情件数が最も多く、工場・事業場がそれに次いでいる。
 騒音については、一般居住環境、道路交通騒音、航空機騒音、新幹線鉄道騒音に係る環境基準が定められている。また、騒音規制法及び振動規制法に基づき、工場・事業場及び建設作業から発生する騒音及び振動並びに自動車騒音及び道路交通振動について規制基準等が定められている。

ア 一般居住環境及び自動車交通騒音
 平成10年度の一般居住環境における環境基準の適合率は、地域の騒音状況をマクロに把握する地点で70.9%、騒音に係る問題を生じやすい地点等で66.0%であった。
 自動車交通騒音については、都道府県知事等が騒音規制法に基づき都道府県公安委員会に対し所要の措置を要請する際の基準となる要請限度が定められている。平成10年度には、全国測定地点(環境基本法に基づく環境基準の類型指定区域内4,688地点)のうち、環境基準を達成できなかった地点は4,069地点(86.8%)に及んでいる。また、要請限度を超過した地点は、全国測定地点(騒音規制法に基づく指定区域内4,908地点)のうち、1,492地点(30.4%)にのぼっている(3-1-19図)。5年継続測定地点で見ると、環境基準を達成できなかった地点の割合は87.4%、要請限度を超過した地点の割合は32.3%と引き続き高い水準で推移しており、自動車交通騒音は依然として厳しい状況にある(3-1-20図3-1-21図)。
 最近では、拡声機、カラオケ、ピアノ、ペットの鳴き声、自動車の空ぶかし等の都市生活等による騒音も大きな問題となっている。





イ 航空機騒音及び新幹線騒音
 航空機騒音については、低騒音型機材の導入、空港周辺の整備等の対策が行われている。東京、大阪、福岡等の代表的な空港周辺では環境基準制定当時に比べると全般的に改善傾向にある。
 新幹線鉄道騒音については、車両の更新、防音壁の設置等の対策が行われている。特に騒音を75デシベル以下とする音源対策については、順次対策区間を拡大してきており、騒音の状況は全般的に改善傾向にある。

(2)悪臭に係る苦情件数はここ数年増加傾向にある

 悪臭は、人に不快感を与えるにおいの原因となる悪臭原因物質が大気中に放出されるために発生し、騒音・振動と同様、感覚公害として生活に密着した問題である。現在、主に悪臭防止法により規制が行われている。
 悪臭苦情件数は、昭和47年をピークにおおむね減少傾向にあったが、ここ数年は増加傾向にある。平成10年度は20,092件で、前年度に比べ5,538件(38.1%)増加した(3-1-22図)。この原因は、廃棄物の野外焼却の増加とダイオキシン問題などを契機として臭気問題に対する国民の意識が高まったことによるものと考えられる。発生源別に見ると、「サービス業・その他」が最も多く、次いで「その他の製造工場」、「個人住宅・アパート・寮」の順となっている。



(3)ヒートアイランド現象が大都市圏で顕著である

 首都圏等の大都市圏では、ヒートアイランド現象といわれる典型7公害とは異なる現象が現れている。都市では高密度のエネルギーが消費され、また、地面の大部分がコンクリートやアスファルト等で覆われているため水分の蒸発による気温の低下が妨げられ、郊外部に比べ気温が高くなる。この現象は、等温線を描くとあたかも都市を中心とした「島」のように見えるため、ヒートアイランド現象と呼ばれており、建築物などが日中蓄えた熱を排出する夕方から夜間にかけてこの現象が顕著に現れる。特に夏季は、冷房による廃熱が気温を上昇させ、それによりさらに冷房のためのエネルギー消費が増大するという悪循環を生み出すため、対策が必要となっている。

(4)光害(ひかりがい)は周辺環境への悪影響やエネルギーの浪費につながる

 光害とは、良好な照明環境の形成が、漏れ光(照明器具から照射される光のうち、その目的とする照明対象範囲外に照射される光)によって阻害されている状況又はそれによる悪影響をいう。過度の夜間照明の使用は、ほうれん草や水稲等の作物の生育不良やホタル、ウミガメ、鳥類等の生育に影響を及ぼす。照明により夜空が明るくなり天文観測が困難になることも光害の一つである。また、夜間の屋外照明は安全確保や防犯のために不可欠であるが、不適切な照明は、周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があるのみならず、エネルギーの浪費にも結びつく。

(5)日照阻害、電波障害及び風害

 典型7公害以外の苦情の種類別苦情件数の推移を日照阻害、電波障害、風害(通風)について見ると、日照阻害は平成10年度は16件と連続して低水準を維持している(平成9年度、23件)。しかし、日照阻害についての苦情件数は、地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数であるが、実際は別の窓口で受け付けているものも多くあり、必ずしも改善されたとは判断できない。また、地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた電波障害についての苦情件数は平成10年度は292件(平成9年度370件)となっており、減少した。通風障害についての苦情件数は平成10年度21件(平成9年度7件)であり、他の苦情件数と比較して低い水準で推移している。

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