3 廃棄物の適正な処理の推進
(1) 廃棄物処理の現況
ア 一般廃棄物の処理
一般廃棄物については、市町村が定める処理計画に沿って処理が行われている。ごみ処理状況は、第1-4-2表のとおりである。平成5年度におけるごみ排出総量は、13万7,820t/日であり、対前年度比0.2%増となっている。また計画処理量の85.6%が焼却、破砕等減量処理されている。
廃棄物処理施設の整備については、平成8年度を初年度とする第8次廃棄物処理施設整備計画を策定し、その整備を推進した。
イ 産業廃棄物の処理
廃棄物の排出状況は第1-4-3表のとおりであり、産業廃棄物処理業者の許可件数も年々増加しており、平成5年度末現在9万5,633件である。
(2) 廃棄物の適正処理対策
ア 廃棄物の適正処理に関する問題点とその対策
近年の経済活動の活発化、国民のライフスタイルの変化に伴い、廃棄物の発生量が増加し、その種類も多様化している一方で、最終処分場に対する国民の不安感の高まりなどのため廃棄物処理施設の確保が困難となっており、また廃棄物の不法投棄等の不適正な処理が大きな社会問題となっている。
こうした状況に対応するため、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、廃棄物の適正処理の確保、処理施設の整備を主な柱とした施策を進めた。また、施設整備を促進するため、廃棄物処理センター制度の円滑な活用のほか、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づく特定施設の整備を推進した。
さらに、平成8年11月21日、環境庁長官から中央環境審議会に対し、「廃棄物に係る環境負荷低減対策の在り方について」の諮問を行い、最終処分の在り方を基点として、総合的かつ体系的な廃棄物対策について審議を行っている。当面の課題として、廃棄物の最終処分に関する事項を中心に審議し、平成9年1月31日「最終処分を中心とする中間とりまとめ」を行ったところであり、今後、その他の重要事項について引き続き審議することとしている。
イ 一般廃棄物対策
一般廃棄物の発生量の増加に対処するために、平成8年度においては、一般会計総額1,563億3,880万円の補助金により、ごみ処理施設、し尿処理施設、埋立処分地等の一般廃棄物処理施設の整備を図った。
ウ 産業廃棄物対策
産業廃棄物については、排出量の増大や質的な多様化が進んでいる一方で、産業廃棄物処理施設の確保の困難の問題や、産業廃棄物の不法投棄等の不適正処理が大きな社会問題となっているところである。
このため、産業廃棄物処理の諸問題の総合的対策を検討するため、平成8年2月生活環境審議会廃棄物処理部会に産業廃棄物専門委員会を設置した。平成8年9月に、同委員会は、以下の4本の柱を中心とした報告書を取りまとめた。
? 廃棄物の減量化・リサイクルの推進
? 産業廃棄物処理に関する信頼性と安全性の向上
? 不法投棄対策の強化
? 原状回復措置
この報告書を踏まえ、平成9年2月、生活環境審議会は廃棄物処理法の改正についての答申を行い、政府は廃棄物の再生利用についての認定制度の新設、廃棄物処理施設の設置手続の明確化、不法投棄に係る原状回復のための措置の導入及び罰則の強化等を内容とする「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案」を平成9年3月に国会に提出した。
また、排出事業者処理責任の原則の枠組みの中で、公共の関与による処理施設の整備促進を図っており、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき廃棄物処理センターを岩手県、大分県、長野県、愛媛県、香川県、新潟県、高知県、兵庫県において指定しているところである。
また、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づき、産業廃棄物の適正処理のための様々な支援措置を講じているが、平成8年度においては、産業廃棄物処理事業振興財団により、産業廃棄物処理施設の近代化、高度化事業に対する債務保証、起業化助成等の事業振興が行われた。
通商産業省では、産業構造審議会廃棄物処理・再資源化部会企画小委員会において、産業廃棄物の処理・リサイクルシステムのあり方等について検討を行い、本年1月に、
?減量化、リサイクルの数値目標の設定
?リサイクル製品の購入の促進
?適正処理に向けた排出事業者の責任の強化
?廃棄物に係る定義の見直しの検討
を内容とする報告書をまとめるとともに、今後の産業廃棄物の処理及び再資源化対策に必要な各種の試験研究及び調査を行った。また、廃棄物の再資源化を促進するため、(財)クリーン・ジャパン・センターの実証プラント、散在性廃棄物等に関する調査研究等の各種の再資源化事業に対する補助を行った。
農林水産省では、園芸用使用済プラスチックの適正処理技術等の開発・実用化のための調査・実証、農業団体等による使用済プラスチック処理施設の設置等に対し助成措置を講じた。
また、水産庁では、流出漁具による海洋環境への悪影響等を軽減するため生分解性プラスチックを用いた漁具の開発を実施したほか、不用となったFRP漁船等漁業系廃棄物の計画的かつ適正な処理を促進するための技術開発調査を実施した。
エ 広域処理場整備の推進
大都市圏域において、圏域を一体とした広域的な最終処分場確保の要請に対応するため、厚生省及び運輸省においては、広域的な廃棄物の埋立処分場計画(いわゆるフェニックス計画)の推進を図ってきた。大阪湾圏域においては、大阪湾広域臨海環境整備センタ―が広域処理場において、平成2年1月より廃棄物の受入れ埋立処分を行ってきたが、このうち一般廃棄物等を受入れる管理型区画において、平成10年度に満杯になる見込みとなったため、神戸沖に新たに処分場を位置づけるなどの基本計画の変更を行った。
東京湾圏域については、厚生省及び運輸省において昭和62年4月に東京湾フェニックス計画の基本構想をまとめ、関係地方公共団体に提示しており、関係団体において引き続き廃棄物の広域処理について検討が行われている。厚生省においては引き続き、東京湾圏域について広域処理場整備に関する調査を行い、また中部圏及び北部九州圏についても基本調査及び基礎調査を行った。
オ 廃棄物の処理における環境配慮等
廃棄物の最終処分場跡地に起因する環境汚染を防止しつつ、跡地の適正な利用を図るため、平成元年11月に環境庁、厚生省の連名通知等に基づき跡地管理の基本的方向を示したところであるが、環境庁においては、埋立てを終了した最終処分場の閉鎖及び土地利用について環境保全上適正な運用を図るため、閉鎖基準等の具体化を検討した。また、現在開発されている最終処分場に関する技術の中から環境保全効果の認められるものについて評価を行い、より高度な技術の開発・普及を促進するための調査を行った。
運輸省においては、港湾における廃棄物処理対策として平成8年度は、39港1湾において事業費約459億円(うち国費約106億円)をもって廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施したほか廃油処理施設の整備に対する補助及び一般海域におけるごみ・油の回収事業等を行った。さらに、資源のリサイクルを促進するため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効活用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)を平成6年度に開始し、平成8年度石巻港、三河港、高知港、広島港において建設発生土の受入れを実施した。
また、建設省においては、環境保全に留意しつつ下水汚泥の緑農地利用、建設資材化及び積極的に再生資材を活用した下水道事業を実施した。
さらに、厚生省では、最終処分場の延命化を図る上で有効な焼却灰等の溶融資源化施設を大都市圏において広域的・計画的に整備するための事業を行った。
カ 空き缶の散乱防止
缶飲料の生産量が急速に増大し、1年間で発生した缶飲料の空き缶は、昭和56年には100億缶程度であったものが、平成7年には377億缶を超える状況にある。これら缶飲料の空き缶の一部が道路、海岸・河川等に散乱し環境美化の観点から問題となっている。環境庁が平成7年度に全国の約700市区町村について実施した調査の結果では、散乱状況に改善は見られず、特に海岸・湖岸、河川敷については、ここ数年に比し悪化した状況にある。
空き缶散乱防止対策としては、それぞれの立場から様々な取組が行われている。地方公共団体においては、それぞれの地域の実情に応じた各種の対策を講じており、空き缶散乱防止に関する条例や要綱の制定、投げ捨て防止のキャンペーン、清掃の強化等のほか、一部の地方公共団体等においては、空き缶回収機を活用して、一定の枚数を集めると図書券等に交換できる補助券を発行する方式や預り金方式などの導入により空き缶回収等を行っている例もみられる。
国においては、関係11省庁から成る「空き缶問題連絡協議会」における申合せに基づき、普及啓蒙活動の充実を図っているほか、環境庁及び厚生省は「環境美化行動の日」の設定を地方公共団体に呼びかけ、空き缶散乱防止を含め、広く環境美化のための国民各層の積極的行動の推進を図っている。