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第2節 

5 化学物質の水環境中の残留状況

 環境中の化学物質等は環境や人体への影響を考慮し適正な管理がされなければならない。水環境に関しても、保全のために、効果的な監視体制を整備し、様々な調査を行っている。
 一般環境中に残留する化学物質の早期発見及びその濃度レベルの把握を目的とした、平成8年度の水質及び底質の化学物質環境調査結果によると、水質の調査対象37物質のうち6物質が、底質の調査対象物質のうち12物質が検出された。これらのうちフェノールは、水質と底質の両方から広範囲にわたり検出されておりその濃度レベルも必ずしも低い状況とは言えないと考えられるため、今後さらに推移の監視と詳細なリスク評価の必要があると考えられる。また、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、ビスフェノールAは、水質、底質の両方からと同時に調査された魚の検体からも検出された。これらの物質は内分泌攪乱物質の疑いがあり、今後も関連情報の収集が必要である。その他の検出された物質についても、検出頻度や濃度に応じた対応が必要と考えられる。
 環境調査の結果等により水質と底質への残留が確認されている化学物質(主に第一種特定化学物質)について、残留による環境汚染の経年監視を行うため、水質・底質のモニタリングを実施している。調査の結果、対象20物質のうち、水質から5物質、底質から20物質全てが検出された。底質からの検出状況は水質に比べ全体的に高かった。また、調査対象物質毎の最高値を記録した地点をみると隅田川河口(5物質)、大和川河口(5物質)、大阪港(2物質)、神戸港(1物質)、洞海湾(7物質)であり、閉鎖性水域の内湾部の汚染レベルが高いことが示唆される。
 非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査においても底質についてダイオキシン類等調査を行った(第4-2-4表)。ダイオキシン類の調査は、ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)13種類とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)15種類について、昭和60年度から継続調査をしている。底質では全般に高い頻度で検出されており、特に湖沼及び海域での検出頻度が高かった。ダイオキシン類による汚染状況は前年度までと比較して大きく変化したとは認められないが、広範囲に検出されているため、今後とも推移を監視していく必要がある。

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