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第1章 環境の恵みを受けて成り立つ豊かな人間生活

 持続可能な経済社会を実現していくためには、日々の生活を営んでいる我々一人ひとりが、人間活動と環境の関係をよく理解し、環境への負荷の少ない生活、自然と共生できるような暮らし方を目指すことが出発点と言えよう。社会の最小単位である個人が環境からどのような恵みを受け、環境にどのような負荷をかけているのかを自覚し、その役割に応じた責任を果たしていくことが社会全体としてのパートナーシップを実現していく上でも重要である。しかしながら、今日のような巨大な経済社会の中では、人間生活と環境の関係の全体像はなかなかつかみにくい。
 そこで、本章では、まず、身近な食生活等の日常生活の中から、時間の軸を伸ばし、さらに地域から国、世界へと空間的視野を広げることによって、暮らしと環境の関わりを考えていくこととしよう。
 また、人は経済社会活動の主体として生きるだけではない。社会の中での役割から離れて自然とふれあい、様々な遊びを楽しむことを通じて自然の理(ことわり)に気づき、あるいは精神や心の働きを通じて芸術の美を創りだし、倫理を自覚する力を持っている。持続可能な社会を構想し、実現していく力は、こうした人間の精神と心が健全に育まれるところから生まれるのではないだろうか。こうした観点から、豊かな精神活動の基盤としての環境についても考えてみたい。

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