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第5節 

8 砂漠化の防止

(1) 問題の概要
 砂漠化とは、1992年(平成4年)6月の地球サミットで採択されたアジェンダ21における定義によると、「乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における気候上の変動や人間活動を含む様々な要素に起因する土地の劣化」である。この場合、「土地」とは、土壌や水資源、地面の表層や植生などを含む概念であり、「劣化」とは、降雨や風による土壌の流出や河床への堆積、長期間にわたる自然植生の多様性の減少、土地の塩性化など、土地に作用する一つまたは複数のプロセスによって生じる土地の資源としての潜在力の減少をいう。1991年(平成3年)のUNEPの砂漠化の現状等に関する調査によれば、砂漠化が進行しつつある地域は地球上の全陸地の約4分の1、乾燥地の約70%にあたる約36億haに達し、世界人口の約6分の1の人々がその影響を受けている。
 こうした砂漠化の主要な原因としては、草地の再生能力を超えた家畜の放牧や休耕期間の短縮等による地力の低下、薪炭材の過剰な採取、不適切な潅漑(かんがい)に起因する農地の塩分濃度の上昇等が考えられる。その背景には、開発途上国の地域住民の貧困と人口増加のような社会的、経済的要因があり、砂漠化の問題をより複雑にしている。
(2) 対 策
 砂漠化防止に関する国際的な取組としては、1968年(昭和43年)に始まったアフリカのサハラ南縁サヘル地帯の旱魃(かんばつ)を契機として、1977年(昭和52年)にUNEPが中心となり、国連砂漠化防止会議(UNCOD)が開催された。さらに、地球サミットのアジェンダ21を受けて、1992年(平成4年)の第47回国連総会において、砂漠化防止条約策定のための政府間交渉委員会(INCD)の設立が決議された。条約交渉会議は1994年(平成6年)6月までに第5回の会合が開催され、第5回会合において、砂漠化防止条約(本体及び4地域実施附属書)が「条約発効までの暫定措置に関する決議」及び「アフリカに対する緊急行動に関する決議」の2つの決議と共に採択された。また、1994年(平成6年)10月には、条約署名式典がパリで開催され、我が国を含む86ヶ国(EUを含む。)が署名を行った。(平成8年2月現在、締結25ヵ国、署名115ヵ国。)
 我が国としては、締約国会議に向け継続中の砂漠化防止条約交渉への一層の積極的な貢献を図る見地から、社会・経済的な観点を含めた総合的な砂漠化防止対策の在り方について検討を行っている。このほか、政府レベルでは、二国間、多国間援助を通じた砂漠化関連プロジェクトの実施、インド及び中国における砂漠化と人間活動の相互影響評価に関する研究、西アフリカサヘル地域における地下水の有効利用を中核とする持続可能なコミュニティー形成を図るための調査、ニジェール河流域における砂漠化に対処するための農業開発等の調査や中国タクラマカン砂漠周辺における砂漠化の機構解明に関する国際共同研究、砂漠化地域における森林復旧技術に関する調査、黒河流域の地表と大気の相互作用に関する日中共同研究等が継続して行われている。さらに、土壌改良のための保水剤の開発がエジプトにおいて行われた。
 民間レベルでは、緑のサヘルなどのNGOがアフリカ、中国等で砂漠化防止活動を実施している。

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