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第3節 

1 経済のグローバル化と地域経済

 戦後、世界各国は経済活動を活発化させるに伴い国境を越えた資源や製品の調達、製品、販売を行うことが盛んになった。当初、それは国家の管理の下で国単位で行われていたものであったが、次第に個人や事業者によってその活動が担われ、自由にかつ活発になされるようになった。
 特に近年の規制緩和や自由貿易の進展などにより、国境を越えた経済活動は、資源から製品へ、そしてサービス、知的財産へと進み、現在は資本の移動へと進展している。
 このような経済のグローバル化は、経済効率性の追求と相まって進展しているものであるが、これを環境保全の観点から考察してみよう。
 まず、グローバル化は各国の優位性のある資源を効率的に利用することを促進し、環境資源も希少な生産要素として適切に取り扱われれば、激甚な汚染などは削減されると期待される。また、経済のグローバル化は、環境保全に資する技術やサービスを広く流通させることを通じ環境保全型の商品を普及させる原動力となる。さらに、ISO14001等に代表される環境保全に係るグローバルスタンダードの確立、国際レベルでの普及に貢献する。
 一方、グローバル化した経済社会においては、経済効率性のみが追求され、自然条件や持続可能性への配慮が不十分なまま大量生産システムが持ち込まれることになりがちである。また、自由貿易の進展とともに、モノの移動に伴うエネルギー利用量が増大したり、国際分業化の急速な進展に環境対策が追いつかず過度の資源採取や環境破壊が生じるおそれがある。つまり、経済の国際化により、国際分業化とモノカルチャー(単一耕作)が進み、地域の健全な物質循環や社会の多様性が破壊される可能性がある。さらに、環境を犠牲にして経済の発展を図ろうとする国も現れる可能性がある。
 特に我々の生命を支える食糧に関しては、以下のような点に留意する必要があると考えられる。基礎的食糧である世界の穀物生産量は、約19億トンが生産されているが世界の人口は年間8,000万人の割合で増大し続けている。一方、穀物の生産性の伸びは鈍化しており、穀物の耕作面積も減少し続けている。
 このような状況の下、穀物の輸出国は、北米大陸等に偏在し、世界の大半が輸入国となってきている。農業生産の一極集中化がこれ以上進むと異常気象など環境の不安定化による生産減少の影響が一挙に地球規模に広がる可能性があるとともに、他地域における農山村の生活基盤を覆し、国土の環境保全機能を損なう可能性がある。このように短期的な経済効率性の追求が環境効率性を阻む可能性があることにも留意する必要がある。
 以上のような経済のグローバリゼーションの動きがある一方、我が国においては、地域主導の経済社会づくりを進める地場産業やコミュニティビジネスの振興等のローカライゼーションを目指す動きも見られる。このような動きは、経済効率性の追求だけでなく、地域の独自性、多様性を尊重しながら、取り組まれているものが多くなってきている。このようなことから今後の方向としては、グローバル化した経済から自立した地域経済まで様々なレベルの圏域が存在する重層構造を持つ経済社会へと向かっていくように考えられる。以下では環境保全と最も密接に関わる地域経済の動向に焦点を当ててみたい。

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