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第6節 

4 生物多様性の現状

 前節及び本節で述べてきたことように、地球上には、地域の気候や土壌等の条件に応じて、熱帯から寒帯まで、海洋・沿岸地域から高山帯まで、様々な生態系や生物の生息・生育環境が広がっており、そこには、数百万から数千万の生物種が存在するといわれている。また、同一種内においても遺伝的特性の相違するものが多数存在する。生物は一度絶滅してしまえば、再び作り出すことはできないものであるが、現在、様々な生物の中には人類の社会経済活動によって絶滅するものや、絶滅の危機に瀕しているものが従来にもまして増加しており、生物の多様性が貧弱なものになりつつある。この結果、地球生態系全体が生物多様性の後退により悪影響を受け、人類の生存をも脅かす可能性も考えられている。
 また、環境庁では、沖縄本島北部のやんばる地区の生態系多様性地域調査を実施する。やんばる地区は、その地理的な条件等から、独特の生物相が発達し、固有かつ希少な動植物も数多く生息する。この調査は、このやんばるの動植物及びそれらが構成する生態系の現状を把握し、適切な保全に資することを目的としている。
 生物多様性国家戦略
 地球上に存在する多様な生物は、食料、清浄な水、安定した気候など人類の生存に不可欠な基盤を提供するのみならず、医療品の原料、文化上あるいは芸術上など様々な価値を有している。しかしながら、生物の保全に関する条約はある特定の動植物や生息地を対象にしたもののみであった。そこで、個々の生物及びその生息地を総合的に保全するための国際的な枠組みとなる条約として締結されたのが、「生物の多様性に関する条約」(生物多様性条約)である。この条約は、?生物多様性の保全?その構成要素の持続的な利用?遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的としており、第6条においては、締約国に対して生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とする国家戦略又は国家計画の策定を定めている。
 これを受け、我が国では、平成7年10月に生物多様性国家戦略を策定した。その中で、生物多様性の現状を把握するとともに、生物多様性の保全と持続可能な利用のための長期的目標を定めた。この長期目標は、第一に、現存する生物多様性の保全及び持続可能な利用、第二に、生物間の多様な相互関係の保全及び、生物の再生産、繁殖の場としての保護地域の保全を掲げている。さらに、この二つの長期目標達成に向けた当面の政策目標及び、その達成に向けた施策の展開が示されており、その有効かつ着実な実行に向け、検討を進めている。
 また、1996年(平成8年)11月にブエノスアイレスで第3回生物多様性条約締約国会議が開催され、農業の生物多様性への影響評価手法・指標作成の促進、森林の生物多様性に関する作業計画の作成等の決議が採択された。なお、生物多様性条約の締約国は1997年2月現在、166ヶ国となっている。

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