前のページ 次のページ

第3節 

5 オゾン層保護対策の推進

(1) オゾン層破壊物質の生産規制の実施
 オゾン層破壊の防止を目的とした国際条約である「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(モントリオール議定書)に基づき、我が国では、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」によりCFC等の生産規制を実施しており、ハロンについては平成5年末に、CFC、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタン及びハイドロブロモフルオロカーボン(HBFC)については平成7年末に生産及び消費を全廃している。また、他のオゾン層破壊物質についても、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)については2020年に消費が、臭化メチルについては2010年に生産及び消費が全廃されることになっている。
 国連環境計画(UNEP)の報告によれば、このような取組の結果、1992年(平成4年)改正のモントリオール議定書に基づく生産規制をすべての締約国が遵守すれば、オゾン層を破壊する要因となっている大気中の塩素濃度は、今世紀末にピークに達しその後は減少するものと見込まれている。21世紀初頭にはオゾン層も回復に転じ、南極におけるオゾンホールも2045年ごろには出現しなくなると予想されている。 
(2) オゾン層破壊物質の回収・再利用・破壊の促進
 CFC等の主要なオゾン層破壊物質の生産は、平成7年末に既に全廃されているが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充填された形で存在しているCFC等が相当量残されており、こうしたCFC等の回収・再利用・破壊の促進が課題となっている。
 UNEPの報告によれば、CFCの回収等の効果をオゾン層保護という観点から見ると、全地球規模で現存する冷媒用特定フロンすべてを回収したと仮定した場合、1980年(昭和55年)レベルを超える有効塩素量の今後50年間の積算量を3%少なくすると予測されている。
 このため、政府では、関係18省庁により「オゾン層保護対策推進会議」を設置し、平成7年6月にCFC等の回収・再利用・破壊の促進方策を取りまとめた。本取りまとめにおいては、CFCが使用されている機器のうち、特に家庭用冷蔵庫からのCFCの回収については、カーエアコン等と異なり、回収したCFCの再利用が困難であり、市場メカニズムの活用による取組の進展を期待し得ないため、都道府県単位等で消費者、市町村、関係事業者が、その役割分担・費用分担等についてコンセンサスを形成した上で、協同協力して取り組むことが重要であるとしている。この取りまとめの内容については、自治体、関係業界等に通知し、回収等への積極的取組を促している。
 この促進方策を受けて、その後地方公共団体ではフロン回収の気運が高まり、平成8年12月に環境庁が実施した調査結果によると、廃冷蔵庫からのフロン回収等に取り組んでいる地方公共団体は、平成9年度以降開始予定のものを含めると2,515団体(全市区町村の77.3%)となっているが、粗大ごみとして市町村により処分されている廃冷蔵庫だけではなく家電販売店等に下取りされるものも含めた廃冷蔵庫全体で見てみると、フロンの回収率は依然として低率にとどまっている。また、カーエアコン及び業務用冷凍空調機器について見ても、そのフロン回収率は低率となっている。
 一方、回収したフロン(CFC、HCFC)の破壊については、平成8年5月に環境庁においてロータリーキルン法及びセメントキルン法を中心に「CFC破壊処理ガイドライン」を策定し、これに基づいてフロン破壊モデル事業を実施しているところである。また、プラズマ分解法の技術開発、触媒等を用いた簡易型破壊処理装置の実用化等も進んできている。
 現在、政府においては、平成7年6月以降の状況の変化を踏まえ、オゾン層保護対策推進会議において、CFC等の回収・再利用・破壊の一層の促進方策について検討を進めているところである。なお、通商産業省は、平成9年3月に、化学品審議会オゾン層保護対策部会回収再利用等対策分科会において、「特定フロンの回収等に関する今後の取組の在り方について」を取りまとめ、同省はこれを受け、関係省庁と連携をとりながら、関係業界等に協力を要請するなどCFCの回収・再利用・破壊の促進に努めることとしている。

前のページ 次のページ