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第8節 

1 健康被害の救済及び予防

(1) 公害健康被害補償予防対策等の推進
ア 「公害健康被害の補償等に関する法律」の実施
(ア) 補償給付等の充実
 被認定者に関する補償給付については、労働者の平均賃金の動向等を踏まえて必要な給付額の改定を行うとともに、被認定者の健康の回復等を図るため、公害保健福祉事業を引き続き実施する。
(イ) 健康被害予防事業の実施
 公害健康被害補償予防協会(以下「協会」という。)は、協会に設けられた基金を基に、調査研究、知識の普及及び研修の各事業を直接行うとともに、地方公共団体等が旧第一種地域等を対象に行う計画作成、健康相談、健康診査、機能訓練、施設等整備等の各事業に対し助成金の交付を行う。
(ウ) 費用負担
 旧第一種地域に係る補償給付額(公害保健福祉事業に係る原因者負担分を含む。)の所要額は、平成8年度において約880億円と見込まれており、これらの費用を賄うため、固定発生源分については汚染負荷量賦課金を徴収し、自動車分については、自動車重量税収の一部を引き当てる。
イ 水俣病対策の推進
 水俣病対策については、認定業務を着実に推進するとともに、平成7年12月15日の閣議了解「水俣病対策について」に基づき、水俣病総合対策医療事業の申請受付の再開及び円滑な推進、国立水俣病研究センターの研究機能の充実等の地域再生・振興施策を実施する。
(ア) 水俣病総合対策医療事業等
 過去に通常レベルを超えるメチル水銀の曝露を受けた可能性があり、四肢末梢優位の感覚障害を有すると認められる人の健康上の問題の軽減・解消を図るため、療養費、療養手当等を支給する医療事業等を内容とする水俣病総合対策事業の円滑な推進を図る。なお、医療事業の申請については、平成7年12月15日の閣議了解「水俣病対策について」に基づき、8年7月1日までその受付を行う。
 認定業務の促進についても、検診医の確保、県外申請者のための検診の実施等検診審査体制の強化と円滑な実施等、関係者の理解と協力を得て、県と一体となって努力する。
(イ) 地域再生・振興施策
 地域再生・振興施策については、国立水俣病研究センターにおいて水俣病発生地域としての特性を活かした研究機能の充実等を図るとともに、水俣・芦北地域の振興を引き続きできる限り推進・支援していく。
 国立水俣病研究センターにおいては、「国立水俣病総合研究センター」に改組し、従来の水俣病の医学的研究に加え、新たに水俣病に関する社会科学的研究、自然科学的研究、資料の収集・整理・提供を幅広く行い、水俣病にかかる総合的研究を行えるよう組織の拡充を行うとともに、国内外の研究者が共同研究を行う「国際研究協力棟」を新設し、国際共同研究体制の強化を図ることとしている。また、WHO指定機関としての活動を行うとともに、海外の水銀汚染に関する調査研究等の国際協力を引き続き実施する。
(2) 環境保健に関する調査研究の充実
 環境保健の問題は、健康被害の未然防止を図ることが重要であり、平成8年度においては以下のような各種調査研究を行っていく。
ア 環境保健サーベイランス・システム
 環境庁においては、環境保健サーベイランス・システムの稼働により、大気汚染と健康状態との関係について、定期的・継続的に調査を行うとともに、システムの更なる向上を図る。
イ 環境保健施策基礎調査等
 環境庁においては、引き続き局地的汚染の健康影響の調査手法確立のための調査を行うとともに、新たに喘息等の症状悪化要因に関する調査研究を行う。また、新たな環境要因による健康影響についても引き続き調査研究を行う。
? 大気汚染と花粉症の相互作用に関する基礎的研究
 動物実験、情報の提供、疫学調査等を引き続き行う。
? 紫外線による健康影響調査
 紫外線の個人暴露量について引き続き調査研究する。
? 電磁環境の健康影響に関する調査研究
 電磁界暴露の健康影響に関する疫学的調査研究のための、具体的な手法について調査研究する。
 なお、協会においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を引き続き行う。
ウ カドミウムの慢性影響に関する調査研究
 従来の研究成果を踏まえ、実験動物を使用したカドミウムの長期微量投与実験等の研究を行う。
エ カドミウム環境汚染地域住民健康調査
 環境庁においては、カドミウム汚染地域住民の保健管理等今後の環境保健対策に資するため、神通川流域住民健康調査を引き続き実施する。
オ 環境汚染等健康影響基礎調査
 有害重金属の環境汚染等による健康影響を事前に予測し、適切な保健対策を推進するための基礎資料を得ることを目的として、有害重金属の暴露状況等を調査する。

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