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第4節 廃棄物の現状

 現在の経済社会活動が大量生産、大量消費、大量廃棄型となり、高度化するにつれ、廃棄物量の増大、廃棄物の質の多様化及び最終処分場の残余容量の逼迫等が生じている。これらに伴い、資源採取から廃棄に至る各段階での環境への負荷が高まっている。環境基本計画では、現在の経済社会システムにおける物質の循環を促進し、環境への負荷を低減させていくため、第一に廃棄物の発生抑制、第二に使用済み製品の再使用、第三にマテリアルリサイクル(回収したものを原材料としてリサイクル)を行い、リサイクルが技術的に困難であったり、環境への負荷の面から適切でない場合に、エネルギーとしての利用(サーマルリサイクル)を推進するとしている。
(1) 一般廃棄物
 我が国では、平成元年度以降、毎年年間約5,000万tの一般廃棄物が排出されている。排出量は第4-4-1図のとおりここ数年横這いの傾向が続いているが、平成8年度(速報値)は、総排出量5,110万t(東京ドーム137杯分、平成7年度5,069万t)、国民1人1日当たり1,110g(平成7年度1,105g)と微増している。
 市町村が行った中間処理のうち、直接焼却処理された割合は77.1%(平成7年度76.2%)にのぼり、また、焼却以外の中間処理(破砕・選別による資源化、高速堆肥化等)の割合は12.6%(平成7年度12.3%)と年々増加している。最終処分量は1,297万tで、前年に比べ63万t減少した。ただし、一般廃棄物の最終処分場の残余年数は、平成7年度で全国平均8.5年であり、逼迫している状況に変わりはない。


(2) リサイクルの現状
 市町村による資源化と住民団体による集団回収を合わせたリサイクル率(再生利用のための回収率)は、平成8年度(速報値)は10.7%(平成7年度9.9%)にとどまっており、年々上昇しているものの依然低いレベルにある。
 個別のリサイクルの状況について見てみると、スチール缶の平成9年の再資源化率は79.6%(平成8年77.3%)、アルミ缶の平成9年度の再資源化率は72.6%(平成8年度70.2%)とそれぞれ増加してきている。
 また、ガラスびんについて見ると、平成9年のガラスびんの生産量は216.0万tであり、そのうち原料として使用されたカレット(使用済びんを細かく砕いたもの)の量は146.6万tで、カレット利用率は67.4%となっており、カレット利用率は増加傾向にある。
 平成9年の古紙の利用率については54.1%で、わずかながらも増加傾向にある(以上、第4-4-2図)。
 一般廃棄物のうち、重量で4分の1強、容積で6割弱を占めているのが容器包装廃棄物であり、その削減とリサイクルはごみの減量化の大きな柱の一つと言える。平成9年4月には、市町村による分別収集及び事業者による再商品化等を促進する「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が本格施行され、PETボトルとガラスびんについて分別収集及び再商品化が実施されている。また平成12年4月からは、紙箱等の紙製容器包装、プラスチック製の容器包装についても同法が施行されることになっている。
 また、一般家庭から排出される家電製品については、現在その約8割は小売業者によって、約2割は直接市町村によって回収されている。回収後、約半分が直接埋め立てられるほか、残りについても破砕後、一部の金属が回収されるものの、ほとんどは埋め立て処分がなされているのが現状である。
 このような状況を踏まえ、平成10年6月特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)が制定され、一定の家庭用機器を対象に、小売業者には収集及び運搬が、製造業者等には再商品化等が義務づけられた。平成13年から、ユニット型エアコンディショナ、ブラウン管式テレビジョン受信機、電気冷蔵庫、電気洗濯機を対象に本格施行されることになっている。


(3) 産業廃棄物
 全国の産業廃棄物の総排出量についてはここ数年ほぼ横這い傾向であるが、平成8年度は約4億500万tと前年度に比べ微増している(第4-4-3図)。種類別では汚泥、動物のふん尿、建設廃材が全体の約8割を占めており、また業種別に見ると、電気・ガス・熱供給・水道業、建設業、農業がそれぞれ20%弱を占めている。
 処理状況については、中間処理による減量化量が増加したため、最終処分量は約6,800万t(平成6年度6,900万t)と総排出量に占める割合が前年度より1ポイント減少した。
 最終処分場の残余年数は、全国平均3.1年と一般廃棄物の最終処分場以上に厳しい状況にある。特に首都圏(茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)での残余年数は1.0年と特に厳しい状況にある。


(4) 有害廃棄物の越境移動
 廃棄物は、質の多様化、発生量の増加により、処理の場所を求めて越境移動する事例が増えてきている。特に有害廃棄物は、処理費用の高い国から安い国へ、あるいは処理に伴う規制の厳しい国から緩い国へと移動しやすい。受入れ国で適正な処理がなされない場合には、その国の生活環境や生態系に影響を及ぼすおそれもあり、地球規模での有害廃棄物の移動が問題となっている。
 例えば、1976年(昭和51年)にイタリアのセベソで発生したダイオキシン汚染土壌が一時行方不明になり、1982年(昭和57年)にフランスで発見された事件、ノルウェーの会社がアメリカからギニアに有害廃棄物15,000tを持ち込んで投棄した事件等が発生している。
 1980年代後半には、この問題は先進国から開発途上国への移動という図式を見せはじめたため、国連環境計画(UNEP)を中心に国際的なルール作りが検討され、1989年(平成元年)、スイスのバーゼルにおいて「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が採択された。我が国は1993年(平成5年)9月同条約に加入するとともに、同年12月にはその国内法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」を施行した。その後の条約改正により、リサイクル目的のものを含めて有害廃棄物のOECD及びEU加盟国から非OECD及び非EU加盟国への輸出が全面的に禁止する(但し、当該廃棄物が条約上有害な特性を有しないとされる場合は禁止されない)との条約改正が採択された(本件改正は未発効)。また条約の規制対象及び対象とならない廃棄物を示すリストが新たな附属書として採択されている。

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