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第1節 

1 共通的な施策の展開

 地域地域における多様な生態系の健全性を維持・回復するとともに、様々な場の中で自然と人間との豊かなふれあいを保ち、自然と人間との共生を確保するため、国土空間の自然的社会的特性を踏まえつつ、以下に掲げる施策を積極的に展開する。
(1) 原生的な自然の保全
ア 原生自然環境保全地域による保全
 人の手が加わっておらず、原生の状態が保たれている原生自然環境保全地域の自然環境の適正な保護・管理を図るため、平成7年度に引き続いて現況把握調査を行う。
イ 世界遺産地域の保全
 世界遺産一覧表に記載された屋久島、白神山地について、入山者の急増に対応した保全対策を講じるほか引き続き適切な保護・管理を図る。また、白神山地において、遺産地域の管理、調査研究等の拠点となるセンターの整備を、青森県側においては平成7年度に引き続き推進し、秋田県側において新たに着手する。
ウ 自然公園の特別保護地区の保全
 自然公園の中でも特にすぐれた景観を有する特別保護地区において、適正な保護管理を図る。
エ 森林生態系保護地域
 主要な森林帯を代表する原生的な天然林等を保存するため国有林野内に設定した森林生態系保護地域について、適正な保護管理を図る。
(2) すぐれた自然の保全
ア 自然環境保全地域による保全
 自然環境の適正な保全を図るため、昭和48年に閣議決定された自然環境保全基本方針にのっとり、自然環境保全基礎調査の結果を活用しながら、自然環境保全地域の指定を進める。
 また、自然環境保全地域を適正に保全し、それらが有するすぐれた自然環境の維持に資するため、昨年度に引き続いて、自然環境に係る現況把握及びモニタリングのための調査を実施する。
イ 自然公園の指定、公園計画の見直し
(ア) 公園の指定、公園区域及び公園計画の再検討
 国立公園を取り巻く社会条件等の変化に対応するため、自然保護の強化を基調として、公園区域及び公園計画の再検討を行い、再検討を終了した公園については、おおむね5年ごとにその点検を行う。また、国定公園については、都道府県から指定の要望のある地域について検討を行い、また、国立公園に準じて再検討等の作業を進める。
(イ) 乗入れ規制地域の指定
 車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させることを規制する区域を必要に応じ国立公園、国定公園において追加指定を行う。
ウ 自然公園における自然保護
(ア) 自然公園の管理の充実
 国立公園のそれぞれの地域の特性に応じた風致景観を維持するため管理計画の策定を推進し、自然公園法に基づく許可、認可等の適正な運用を図る。
 また、最近の余暇の増大、交通手段の発達、探勝方法の変化、自然保護の強化の要請等の社会条件の変化に対応した国立公園のきめ細かな管理を進める。
 さらに、管理体制の強化を引き続き進めるとともに、(財)自然公園美化管理財団等の民間団体の育成に努める。
(イ) 自然公園における環境保全対策
i) 自然景観修復事業等
 自然環境保全修復事業を含む自然公園核心地域総合整備事業(緑のダイヤモンド計画)や自然景観修復事業を、直轄又は都道府県の補助事業として実施する。
ii) 自然公園における美化清掃
(a) 総理府所管の集団施設地区については、関係道県及び市町村の協力の下に環境庁の直轄により清掃活動を実施する。
(b) 国立公園の総理府所管地以外で特に利用者の多い地域については、各地域の美化清掃団体の清掃活動に対し補助金を交付し、清掃活動を促進する。
(c) 自然公園クリーンデーにおける各種行事の実施等、美化思想の普及に努める。
iii) 特殊植物等の保全事業等
 国立公園又は国定公園に生育している貴重な植物の保護、復元を図るため、調査、試験施工、モニタリング等に要する経費を関係地方公共団体に補助する。
iv) 特定国立公園重点管理等事業
 自然公園の特に優れた自然環境を有する地域において、保全のための事業、調査や、土地所有者の協力を得て管理事業を実施する。
(ウ) 自然保護のための民有地買上げの推進
 優れた自然環境を保全していくため、昨年度に引き続き民有地買上げの推進を図る。
エ 生息地等保護区
 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)に基づき国内希少野生動植物種の生息・生育地として重要な地域である生息地等保護区の指定を進め、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図る。
オ 鳥獣保護区
 鳥獣の捕獲を禁止し、生息環境の改善に努めるなど、鳥獣の保護を図る地域として鳥獣保護区を設定し、さらに必要に応じて特別保護地区を指定することとしている。国においては、新たな国設鳥獣保護区の設定及び特別保護地区の指定を進め、各都道府県レベルにおいても、第7次鳥獣保護事業計画に基づき都道府県設鳥獣保護区の設定等を引き続き行われるよう指導する。
カ 史跡、名勝、天然記念物
 動植物種及び生態系を中心とした我が国を代表する自然を保全するため、現状変更規制、公有化等文化財(史跡、名勝、天然記念物)保護に係る各種制度を活用する。
キ 保安林等
 保安林について、優れた自然環境の保全を含む公益的観点から、計画的な配備、適正な管理等を行う。さらに国有林野においても、引き続き森林生物遺伝資源保存林、植物群落保護林、特定動物生息地保護林等の保護林の設定を行い、その適切な保護管理を行う。
ク 都市の緑地保全
 緑の基本計画に基づく緑地保全地区の指定を積極的に進めるとともに、緑地保全地区(近郊緑地特別保全地区を除く)については、事業費35億5,500万円で土地の買入れを、事業費3億円で緑地の保全と利用を図るため必要な施設の整備を行う。
 首都圏及び近畿圏の近郊緑地保全区域のうち、近郊緑地保全特別保全地区については事業費7億4,000万円で土地の買入れを、事業費1億円で緑地の適正な保全と利用を図るため必要な施設の整備を行う。
 都市における緑地の保全を図り、風致に富むまちづくりを推進する観点から風致地区の指定の推進を図る。
ケ ナショナル・トラスト運動による保全
 ナショナル・トラスト活動の推進を図るため、昨年度に引き続きシンポジウム等を開催し、ナショナル・トラスト活動の一層の普及啓発を図る。
(3) 自然とのふれあいの確保
ア 利用のための施設の整備
(ア) 国立・国定公園の利用施設
i) 基幹整備
 優れた自然環境を有する国立・国定公園において、これら自然環境の保全に配慮しつつ、自然とのふれあいを求める国民のニーズに応え、安全で快適な利用を推進するため、歩道、野営場、園地等利用の基幹となる施設の整備を引き続き推進する。また、国立・国定公園内の公衆トイレや野営場のうち、緊急に改善を要するものについては、引き続き計画的な再整備を行う。
ii) 自然公園核心地域総合整備事業(緑のダイヤモンド計画)
 国立・国定公園の核心となる特に優れた自然景観を有する広範な地域において、自然の保全や復元のための整備を一層強化するとともに、高度な自然学習や自然探勝のフィールドを面的な整備を引き続き推進する。
iii) エコ・ミュージアム整備事業
 国立・国定公園の主要利用拠点において、子どもたちがいきものや自然の植生などとふれあい、自然を学ぶことができる自然ふれあい体験のための中核施設の整備を引き続き推進する。
iv) エコロジーキャンプ整備事業
 国立・国定公園の中で家族が長期滞在し、自然とのふれあいができる環境にやさしいキャンプ場の整備を引き続き推進する。
(イ) 国民休暇村
 国立・国定公園の優れた自然環境の中で健全な野外活動を楽しむ等自然とのふれあいを求める国民の志向はますます増大するものと予測されるため、国民休暇村において自然に親しむための各種施設の整備を引き続き推進する。
(ウ) ふるさと自然ネットワーク
 身近な自然を活用し、いきものとふれあい、自然の中で憩い、国民が自然との共生を実感できる拠点(?環境と文化のむら、?ふるさといきものふれあいの里、?ふるさと自然のみち、?いきものふれあい浜辺、?ふれあい・やすらぎ温泉地、?国民保健温泉地)の整備を「ふるさと自然ネットワーク」として推進する。
(エ) 長距離自然歩道
 平成8年度においては、東北自然歩道の整備完了を目指すとともに中部北陸自然歩道の整備の推進を図る。また、新たに利用情報提供、自然学習、簡易宿泊等の機能を備えた利用拠点(ウォーカーズ・パーク)の整備に着手する。
 さらに、全国で8番目の路線となる近畿自然歩道の整備計画策定のための調査を実施する。
(オ) ふるさと自然公園国民休養地
 都道府県立自然公園内において、都市住民が身近な自然とふれあい、自然を理解するために必要な博物展示施設、園地、歩道等を総合的に整備する。平成8年度においても、引き続き整備充実を図る。
(カ) 国民宿舎、国民保養センター
 国民の余暇活動の多様化の時代を迎えて、国民宿舎に対する国民の要求はますます多様化することが予想されるので、設置主体である地方公共団体に対し、施設の整備について助成及び指導を行う。
 国民保養センターは主として地域住民の手近な日帰り休養施設として親しまれ活用されており、設置主体である地方公共団体に対し、施設の整備について助成及び指導を行う。
(キ) 保健保安林、自然休養林
 主として都市近郊等における生活環境保全機能及び保健休養機能の高い優れた森林である保健保安林の安全快適な利用の促進を図るための施設整備につき助成する等のほか、環境保全保安林整備事業を推進する。また、国民が自然に親しみ得る森林環境の整備を行う「豊かな森林づくり」対策等につき助成する。
 国有林野については、自然休養林等のレクリエーションの森において、利用者に協力を求める「森林環境整備推進協力金」等により施設又は森林の整備等を行うとともに、スポーツ施設、保健休養施設等の総合的な整備により、人と森林とのふれあいの場を創造し、併せて地域の振興等に資するヒューマン・グリーン・プラン及び家族が気軽に自然とふれあえる場を提供する森林ふれあい基地づくり整備モデル事業を推進する。
(ク) 「山村で休暇を」特別対策等
 都市住民などが山村に滞在して余暇を過ごすことを促進し、山村の活性化を図るため、森林の中を散策できる空間や交流のための基盤となる施設などの整備を計画的に実施する「山村で休暇を」特別対策のほか、都市山村交流活動の推進に必要な体験・学習の場、交流拠点等の整備を促進する「緑とのふれあいの里整備特別対策事業」を実施する。
 なお、平成8年度からは、都市住民(家族等)が森林所有者との契約によって森林づくりを行うことを推進するため、実施体制や基盤施設等を整備するファミリーの森林づくりモデル事業を実施する。
(ケ) 家族キャンプ村、家族旅行村
 家族キャンプ村については、周辺の観光レクリエーション施設や観光資源、自然・文化資源との有機的な連携を図りつつオートキャンプ施設を中核とした整備を推進する。平成8年度においては11地区の整備を継続するとともに新規に3地区の整備を行う。
 家族旅行村については、今後とも家族が恵まれた自然の中で手軽に利用できるように整備を行う。平成8年度においては、3地区の整備を継続する。
(コ) 少年自然の家
 平成8年度は、引き続き、国立少年自然の家の施設設備等の充実を図るとともに、公立少年自然の家の建設事業に対し補助を行う。
(サ) 天然記念物整備活用事業
 天然記念物を国民の身近な存在とすることによって、その保存について国民の理解を一層増進するため、天然記念物の学術的価値や現況等に応じた学習施設・観察施設等を整備する天然記念物整備活用事業を実施する。
イ 自然解説活動等の展開
 人々の自然への理解を深め、自然に対する愛情とモラルを育成するため、ビジターセンター等において、自然観察会をはじめとした自然とふれあうための各種の活動を実施する。
 各種の自然とふれあうための施設や自然研究路を活用し、4月29日の「自然とふれあうみどりの日の集い」、7月21日から8月20日の「自然に親しむ運動」、10月の「全国・自然歩道を歩こう月間」等を通じて、自然とのふれあいを積極的に推進する。
 なお、「自然に親しむ運動」の中心行事として富士箱根伊豆国立公園(静岡県)において、第38回自然公園大会を開催する。
 また、公益信託自然保護ボランティアファンドの発展・充実に努める。
 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林とのふれあいを楽しみながら理解を深める森林倶楽部(森林ふれあい推進事業)等を実施する。
(4) 森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成
ア 森林
 林業生産との調和を図りつつ、良好な自然環境を形成するため、森林計画制度に基づき、健全な森林を維持、造成するとともに、林地開発許可制度の適正な運用により、森林の無秩序な開発を防止し、森林の機能の維持に努める。特に地域の特性に応じて広葉樹林の造成・整備、複層林や育成天然林施業等による適切な森林の造成及び保育・管理を図るため、森林整備事業を計画的に推進する。また、平成8年度より治山事業においては、地域の生態系を重視した渓畔林等の整備、自然公園等事業と連携して自然環境の保全・整備を図る事業を新たに実施するとともに、施設修繕を行う際に生物の生息・生育、自然環境等に配慮して実施する。
 保安林については、適正な配備、維持管理及び整備を推進する。
 一方、一般の森林利用者に対し、森林や林業への理解を深めるため、県民の森や森林とのふれあいの活動において森林体験ツアーをはじめ各種の森林、林業解説活動を展開する。
 国有林野においては、その重点的に発揮すべき機能に着目して、国土保全林、自然維持林、森林空間利用林、木材生産林に類型化し、これを踏まえた多様な森林の整備等を行う。その中で天然林施業の推進や複層林の造成を含めた人工林の適正な整備、広葉樹林の積極的な造成等を図るなど、自然環境の維持・形成に配慮した森林施業を推進する。
 さらに、森林病害虫等防除法等に基づき、森林病害虫等の防除等を実施する。特に、松くい虫被害対策については、松くい虫被害対策特別措置法等に基づき、各種防除措置等を、環境の保全に配慮しつつ、総合的に実施する。
 このほか、保安林及び林野火災等が多発する森林については、緑のレンジャー及び森林保全推進員による森林パトロール、林野火災予防資機材の配備等に加え、防火森林、防火林道の整備について助成するとともに、全国山火事予防運動の実施等啓発活動を推進する。
 国民参加による森林づくりを図るため、分収林制度を積極的に推進するとともに、「緑と水の森林基金」を活用し、国民の期待にこたえた森林資源の整備、利用等に関する総合的な調査研究、普及啓発等を実施する。
イ 農地
 環境保全、自然に恵まれた美しい景観の提供といった農業・農村の持つ公益的機能を発揮させるという観点から適切な形での農地等の維持・形成を図る。ため池等の周辺において生態系空間(ビオトープ)を保全する事業や生活環境の整備等を生態系の保全に配慮しながら総合的に行う事業等に助成し、多様な生物相と豊かな環境に恵まれた農村空間(エコビレッジ)の形成を促進するほか、生態系の多様性を確保するための効果的な農業用施設等の配置や維持管理のあり方、希少野生動植物種の生息状況の把握及び保全に配慮した農業農村整備事業の実施方法等について検討を行う。
 土地改良施設や耕作放棄地等の農地を地域住民自らが保全していく共同活動を推進していくための調査研究、人材育成などを都道府県に基金を造成し支援するほか、農村地域の美しい景観や環境を良好に整備、管理していくために、地域住民、地元企業、自治体等が一体となって身近な環境を見直し、自ら改善していく地域の環境改善活動(グラウンドワーク)の推進を図るための事業を行う。
 また、自然環境の維持・形成に資するため、農業集落排水事業を促進するとともに、地域の実情に応じ、特定環境保全公共下水道等の整備を進める。
 農業においては、農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の節減等による環境保全型農業の全国的な展開を図る。このため、都道府県、市町村における推進方針の策定等の実施、生産物の品質評価、畜産由来肥料の効果的活用、その実践のための条件整備等を行うとともに、営農現場に密着した各種の指導・助言及び農業団体間の情報交換等を行うことに加え、環境保全型農業の啓発・普及等を行う拠点施設を整備する。また、家畜ふん尿の適正な処理と耕種農業における堆きゅう肥の利用を促進するため、畜産環境保全に関する農家指導及び耕種部門との連携、家畜ふん尿の処理利用施設の整備等を行う。
 市街化区域内農地のうち、生産緑地地区に指定されたものについては、緑地としての機能が維持されるよう、適正な保全を図るほか、都市住民の交流の場としての活用を図るため、市民農園整備事業等により、市民農園の整備を推進する。
ウ 水辺地等
 地域住民が身近に水に接する場である水辺地においては、排水規制、浄化施設の整備等従来からの水質保全施策に加え、住民が水辺環境に関心を持ち、生活の中で水と人との関係を考えていくことができる基盤づくりや、自発的に環境保全に参加できる環境づくりの施策を展開する。特に、カエルやメダカ等の動物やヨシ等の植物が生息できる水辺環境の再生や「名水百選」の中でも水質の悪化等が懸念されるものについて従来の形への復元等水辺空間の再生・創造により、住民による自発的な水環境保全活動を支援する。
 また、平成8年より7月20日が新たに「海の日」として国民の祝日になることを踏まえ、海浜清掃活動等を行っている様々な組織の支援を通じた海と・386Cの環境美化活動を全国民的な運動に一層広げていく。
(5) 自然的環境の整備
ア 都市における緑地の整備等
 都市緑地保全法に基づく緑の基本計画の策定を推進するとともに、都市の緑とオープンスペースを確保するための施策を総合的かつ計画的に展開する。また、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を創出するため「都市山麓グリーンベルト整備事業」を新たに実施し、無秩序な市街化の防止や都市周辺に広がる緑のビオトープ空間の創出に寄与する。
イ 都市公園等
 平成8年度は、第6次都市公園等整備五箇年計画の初年度として、都市環境の保全・改善や自然との共生への対応、広域的なレクリエーション活動や個性と活力のある都市・農村づくりへの対応などを図るため、事業費4,081億7,800万円をもって、次の事項に重点をおいて都市公園整備事業の積極的推進を図る。
 国営公園については、全国で16箇所において整備を進める。
 大震火災時において、避難地、避難路等として機能する都市公園(防災公園)及び防災緑地、高齢者、障害者等に配慮した福祉施設と一体となった都市公園(いきいきふれあい公園)、国民の健康の維持増進に特に配慮した都市公園(健康運動公園、ウエルネスパーク)の整備、地域レベルでの市民の環境活動や指導者の育成などの拠点となる環境ふれあい公園の整備、都市住民が土と自然にふれあえる場となる市民農園、地域の特性等を活かした整備を行い地域活性化の核となる地域活性化拠点公園、農山漁村における居住環境の向上を目的とする公園(カントリーパーク)、緑の基本計画に基づきまちの顔となるような地区において緑化を実施する緑化重点地区整備事業等、各種施策に応じた都市公園等の整備を積極的に推進する。
ウ 国民公園及び戦没者墓苑
 皇居外苑、新宿御苑、京都御苑及び千鳥ケ淵戦没者墓苑を広く国民の利用の供するため、引き続き園内の清掃、芝生・樹木の手入れを行う。また、皇居外苑二重橋前高欄の改修工事や京都御苑の御門の改修、新宿御苑のトイレ新設等維持管理のための措置を講じ、公園の保全に努める。
エ 河川環境等の整備
(ア) 河川
 河川環境に関する基礎情報の収集整備のため、河川並びにダム湖及びその周辺における生物の生息状況の調査、河川空間の利用実態の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を実施する。また、河川環境に関する専門的知識を有する方々の参加を得て、きめ細かな河川環境の管理に資する「河川環境保全モニター制度」を実施する。
 河川環境の整備については、河川環境管理基本計画の策定を推進し、これに基づき、自然環境の保全に配慮するとともに、河川の高水敷等を整備し、水と緑の公共空間として地域住民に憩いとレクリエーションの場を提供するため、河川の自然環境の適正利用のための施策を推進し、また、流域の水循環の適正化を図るための種々の施策を推進する。
 環境に配慮した河川の整備を行い、良好なうるおいのある水辺空間の保全並びに形成を図り、河川水面利用を中心とした河川利用の適正化、推進を図る「河川環境整備事業(河道整備事業及び河川利用推進事業)」、周辺の景観や地域整備と一体となった河川改修を行う「ふるさとの川整備事業」、河川改修と市街地整備を併せて行う「マイタウンマイリバー整備事業」、堤防の強化と併せ側帯上に植樹を行う「桜づつみモデル事業」、生物の良好な生育環境に配慮し、併せて美しい自然景観を保全あるいは創出する「多自然型川づくり」、河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置等により魚類の遡上環境の改善を行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」、高齢者、障害者に配慮し、すべての人に優しい河川環境を整備する「まほろばの川づくりモデル事業」、劣悪な環境になっている河川を周辺の地域環境にふさわしい本来の川らしい川に再生し、個性ある地域づくりに資するため、質の高い河川整備を行う「河川再生事業」を実施する。
(イ) ダム周辺
 ダム貯水池において整地、法面保護、緑化対策等を図り、ダム湖の活用、親水性の向上を図る「ダム湖活用環境整備事業」を新たに金山ダム等4ダムを加え、合計38ダムで実施する。また、ダム周辺の魚類の生態系を含む河川環境の回復を目的とした「ダム水環境改善事業」を新たに相俣ダムを加え、合計7ダムで実施する。
 さらに堆砂対策を講じ、常時一定水位で利用可能な湖面を確保し、ダム湖の親水性を向上させる「レクリエーション湖面整備ダム事業」を1ダムにおいて実施する。また、地方公共団体等が主体となるレクリエーション事業と一体となって共同ダム事業を行う「レクリエーション多目的ダム事業」を3ダムにおいて実施する。
(ウ) 砂防施設周辺等
 都市周辺渓流において、自然環境との調和を図り、緑と水辺の空間を確保し生活環境の整備を行う「砂防環境整備事業」、景観や親水性の向上、生態系の回復等を図り、良好な渓流環境を再生する「渓流再生事業」を実施する。
 さらに、土砂災害の防止と併せて渓流における景観・生態系等の自然環境を保全する砂防事業を推進するため、渓流環境整備計画を策定する。またこれらの事業を実施するための基礎情報の収集整備のため、自然環境調査及び渓流空間利用実態調査からなる「水と緑の渓流づくり調査」を実施する。
 都市部におけるがけ崩れ対策においては、崩壊対策の際、既存の樹木等の活用を図る緑の斜面保全事業を行う。
オ 港湾・漁港における環境の整備
(ア) 港湾
 自然環境と調和し、アメニティ豊かな環境と共生する港湾(エコポート)の実現を促進する「エコポートモデル事業」を実施する。また、港湾における環境施策を広く地域社会に明らかにするため、環境改善が急がれる三大湾に位置する港湾等において「港湾環境計画」を策定する。
 親水性に富む緑地等の整備を引き続き行うとともに、港湾緑地、人工海浜等とオートキャンプ施設とを一体的に整備する「シーサイド・オート・ビレッジ整備事業」を実施する。また、歴史的港湾施設の保存活用を図るとともに周辺の環境整備を一体的に進める「歴史的港湾環境創造事業」及び良好な港湾景観の形成を促進する「港湾景観形成モデル事業」を実施する。
 公共事業をはじめとする多様な整備手法を用いてマリーナ等を整備し、快適な環境の保全と創出に寄与する。また、マリーナ等を中心とし、周辺の環境と調和した安全で快適な海洋性レクリエーション基地の整備を推進する「コースタルリゾートプロジェクト」を実施する。
(イ) 漁港
 海水交流機能を有する防波堤等の整備、水産動植物の生息、繁殖が可能な護岸等の整備並びに自然環境への影響を緩和するための海浜等の整備を総合的に行う「自然調和型漁港づくり推進事業」を積極的に展開する。
 また、漁港内の浮遊ごみ等を処理する施設の整備、漁港内の海底に堆積した汚泥等の除去並びに水質等の改善を必要とする漁港における藻場等の造成及び覆砂等を行う漁港環境整備事業を推進する。さらに漁港及び周辺水域の水質浄化に資する漁業集落排水施設の整備促進を図る。
カ 海岸における環境の整備
 多様な海洋性レクレーション需要の増大に伴う海浜利用の進展に対処するとともに、快適で潤いのある海岸環境の保全と創出を図るため、砂浜の保全・復元により生物の生育・生息地を確保しつつ、景観上も優れた人と海の自然のふれあいの場を整備する海岸環境整備事業を平成8年度は全国356箇所において実施する。
 また、自然と共生し、生物の豊かな生息環境を保全・創出するために、生物の生息・繁殖場所となる砂浜、干潟、磯、緑地の保全や創出を行うエコ・コースト事業及び、他の自然環境保全整備事業との連携を図り、陸域から海岸域までのビオトープを形成するための海と陸の緑のネットワーク事業を新たに実施する。
 沿岸域の藻場・干潟の造成、ヘドロの浚渫等を行う。
キ 緑化推進運動への取組
 緑化推進連絡会議を中心に国土の緑化に関し、関係行政機関相互の緊密な連絡を図り、以下のような施策を実施し、緑化推進運動の一層の展開を定着化を図る。
?「小鳥がさえずる森づくり」運動を推進するため、普及啓発活動等を実施するとともに、ゴルファーによる緑化協力運動を推進する。
?国民の国土緑化思想の高揚を図り、国土緑化を推進するため、全国植樹祭等を開催する事業、学校林整備等のモデル計画の策定、国民の自主的な森林づくりを支援・促進する事業等に助成するほか、国民参加の森林づくりを推進する仕組みの構築とその普及・啓発を推進する。
 また、緑化に関する技術開発、樹木医の養成、巨樹・古木林等衰退しつつあるものにモデル的に緊急治療を実施するとともに、保全技術の確立・普及、水質浄化林のモデル林造成等に助成する。
 さらに、「みどりの日」、「みどりの週間」を中心に、国民各層が参加する緑化活動や緑の募金運動等を全国的に展開する。
?工場立地法に基づき工場緑化の推進に努めるとともに、都道府県を通じ工場緑化のコンサルティング等を実施する。また、緑地等の整備を行う工場について日本開発銀行及び中小企業金融公庫から融資を行う。
?「みどりの日」、「みどりの週間」を中心とした春季における都市緑化運動期間(4〜6月)や都市緑化月間(10月)等に全国各地で多彩な都市緑化推進関連行事を開催するほか、国際花とみどりの博覧会の理念を継承し、都市緑化推進運動の国民的な運動としての展開を図る。
 また、緑の相談所の整備、緑地協定の締結指導、(財)都市緑化基金及び地方都市緑化基金の拡充、「住民、企業、行政」が一体となった地域緑化活動等を推進する。
(6) 調査研究の推進
 平成8年度においては、第5回自然環境保全基礎調査として「植生調査」、「海辺調査」、「環境指標種調査」等を実施する。生物多様性保全の観点から、種の分布現況の全体像を把握する「種の多様性調査」と、重要な生態系が成立している地域を総合的に把握する「生態系多様性地域調査」からなる「生物多様性調査」を昨年度に引き続き実施する。
 さらに、里地自然地域等における自然環境の保全、絶滅のおそれのある野生動植物の保護や鳥獣の保護管理対策の強化に資するため、調査研究を推進する。

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