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第1節 

1 地球環境保全に関する国際的な連携の確保

(1) 国際機構等による連携
ア 地球サミットのフォローアップ
(ア) 国際的な取組
i) 持続可能な開発委員会(CSD)
 1992年(平成4年)の地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21の中で、地球サミットの効果的なフォローアップを確保するため、「ハイレベルな『持続可能な開発委員会』を国連憲章第68条に従い、設立すべきである」とされた。これを受け、同年の第47回国連総会における設立の決議を経て、1993年(平成5年)2月国連経済社会理事会の下部組織として「持続可能な開発委員会」(CSD)が設立された。
 CSDは我が国を含めた国連加盟国53か国から成り、その主要目的は、?アジェンダ21及び環境と開発の統合に関する国連の活動の実施状況の監視、?各国がアジェンダ21を実施するために着手した活動等についてまとめたレポート等の検討、?アジェンダ21に盛り込まれた技術移転や資金問題に関するコミットメント(約束)の実施の進捗状況のレヴュー、?リオ宣言及び森林原則声明に盛り込まれた諸原則の推進、?アジェンダ21の実施に関する適切な勧告の経済社会理事会を通じた国連総会への提出、等である。
 第1回会合は、1993年(平成5年)6月に開催され、1997年(平成9年)に開催が予定されている国連環境特別総会に向けて、アジェンダ21の実施状況について総括的な評価を行うとの「多年度テーマ別検討計画」が合意された(第5-1-2表)。
 1995年(平成7年)4月、第3回会合が、メンバー国53か国(内約50か国より閣僚レベル)及び非メンバー国他の多数の参加を得て開催され、「多年度テーマ別検討計画」に従い、分野横断的なテーマとして、貿易と環境、資金、技術移転、持続可能な消費パターン等、分野別のテーマとして、土地、森林、砂漠化、農業、生物多様性等についての検討が行われ、今後の行動のための提案を含む20の決定及び閣僚クラスのハイレベル会合の「議長総括」を採択した。
ii) 持続可能な開発に関する高級諮問評議会
 科学分野も含め、環境と開発に造詣(ぞうけい)の深い有識者により構成される「高級諮問評議会」の設置につき、アジェンダ21の第38章(国際的な機構の整備)において、事務総長が国連総会に対し勧告を行うこととされた。
 これを受け、1993年(平成5年)7月、ブトロス・ブトロス・ガーリ国連事務総長より高級諮問評議会の設置が発表され、9月には第1回会合が、1995年(平成7年)5月には第4回会合が開催された。
(イ) アジア・太平洋地域における取組
i) アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア'95)
 環境庁は、1995年(平成7年)6月21日、22日に静岡県静岡市及び清水市において、「エコ・アジア'95」を開催した。エコ・アジアはアジア太平洋地域諸国の環境担当大臣を含む政府関係者、国際機関、民間団体、学識経験者等が、ハイレベルの有識者としての立場で参加し、自由に意見の交換を行う機会を提供することにより、域内各国政府の長期的な環境保全に係る取組を推進し、同地域の持続可能な開発の実現に資することを目的としたものであり、1991年以降、1992年を除き毎年開催されてきている。
 「エコ・アジア'95」は、「エコ・アジア'94」で合意されたとおり、高級事務レベルで開催され、地域内22ヵ国の政府高官及び8国際機関の代表者をはじめとする多数の参加があった。会議においては、「エコ・アジア'93」で実施が合意された「アジア太平洋地域の環境と開発に関する長期展望プロジェクト」の中間報告が行われたほか、新たに、アジア太平洋地域における環境情報ネットワークの検討のための「アジア太平洋環境情報ネットワーク(エコ・アジア・ネット)構想プロジェクト」の実施が支持された。
ii) 環日本海環境協力会議
 北東アジア地域の環境問題に関する環境行政レベルでの情報交換及び政策対話を行い、アジェンダ21で強調されている地域協力の促進を図るため、1992年(平成4年)より毎年、「環日本海環境協力会議」が開催されている。
 1995年(平成7年)9月韓国釜山にて開催された第4回会議では、アジェンダ21を支援するグループ(地方公共団体、NGO)の役割、汚染物質の越境移動、気候変動枠組条約、有害化学物質、都市環境問題について活発な議論が行われた。
(ウ) 国内における取組
i) 「アジェンダ21」行動計画の実施
 アジェンダ21の国別行動計画については、地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21においてその準備及び検討が示唆されており、1992年(平成4年)のミュンヘン・サミット及び1993年(平成5年)の東京サミットにおいて、1993年末までに策定し、公表することとされた。
 これを受け、政府は平成5年12月に開催された地球環境保全に関する関係閣僚会議において「『アジェンダ21』行動計画」を決定し、CSD事務局に提出した。
 この「『アジェンダ21』行動計画」は、「アジェンダ21」の章立てに応じたプログラム分野ごとに我が国が今後実施しようとする具体的な事項を行動計画としてとりまとめたものである。本行動計画では以下の項目について重点的に実施していくこととしており、これに則り、持続可能な開発の達成に向けた種々の取組がなされている。
? 地球環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築及び国民のライフ・スタイル自体を環境配慮型に変えるための普及、啓発等への努力
? 地球環境保全に関する実効的な国際的枠組みづくりへの参加、貢献
? 地球環境保全に向け、地球環境ファシリティ(GEF)を始めとする資金供与の制度の整備のための国際的取組に積極的に参画
? 環境上適正な技術移転の促進等の実施を通じた開発途上国の環境問題への対処能力の向上への貢献
? 地球環境保全に関する観測・監視と調査研究の国際的連携の確保及びその実施
? 中央政府、地方公共団体、企業、非政府組織等広範な社会構成員の効果的な連携の強化
ii) ローカルアジェンダ21
 アジェンダ21においては、その実施主体として地方団共団体の役割を期待しており、地方公共団体の取組を効果的に進めるため、ローカルアジェンダ21を策定することを求めている。環境庁は、ローカルアジェンダ21の策定のための指針を作成するために「ローカルアジェンダ21策定指針検討会」を設置し、検討を進めてきたが、平成6年6月20日に「ローカルアジェンダ21策定に当たっての考え方」として指針を取りまとめ、公表した。また、平成7年6月には、地域の環境計画づくりを通じて得られてきたこれまでの経験では必ずしも十分でないと思われる配慮事項やポイントを特に重点的に取りまとめた「ローカルアジェンダ21策定ガイド」を公表した。
iii) 環境と貿易の問題への取組
 貿易の自由化は、資源の効率的な利用の促進を通じ、環境にもプラスの影響をもたらすことが期待され、持続可能な開発に資するとされる一方、商品、資本等の移動を活発化させ、資源消費の増大、汚染物質や廃棄物の排出を増大させる結果として環境問題を発生・悪化させるのではないかと懸念されるようになっている(貿易による環境への影響)。他方、環境問題に対する意識の高まりを背景に、環境保全を目的とした貿易措置や貿易に影響を及ぼす国内措置がとられるようになってきており、自由貿易を阻害するのではないかとの懸念も広がっている。また、環境保護を口実にした保護貿易主義に対する懸念も存在する(環境上の措置による貿易への影響)。このような懸念を背景に、地球サミットや経済協力開発機構(OECD)等での議論を通じて、持続可能な開発の実現のために、環境政策と貿易政策の相互支持化を図るとの基本方針が国際的なコンセンサスとして形成されてきた。しかし、先進国と途上国の利害の対立や、貿易サイドと環境サイドの立場の違いを調整しつつ、具体的にどのような相互支持化を実現するのかが課題となっている。
 1994年(平成6年)環境庁長官が主催する「地球的規模の環境問題に関する懇談会」の下に開催された「環境と貿易に関する特別委員会」は、1995年(平成7年)4月に報告書を提出し、環境政策と多角的貿易システム(WTO協定・貿易ルール)の関係についての具体的な考え方を示すとともに、日本政府に対し、アジア太平洋地域に重点を置きつつ環境協力を一層推進し、貿易と環境の相互支持化が図られるよう積極的に働きかけていくことを求めている。現在、環境庁は、同報告書を踏まえ、アジア・太平洋地域における環境と貿易の実証的研究を進めるとともに、世界貿易機関(WTO)やOECD等における国際的な議論に積極的に参加している。
イ 国連における活動
 国連環境計画(UNEP)は、1972年(昭和47年)にストックホルムで開催された国連人間環境会議を契機に、既存の国連システム内の諸機関が行っている環境関係の諸活動を一元的に調整し、かつ、これら諸機関等の環境保全分野での活動を促進することを目的として創設された。UNEPが実施するプログラムは、従来、地球環境監視、環境法、陸上生態系等の12分野から構成されていたが、1995年(平成7年)5月の第18回管理理事会において、横断的な構造の5分野(自然資源の持続可能な管理と利用、持続可能な生産と消費、健康と福祉のためのより良い環境、地球規模化と環境、地球的及び地域的レベルの支援措置)での計画が採択され、抜本的な再編成が実施された。
 UNEPに対して、我が国は、創設当初から理事国として、UNEPの管理理事会に参画するとともに、環境基金に対し、平成7年は900万ドル(米国に次いで世界第2位)を拠出する等多大の貢献を行ってきた。
 また、1992年(平成4年)10月に、UNEPの内部機関であるUNEP国際環境技術センターが、日本で初めての環境関係の国連施設として、大阪市及び滋賀県に開設された。同センターは、開発途上国等への環境上適正な技術の移転を目的とし、淡水湖沼集水域の環境管理の技術分野を担当する滋賀事務所と、大都市の環境管理を中心とした技術分野を担当する大阪事務所とから構成され、環境保全技術に関するデータベースの整備、情報提供、研修、コンサルティング等の業務を行っている。
 国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)においては、1985年以降、5年に1度環境大臣会議を開催している。1995年11月には、3回目の環境大臣会議が開催され、「アジア太平洋における環境上健全で持続可能な開発に関する閣僚宣言」及び「1996-2000年の環境上健全で持続可能な開発のための地域行動計画」が採択された。
 1995年9月、国連主催による第4回世界女性会議が北京で開催された。本会議の目的は、女性の平等、開発及び平和を推進するため、1985年(昭和60年)の「国際婦人の十年」ナイロビ世界会議において採択された「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」の実施状況を検討・評価するとともに、西暦2000年に向けての「行動要領」の策定を行うことであった。本会議では、「北京宣言」と「行動要領」が採択された。「行動要領」には、第?章「戦略目標及び行動」に「女性と環境」の項が設けられ、「あらゆるレベルの環境に関する意志決定に、女性を積極的に巻き込むこと」、「持続可能な開発のための政策及び計画に、ジェンダーの関心事項と視点を組み込むこと」及び「開発及び環境政策が女性に及ぼす影響を評価するための国内、地域及び国際レベルの仕組みを強化又は創設すること」を戦略目標として位置づけている。
 また、東京に本部をおく国連大学(UNU)では、1993年に地球環境問題に対する学術分野での研究・人材に関する行動計画(「国連大学アジェンダ21」)を策定するなど環境問題に対する取組を行っている。
ウ 経済協力開発機構(OECD)及び国際エネルギー機関(IEA)における活動
 OECDは、先進工業国間の経済に関する国際協力機関であり、平成8年3月31日現在26か国が加盟している。最高意思決定機関は理事会であり、毎年1回閣僚レベルの閣僚理事会が開催される。
 1960年代末の全世界的な環境問題への関心の高まりを反映し、1970年(昭和45年)7月環境委員会が設置され、1992年(平成4年)3月には、一部改組のうえ、環境政策委員会へと名称が変更された。
 環境政策委員会では、加盟各国政府が環境政策を企画立案する上で重要と思われる問題について検討が行われる。その結果は必要に応じて理事会においてOECD決定あるいは勧告として採択されるほか、調査、研究等の成果がレポートとして公表され広く活用されており、汚染者負担原則(PPP)の確立・普及等の成果を生んできている。
 また、近年はOECDのその他の委員会においても各々の視点から環境問題が横断的に取り上げられてきている。さらに、環境政策委員会と他の各委員会との合同の作業も増加しており、例えば、貿易委員会との間では「貿易と環境」に関する合同専門家会合が設置されており、1995年(平成7年)6月の閣僚理事会に分析作業の成果を報告書にまとめて提出した。また、開発援助委員会(DAC)との間では「開発援助と環境」について、租税委員会との間では「環境と税制」について検討を行っている。環境政策委員会では、おおむね5年に1度閣僚レベルの会議を開催しており、1996年(平成8年)2月に開催された第5回環境政策委員会閣僚会議では、「グローバル化時代の環境政策」という全体のテーマのもと、過去のOECD諸国における環境政策のレビューと、21世紀に向けた環境保全のために必要とされる新たな戦略・政策手段を明らかにした。さらにOECDに、?グローバル化と環境政策の関係について調査検討を進め、環境政策と競争力、雇用、投資、貿易及び技術を含む構造的問題の関係を分析し、1997年のOECD閣僚理事会へ報告を行うこと、?様々な経済分野における補助金・税ディスインセンティブの環境への影響について1995年5月のG7環境大臣会合での提案に基づき分析を進め、2年以内にOECD理事会に報告すること、?1997年春までにOECD理事会への勧告を含む報告書を提出する観点から、環境(グリーン)税制改革の可能性についての研究を開始することを求めることが合意された。
 さらに、気候変動枠組条約に基づく議定書交渉の進展に寄与するため、OECD/IEAコモンアクション・プロジェクトとして、先進国間で将来的に共通に実施することが可能な、費用効果にすぐれた温室効果ガス排出抑制や吸収源強化のための政策・措置について分析・評価が進められている。また、1995年3月〜4月の気候変動枠組条約第1回締約国会議において、OECD/IEA加盟24カ国が提示した気候変動技術イニシアティブ(CTI)については、1996年2月、その具体化を進めるためのタスク・フォースの設立が合意され、我が国は二酸化炭素の固定化等の革新的技術開発についてのタスク・フォースのリーダー国として選出され、今後、本分野での国際協力の促進をリードしていくこととなった。
エ 世界貿易機関(WTO)における取組
 1995年(平成7年)1月に設立されたWTOの下に、「貿易と環境に関する委員会」が設置され、?環境目的の貿易措置と多角的貿易システム(WTO協定)との関係、?環境政策の透明性、?環境目的の税・課徴金やエコラベル等の環境措置と多角的貿易システムとの関係、?WTOの紛争解決メカニズムと多国間環境協定(MEAs)の紛争解決メカニズムとの関係等の項目について検討を行っている。
 「貿易と環境に関する委員会」は、1996年(平成8年)12月に、シンガポールで開催予定のWTO設立後初めて開かれる第1回WTO閣僚会議において、貿易措置と環境措置との関係やWTO協定の改正が必要か否か等につき報告を行うことになっている。我が国は、貿易政策と環境政策を相互支持的にするため、同委員会の議論に積極的に参加している。
オ アジア・太平洋経済協力(APEC)における環境問題への取組
 アジア・太平洋地域の経済問題に関する協議システムであるアジア・太平洋経済協力(APEC)は、1995年(平成7年)11月に大阪で、第7回閣僚会議、非公式首脳会議を開催し、「経済首脳の行動宣言」、「大阪行動指針(アクション・アジェンダ)」及び「閣僚共同声明」を採択した。首脳宣言では、アジア太平洋地域における急速な経済成長や人口増加により、食料やエネルギーの需要と並んで環境への負荷が急激に増大すると予想されるため、これらの問題を長期的課題として取り上げ、適切に対処していく必要があると認識された。また、大阪行動指針には、APECメンバーが持続可能な開発に対する責任を共有していることを認識し、APECの全ての関連する活動に環境への配慮を盛り込むことが明記された。
 環境に配慮した活動の一つとして、1995年10月に名古屋で環境技術協力に関する国際シンポジウムが開催され、APEC域内における環境問題への取り組みの重要性について共通認識を深めるとともに、科学技術大臣会合で我が国より提案した「APEC環境技術交流バーチャルセンター構想」が域内の情報交流、人材育成の強化に資するものとして歓迎された。
カ 先進国首脳会議(サミット)における環境問題への取組
 1981年(昭和56年)のオタワ・サミット以来、経済宣言において環境問題が取り上げられてきているが、特に1989年(平成元年)のアルシュ・サミット以降地球環境問題が重要な課題として位置付けられていることが大きな特色である。
 1995年(平成7年)6月のハリファックス・サミットでは、持続可能な開発の推進のため、相当規模の資金を確保するとともに援助の質を改善する決意が示された。また、環境保護のための措置は最優先の課題であり、環境保護は、革新的な技術の開発・採用を通じ、経済効率と成長の向上、雇用の創出に資するものとの認識が示された。G7各国は、その政策、活動及び調達において環境改善におけるリーダーシップを示し、経済的措置、環境への影響の評価等を適切に組み合わせ、汚染の予防、汚染者負担原則、環境コストの内部化及び全ての意志決定分野において環境へ配慮することに努力すべきであるとされた。さらに地球サミット以降のコミットメントを果たすことの重要性、場合によってはそのコミットメントを見直し強化する必要性が強調された。また、気候変動枠組条約の義務の履行及びベルリンで開催された同条約第1回締約国会議のフォローアップ、生物多様性条約の中期的作業計画の実施、CSDの森林に関する政府間パネルの成功、次回CSDにおける海洋問題についての国際的合意を推進することとされた。
 なお、G7サミットに先立ち、カナダの提案によるG7環境大臣会合が1995年4月にハミルトン(カナダ)において開催され、国際機関の見直し、環境と経済の統合、気候変動、生物多様性、有害物質について意見交換が行われた。


(2) その他条約等に基づく国際協力
ア 条約に基づく取組
(ア) 南極条約
 南極の環境保全の推進を図るため、「環境保護に関する南極条約議定書」の締結のための準備作業を進めた。
(イ) 世界遺産条約
 世界遺産条約一覧表へ記載された屋久島及び白神山地の2自然遺産について管理計画の策定等、適切な保全に努めた。また、アジア地域の世界遺産記載地の保護対策のための管理計画支援のための調査等を実施した。
イ 環境保護協力協定に基づく取組
(ア) 米国
 1975年(昭和50年)8月に日米環境保護協力協定が締結されて以来、同協定に基づき広範な環境問題を討議するため、閣僚レベルによる合同企画調整委員会を過去10回開催している。第10回委員会は、1994年(平成6年)11月東京で開催され、両国にとって関心の深い地球環境問題等について意見交換が行われた。
 また、同協定に基づき、現在17のプロジェクトが設置されており、情報交換、会議の開催、専門家の交流が進められている。
(イ) ロシア
 1991年(平成3年)4月に、日ソ環境保護協力協定が締結された。1994年(平成6年)1月東京において、同協定に基づく合同委員会が開催され、両国の環境政策、地球環境問題等について活発な議論が行われた。
(ウ) 韓国
 1993年(平成5年)6月に締結された日韓環境保護協力協定に基づく第3回日韓環境保護協力合同委員会が、1996年(平成8年)3月に東京で開催され、「東アジアにおける大気中の酸性・酸化性物質の航空機・地上観測」等の既存案件の継続と「先端産業関連物質の環境影響に関する共同研究」等6件の新規案件の実施について合意された。
(エ) 中国
 1994年(平成6年)3月に締結された日中環境保護協力協定に基づく第2回日中環境保護合同委員会が、1995年(平成7年)12月に東京で開催され、両国間の協力が一層促進されるよう努力することにつき意見の一致が見られたほか、既存の9件のプロジェクトに加え、新たに10件のプロジェクトを実施することについて合意された。
ウ 科学技術協力協定に基づく取組
(ア) 米国
 1988年(昭和63年)6月に締結され、1993年(平成5年)6月に単純延長された日米科学技術協力協定の下、閣僚級の合同高級委員会がこれまで5回開催された。第5回委員会は、1995年(平成7年)1月東京にて開催された。
 同協定の附属書?においては、七つの主要協力分野が挙げられており、このうち「地球科学及び地球環境」分野においては現在45プロジェクトが合意され共同研究等を行っている。
(イ) カナダ
 1986年(昭和61年)に締結された日加科学技術協力協定に基づき、これまで合同委員会が5回開催され、環境分野における協力が進められている。同協定の下に「北太平洋における地球科学・環境パネル」が設置され、第1回会合が1996年(平成8年)2月に開催されるなど、協力が進められている。
(ウ) 英国
 1994年6月に締結された日英科学技術協力協定に基づき、第1回合同委員会が1995年(平成7年)12月に開催された。同協定の締結により、これまでの科学技術協力に基づく研究協力等がより一層推進されることとなった。
(エ) ドイツ
 1974年(昭和49年)に締結された日独科学技術協力協定に基づき、「環境保護技術パネル」が設置され、1976年(昭和51年)以来15回パネル会合が開催されるなど協力が行われている。1996年(平成8年)2月に第16回会合が東京で開催され、協力プロジェクトについて意見交換が行われた。
(オ) ロシア
 1973年(昭和48年)に締結された日ソ科学技術協力協定の下、同協定を継承しているロシアとの間で第3回委員会が1995年(平成7年)7月に開催された。同協定に基づき、「バイカル湖における地球環境変遷史の復元」等のテーマについて協力が進められている。
(カ) 中国
 1980年(昭和55年)に締結された日中科学技術協力協定に基づき、これまで合同委員会が7回開催され、環境分野における協力が進められている。
(キ) その他
 上記の他、フランス、イタリア、オーストラリア、インド、イスラエル等と、科学技術協力協定に基づく協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施している。
エ その他の活動
(ア) コモン・アジェンダ(地球的展望に立った協力のための共通課題)
 1993年(平成5年)7月に行われた日米首脳会議で、環境問題等の21世紀の課題に対処する方策を模索する場として「コモン・アジェンダ(地球的展望に立った協力のための共通課題)」を打ち出し、その枠組みの中で「環境」等5分野の協力を行うことが合意された。環境分野については、定期的協議のための「次官級フォーラム(環境政策対話)の創設」及び「保全」、「森林」等の7つの優先課題が合意された。
 1993年(平成5年)9月にワシントンにおいて第1回全体会合が開催されて以来、現在までに5回の全体会合が開催されており、環境をはじめとする協力分野について協議が行われた。また、環境政策対話は、これまでに4回開催され、地球環境問題を中心に協議が行われた。
 また、1994年(平成6年)5月に開催された第3回全体会合においては、新たな協力分野として「珊瑚礁」、「地球変動研究ネットワーク」等の4分野が合意された。
(イ) 天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)
 天然資源の開発利用に関する日米会議(UNJR)は1964年(昭和39年)に設置され、第14回全体会議が1993年(平成5年)7月に米国で開催された。UJNR傘下の保全・レクリエーション・公園専門部会においても、情報交換等を引き続き行った。
(ウ) 日・EU環境高級事務レベル会合
 1991年(平成3年)7月に出された日・EC共同宣言において、環境分野における日本とEC間の協力の必要性が強調された。これを受けて、1992年(平成4年)以降4回の会合が開催された。第4回会合は、1994年(平成6年)10月ブラッセルにて開催され、環境分野における日・EU間の協力が着実に進展している。
(エ) 日加環境政策協議
 1995年(平成7年)8月に来日した、コップス・カナダ副首相兼環境大臣から大島環境庁長官(当時)に両国間の環境政策対話の場の設置について提案があった。
 これを受けて、1996(平成8年)3月、第1回日加環境政策協議がバンクーバーで開催された。会合においては、UNCEDフォローアップ、APECにおける環境配慮等について意見交換等が行われた。
(オ) この他、スペイン、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー等との間で、協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施している。
(3) 海外広報等の推進
 我が国が、深刻な公害問題を克服する過程で得た豊富な経験、優れた技術力等環境分野の多くの知見を諸外国に適切に提供することは、我が国の環境政策に対する国際社会の理解を深めるとともに、我が国の国際的な貢献にも資するものといえる。また、顕在化する地球環境問題に対し、適切に対処するためには、諸外国との共通の理解を醸成し、政策決定に役立てることが重要であり、この観点からも諸外国との情報交換を行うことは非常に有意義である。
 このため、環境庁は、「環境白書」(Quality of the Environmentin Japan)、「環境保全研究成果集」(Environmental Research in Japan)、「地球環境研究総合推進費研究成果報告集」(GlobalEnvironment Research of Japan)、「Japan Environment Summary」等の英文定期刊行物を発行するとともに、目的に応じた海外広報用資料の作成及び各国政府、国際機関、有識者、報道関係者等への配布等、積極的な広報活動を行っている。

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