〈第1章の要約〉
今日、産業活動や日常生活を通じた環境への影響が深刻化の度合いを増しており、貿易など地球規模での経済活動による環境影響も大きくなっている。一方、国内では、少子高齢化などの構造変化が進んでおり、エネルギー消費量の変化などを通じて環境に少なからぬ影響を与えると考えられる。
第1章では、21世紀を目前にして明らかになってきた社会の変化と環境との関係について分析を試みるとともに、環境への負荷の少ない循環型社会を形成するための課題や必要な取組について、環境保全に大きな役割を果たす行政を中心に考察した。
地球規模での環境問題については、すでに直接的、間接的に影響が現れ始めており、緊急な対策が必要となっていること、先進国、途上国がそれぞれの立場に応じて取り組むべき多くの課題を抱えていること、自由貿易の進展、企業の多国籍化などが、複数国間の連携した対応を必要としており、各国政府が抱える課題をより複雑にしていることなどが障害となっている状況を概観した。そして、適切な責任分担に基づく国際的に連携した取組の強化などが必要であることを明らかにした。
国内では、少子高齢化や情報化などの社会の変化が環境に与える影響に着目した。現時点では、予測の幅が大きいが、早い段階から、その影響を予測し、全ての社会経済活動に環境への配慮を組み込むことにより、来るべき変化への適切な対応が可能となる。このため、状況の的確な把握、環境面からの評価、対策における利害関係者の合意形成、様々な主体の参加と連携を促進する枠組みの構築、個人の意識の改革などを今後の環境対策の枠組みに求められる課題として提示した。
さらに、これら課題に対応し、循環型社会を形成するためには、環境保全の視点を重要な構成要素にした新しい考え方に基づいた行動が必要であることを明らかにした。そして、社会を構成する主体のうち、企業や国民の側ですでに循環型社会の形成に向けた取組が始まっている状況を踏まえ、行政の役割と課題について考察した。具体的には、行政が自らの活動に環境配慮を組み込んでいくため、?国内外における環境政策の充実・強化、?他目的の施策や事業への環境配慮の組み込み、?事業者としての行政の活動への環境配慮の組み込みの進展という三つのポイントからの取組が必要であることを示した。