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第4節 廃棄物等の現状

 現在の経済社会活動が大量生産、大量消費、大量廃棄型となり、高度化するにつれ、廃棄物量の増大、廃棄物の質の多様化及び最終処分場の残余容量の逼迫等が生じている。廃棄物に係る問題のうち一般廃棄物及び産業廃棄物の状況については第2章で詳しく述べているので、ここでは有害廃棄物の越境移動の問題について見てみる。
 有害廃棄物の越境移動
 人間の日常生活や社会経済活動によって生じる廃棄物は、生活水準の向上や経済の拡大に伴って、質的な多様化・発生量の増加が進み、発生国内での処理が難しくなるにつれて処理の場所を求めて越境移動する事例が増えてきている。特に、有害廃棄物は処理費用の高い国から安い国へ、あるいは処理に伴う規制の厳しい国から緩い国へと移動しやすく、そのため、受入れ国で適正な処理がなされない場合にはその国の生活環境や生態系に影響を及ぼすおそれもあり、地球規模での有害廃棄物の移動が問題となっている。
 有害廃棄物の越境移動の例としては、1976年(昭和51年)にイタリアのセベソで発生したダイオキシン汚染土壌が一時行方不明となり、その後1982年(昭和57年)にフランスで発見されたセベソ汚染土壌搬出事件のほか、ノルウェーの会社が米国からギニアに有害廃棄物15,000tを持ち込んで投棄した事件、イタリアからナイジェリアへ化学品という名目で3,900tの有害廃棄物が運ばれて捨てられた事件、米国フィラデルフィアから14,000tの有害な焼却灰を積載した船舶が各国で受け入れを拒否され、2年余り後にインド洋で投棄された疑いのある事件などが発生している。
 有害廃棄物の越境移動は、1980年代前半には例えばヨーロッパ内での移動に留まっていたが、80年代後半になると移動範囲がアフリカや南米の国々に急速に広がり始めた。我が国においては、廃棄物中の有用物を回収するなどのため有害廃棄物が国際取引されている例がある。
 こうした地球規模での有害廃棄物の越境移動に対して、国連環境計画(UNEP)を中心に国際的なルール作りが検討され、1989年(平成元年)3月スイスのバーゼルにおいて「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が作成された。我が国も1993年(平成5年)9月バーゼル条約に加入するとともに、同年12月にはその国内法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」が施行された。さらに、1995年(平成7年)9月には第3回バーゼル条約締約国会議において、リサイクル目的のものを含めて有害廃棄物のOECD、EU加盟国及びリヒテンシュタインからそれ以外の国々への輸出を1997年(平成9年)をもって、全面的に禁止する(ただし、国境を越える移動は、当該廃棄物が条約上有害な特性を有しないとされる場合には禁止されない。)との条約改正が採択された。
 今後とも有害廃棄物の発生量や輸出入の最小化及び国際協力の推進が課題となっており、国際的な枠組みの下での対策の実施に向けた努力が続けられている。

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