5 環境効率性の高い経済社会システムに向かって
これまで見てきたような様々なツールを用いて、事業者は、その事業活動の中に環境への配慮を織り込んだ、高い環境効率性を実現していくことが期待される。環境効率性を向上させていくことについてはOECDにおいても経済活動と環境への影響度を関連付けるものとして検討されている。この中では企業が環境効率性を意識した意思決定を行う上で役立つような単純で質の高い指標の検討が進められている。指標の例としては、環境汚染物質の排出量や資源の利用量といったものや企業の総売上高に対する環境保全コスト及び環境被害想定額の割合などが挙げられている。こうした指標を確立し、各経済主体がこれを利用すれば、環境効率性の改善や環境効率性の高い製品・サービスの選択の際に効果を発揮し、生産者や消費者が自らの行動をより環境にやさしいものへと変化させていくのに役立つと考えられる。環境効率性は、様々な要素から成り立つため、これらを一元的に示す指標として、各要素を重み付けするアプローチなども検討されている。
世界環境経済人協議会(WBCSD)では、環境効率性の基準として、?財・サービスへの資源集約の最小化?財・サービスへのエネルギー集約の最小化?有害物質の排出の最小化?資源の再生性の向上?再生可能資源の使用の最大化?製品の耐久性の向上?財・サービスの労働集約の増大、の7つを掲げ、企業活動の各段階におけるこのような視点からの環境配慮の必要性を示している。
こうした視点を盛り込みながら、本節の冒頭で述べたように、事業活動の各段階において環境効率性の高い活動の実践が求められている。
本節で見てきた様々なツールは、環境効率性の高い経済社会システムの構築に有効であると考えられる。しかし、これらのツールも形式的にただ使うだけでは、その機能を十分に利用しているとは言い難い。本節で述べてきたが、例えばエコマークの考え方の中にLCAが織り込まれていたりするなど、それぞれのツールは互いに連携しあっている。同様に、事業活動においてもそれぞれ適材適所でツールを用い、その考え方を連携させあいながら、各々のツールの持つ機能を十分活かしながら利用していくことが環境効率性の追求のためにも最も有効となろう。これらを、環境効率性の高い企業活動の実現のため、目的を明確に認識して、利用していくことが必要である。
本章で見てきたように、循環型経済社会の実現には、生産段階から廃棄・リサイクル段階に至るライフサイクル全体でとらえた経済活動の中で環境負荷を最小限にとどめようとする取組が必要とされる。
また、各段階の関係者が、ライフサイクル全体を考慮して効率的に行動していくためには、環境情報がすべての関係者で共有されることが有益であり、環境コミュニケーションが円滑に図られることが必要である。