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第4節 

2 地域コミュニティ再興のために必要な条件

 従来行政主導の下に行われることの多かった、まちづくりや文化・産業振興を通じた地域活性化への取組が、近年、住民主体で、あるいは住民、企業、行政の連携の下に実践されるケースが増えている。地域の議会や行政を通じて住民の地域活性化へのニーズを間接的に反映させつつも、同時に、住民自らが、活動の主体となって地域の問題解決や活性化に取り組むことは、住民一人一人が日常生活の中で地域の問題を真剣に考える上で極めて重要な機会といえる。
 特に近年、先に述べた事例にもあるとおり、地域活性化のための取組テーマの一つとして、環境問題が大きな位置づけを占めるようになっている。この理由としては、次の2点が考えられる。
 まず第一に、環境は人々が生きていくための基盤であり、そこでの様々な問題や不満が解決された姿を「住民たちが生き生きと安心して暮らせる地域」として描くことを通じて、広く環境保全活動そして地域活性化への取組へと住民の参加を促していくことができることである。さらに、こうした取組は、地域の住民のみならず、地域の企業も巻き込んだ地域産業振興の視点からの成果も期待できる。取組の過程を通じて、住民と企業の相互理解を経て地域活性化への合意形成が図られ、さらにそこに行政を巻き込んでいくという、従来型とは違う地域振興の成功例も見られるようになっている。
 第二に、これまでの地域外からの企業や施設の誘致という発想を転換し、その地域にしかない豊かな自然環境を新たに「持続可能な資源」として再発見し活用することが有効であるとの認識が生まれたことがあげられる。こうした自然環境を資源として活用し地域振興を図ることは、その地域の持つ特性を活かすことになるだけでなく、自然環境に何らかの形で接することを通じ、そのすばらしさを教え、その保全意識を高めるといった波及的な効果も期待できる。
 最後に、これらを通して大切なことは、「自分たちの地域を暮らしやすい場にしよう」、「自分たちにとって住むことが楽しい場にしよう」というように住民自らの手で地域を再評価できることである。こうして地域住民の問題意識を一致させ、様々な地域活性化に向けたアイデアを地域住民の間で十分議論する中で、地域コミュニティーが再興され、魅力あふれる地域が形成されるものと考えられる。
 こうした場合において、すでに取り上げた事例でも見られたとおり、行政は計画などに関わる情報、ノウハウあるいは資金を提供するなど必要な支援を行うという立場が適当である。つまり、住民参加というよりは住民が主人公であり、むしろ「住民主導・行政支援」という表現がふさわしい。
 地域振興は各地域の大きな課題であり、これら「環境保全」と「地域振興」を組み合わせた事例が牽引となり、住民主導による取組が全国各地に広がることによって、わが国全体の経済社会のあり方を変えていく可能性は大きい。

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