環境問題はこの四半世紀のうちに地球規模での広がりを見せ、その重要性に対する認識も世界的に高まってきた。地球環境問題に対応するためには、我が国として取り組むべき課題が多い。同時に、途上国において環境と経済を統合した持続可能な発展を達成することが不可欠である。
アジア地域を中心に途上国はこれまで高成長を遂げてきたが、現在世界各地で経済成長の低迷が見られ、途上国の経済成長も一時の勢いを失った感がある。しかし途上国は依然として経済成長の潜在力を有しており、食料、エネルギー、枯渇性資源等の消費増大を伴いつつ、環境に大きな圧力がかかることが予想される。
すでにアジアの一部地域では、産業や生活活動の都市集中などにより、我が国が高度成長期に経験した公害よりもさらに深刻な環境汚染が発生している。他方、人口増加や深刻な貧困等より自然環境への圧力が強まり、自然環境の破壊が急速に進行している。
また、地球温暖化や酸性雨など国境を越えて影響が及ぶ環境問題についても、途上国における適切な対応が必要である。
途上国の環境問題の解決には、途上国自身の自助努力が十分に発揮されるよう、環境対策の経験や技術を有する先進国からの効果的な国際協力が不可欠である。我が国は、世界屈指の経済規模を有し、高度成長期に深刻な公害問題を克服した経験や、途上国との間で緊密な経済関係を有していることから、環境協力に積極的に貢献することが期待されている。本章では、アジア地域を中心に、途上国の環境問題、その対策の現状と我が国からの環境協力の現状をレビューし、今後の途上国の持続可能な発展のための環境協力のあり方を論じたい。