〈第2章の要約〉
近年大きな問題となっている自動車の排出ガスによる大気汚染や生活排水による水質汚濁等の都市・生活型公害、廃棄物問題、地球温暖化問題等の様々な環境問題の原因は、個人が日々何気なく営んでいる生活の中や通常の生産過程に存在している。
本章では、この観点から個人による環境保全への取組を具体的に考察するとともに、こうした取組が社会を持続可能なものに変える力となることについて概観した。
具体的には、環境に配慮した製品を優先的に購入する「グリーン購入」や、環境保全への取組が進んでいる企業の株式等で構成された投資信託である「エコファンド」の利用などは、個人が自らの消費行動や資産選択を積極的に活用し企業の環境配慮を促すものである。また、モノそのものを保有することにこだわるのではなく、モノが提供する機能やサービスの豊かさを追求するといった消費のあり方は、企業活動に影響を与えるだけでなく、個人による環境負荷の低減ももたらす。
さらには、同じ関心や行動意欲を持つ個人が集まり組織される民間非営利団体については、具体的な環境保全活動を行うことにとどまらず、行政、企業、個人等各主体の情報や関心の橋渡しを行ったり、自らの専門的能力を活かし提言、行動するなど、社会的な広がりを視野に入れた取組が期待されることを指摘した。
一方、地域社会に目を転じると、農山村地域の過疎化や商店街の衰退の問題が見られるが、住民の発意の下、リサイクル活動などの環境保全への取組や身近にある豊かな自然環境を活かした取組を行うことにより、これらの問題を克服し環境保全と地域活性化の両方を実現できることを事例を交え考察した。
このように、個人の取組は「持続可能な社会」の構築にとって極めて重要である。こうした個人の取組を積極的かつ効果的に進めるためには、個人を取り巻く企業や行政等の各主体間のパートナーシップを確立することが必要である。このため、行政情報の公開のほか、環境ラベル、環境報告書、環境会計を通じた企業の環境情報の積極的な開示や質の向上により円滑な環境コミュニケーションを実現することが必要であることを示した。