2 適正なリサイクルの推進
(1) 使用済製品の再使用の推進
容器包装の再使用を促進するため、環境庁、大蔵省、厚生省、農林水産省及び通商産業省が連携して平成7年度から調査検討を開始した。その結果を踏まえ、環境庁では、リターナブルびんの普及を図るためのモデル事業の実施に向け、製造事業者、流通事業者等広く関係事業者の協力を得つつモデル事業の設計を進めた。
(2) 回収・再生利用の推進
環境への負荷の低減のため、廃棄物の再生利用、再生資源の回収・利用を促進する必要がある。
平成3年10月に施行された「再生資源の利用の促進に関する法律」に基づき、関係省庁の連携のもと、再生資源の利用を総合的かつ計画的に推進した。また、改正廃棄物処理法においては、一定の廃棄物の再生利用について、その内容が生活環境の保全上支障がない等の一定の基準に適合していることを国で認定する制度を設け、認定を受けた者については業及び施設設置の許可を不要とする規制緩和措置が講じられた(平成9年12月から施行)。
また、リサイクルを推進するための設備の導入、技術開発に関して、「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」に基づき、金融・税制上の支援を実施した。
さらに、毎年10月の「リサイクル推進月間」において、リサイクル関係省庁である経済企画庁、環境庁、大蔵省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、建設省及び文部省は、リサイクルに関する国民の理解と協力を得るため、広範な普及啓発活動を実施することとしており、平成9年度も、各種シンポジウムの開催、リサイクル推進功労者の表彰等を行った。
環境庁では、リサイクルに関する各種の調査研究や普及啓発の推進、民間団体によるリサイクル活動に対する地球環境基金を通じた支援を行った。
通商産業省では、廃棄物の処理・リサイクルの推進のために、産業構造審議会廃棄物処理・再資源化ガイドラインのフォローアップ及び改定、同審議会における使用済み電気・電子機器の新たなリサイクルシステムの構築に係る報告書のとりまとめ(平成9年6月)、廃棄物発電技術、ケミカルリサイクル技術等の広範な技術開発を行うとともに、各種の調査研究や普及啓発の推進を行った。また、「古紙リサイクル促進のための行動計画」(平成9年9月)、「使用済み自動車リサイクル・イニシャティヴ」(平成9年5月)をそれぞれ策定し、関係者に広く周知・徹底した。
経済企画庁では、各都道府県に設置されている省資源・省エネルギー国民運動地方推進会議を通じ、リサイクル活動団体への支援を行った。
厚生省では、地方公共団体における体制整備を推進するため、ごみの再資源化経路の構築や組織づくり等に関する事業に対して補助を行うとともに、5月30日から6月5日までの「ごみ減量化・リサイクル推進週間」を中心に、廃棄物の減量化や再生利用を促進するための各種啓発活動を行った。また、平成9年12月、生活環境審議会廃棄物処理部会において、廃電気機器等を中心とした新たなリサイクルに関する基本的方向について報告書をとりまとめた。
建設省では、資源利用量、廃棄物の最終処分量等で我が国の産業廃棄物全体に占める割合が高い建設系の産業廃棄物のリサイクルの推進等のための施策を建設リサイクル推進計画'97としてとりまとめ、これに基づき、公共工事におけるリサイクルの徹底のほか、公共工事発注者間の連携の強化等を推進した。さらに、下水道事業において発生する汚泥(発生汚泥等)について、コンポスト化、建設資材化による再生利用等を推進するとともに、再生利用推進のための各種調査研究等を行った。
農林水産省では、農業集落排水事業の実施において、発生汚泥を有機質肥料等とするリサイクルなどを推進した。
また、リサイクルの一層の促進を図るため、関係省庁において、リサイクルに関連する経済的手法のあり方についての検討がそれぞれ進められた。
(3) 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の施行
一般廃棄物の大部分を占め(第1-4-6図)、かつ、再生資源としての利用が技術的に可能な容器包装廃棄物について、市町村による分別収集及び事業者による再商品化等を促進する「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(通称:容器包装リサイクル法)が平成9年4月から本格施行され、ガラスびん及びペットボトルについて分別収集及び再商品化が開始された(第1-4-7図)。
また、平成9年12月には平成10年度の再商品化の実施に向けて、ペットボトルの再商品化計画に係る告示の改正及び特定事業者の再商品化義務量算定方式等に係る主務省令・告示の改正を行ったとともに、平成12年4月から分別収集及び再商品化が実施されるペットボトル以外のプラスチック製容器包装及び飲料用紙パック以外の紙製容器包装に関する再商品化手法と分別基準に係る検討作業を行った。
さらに、分別収集及び再商品化が円滑に進められるよう、市町村による分別収集計画の策定の支援、再商品化技術の開発、指定法人の業務円滑化のための助成、必要な調査研究等を行った。また、関係5省庁(環境庁、大蔵省、厚生省、農林水産省、通商産業省)において作成したキャラクターマーク「分け兵衛」の活用、容器包装リサイクル法に関するパンフレットの作成、事業者等に対する地域毎の説明会の開催などにより普及啓発を行うとともに、関係機関における効果的な普及啓発事業を促進した。
(4) 特定家庭用機器再商品化法案
近年、電気製品は我々の生活においてますます需要が増え、特にテレビや冷蔵庫等の家電製品は生活必需品となっている。また、これらの製品は年々大型化が進むとともに、その機能も高度化・多様化が進んでいる。さらに、これらの製品には鉛やフロン等の環境に負荷を与える物質が使用されているものもある。
主として家庭から排出される廃家電製品等は、現在、その多くは破砕処理の後に鉄などの回収のみにとどまったリサイクルしか行われておらず、一部はそのまま埋め立てられている。我が国の廃棄物最終処分場の残余容量は一般廃棄物、産業廃棄物ともに逼迫しており、廃棄物の減量化は急務の課題となっている。
このような状況を踏まえ、廃棄物の減量と再生資源の十分な利用等を通じて、廃棄物の適正な処理と資源の有効な利用を確保するため、市町村における廃棄物処理に関する技術及び設備に照らし高度な再商品化等が困難なもの等の要件を満たすものを特定家庭用機器として指定し、これらの機器が廃棄物となったもの(特定家庭用機器廃棄物)について、小売業者による収集及び運搬、製造業者等による再商品化等を義務づけることにより、廃家電等の適切なリサイクル・処理を確保するため、政府は、平成10年3月、特定家庭用機器再商品化法案を閣議決定し、国会に提出した。
(5) リサイクル関連施設整備の推進
一般廃棄物について、廃棄物循環型のごみゼロ社会を目指し、21世紀初頭を目途に、廃棄物のほとんどすべてを、「単に燃やして埋める処理」から、極力リサイクルを推進し、焼却処理を行う場合においても熱エネルギーを活用するものへ転換を図ることとしている。このため、廃棄物の排出抑制・リサイクルに努めた後に、なお排出される可燃性のものについては焼却処理等を行うとともに、積極的に余熱利用を行う「廃棄物循環型処理」を促進するための施設整備を推進した。
リサイクル関連施設については、ペットボトルの再資源化、廃プラスチックの油化、焼却灰の溶融固化、余熱利用、廃棄物発電、ごみ固形燃料化等の普及・技術開発等を推進するとともに、「民間事業者の能力の活用による特定設備の整備の促進に関する臨時措置法」等により、リサイクル関連施設の整備を支援した。
(6) リサイクルにおける環境配慮
環境庁では電気製品や自動車などの有害物質を含む使用済製品について、有害物質を含む部品の回収による有害物質のリサイクルの促進方策について調査検討を行った。また、廃棄物の減量化及び環境への負荷の低減を図るため、リサイクルの促進に関する各種普及啓発事業及び調査研究を行うとともに、廃棄物のリサイクルについては、現在環境保全面からの適切な基準が設定されていないことから、廃棄物のリサイクルに係る環境保全上のガイドラインを策定するための調査を行った。また、リサイクルの環境に与える影響を把握し、リサイクルされた原材料を使用した製品等に含まれる可能性のある有害物質等に関する情報の把握を行い、必要な施策を検討した。
(7) ゼロ・エミッション構想の推進
通商産業省では、平成9年度に地域におけるゼロ・エミッション構想の推進を支援するための「エコタウン事業」を創設し、地方公共団体が作成した4地域の推進計画を承認し、それぞれの地域において行われるリサイクル関連施設整備事業に対するハード面での支援、及び環境産業のマーケティング、情報提供事業等に対するソフト面の支援を実施した。
環境事業団では、循環と共生を基調とする地域づくりの実現に向けて、平成9年度に「ゼロ・エミッション団地」建設構想を具体化するため、3地域を対象として、異業種中小企業の連携・集団化等を通じて廃棄物再生、余剰エネルギーの有効利用、CO2排出削減等を総合的に推進する循環型・低環境負荷型システム構築のための調査や基本計画の作成を実施した。