国務大臣 環境庁長官 地球環境問題担当
宮下 創平
平成7年版の環境白書をここに公表いたします。
環境白書は、主に前年度の環境に関する主要な出来事を報告していますが、平成6年度は、「環境基本法」に基づいて「環境基本計画」が閣議決定され、この環境基本計画に従って、あらゆる主体による環境保全のための取組に関する基本的な方向が示された画期的な年度といえます。
この環境基本計画は、地球環境時代にふさわしい我が国の環境政策についての長期的かつ包括的な指針であり、言うなれば、21世紀初頭までの環境対策全体の羅針盤の役割を担っています。計画では、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を目指し、「循環」、「共生」、「参加」、「国際的取組」を長期的な4つの目標として掲げています。この背景には、私たちの日常のライフスタイルと社会経済活動の在り方を文明論的な観点にまでさかのぼって根本から問い直し、これからの文明社会をいかに構築していくかという基本哲学がありました。
これを受けて、本年の環境白書では、環境と文明との関係を取り上げ、人類の進化や古代文明の盛衰などを環境の面から振り返りつつ、現代文明の持つ歴史的な意味合いや問題点を探り、併せて今後の社会の在り方について考察しています。数千年前の古代文明の跡が今なお砂漠化した状態で眼前に広がっているというような現状を考えると、我々21世紀に向かって生きている者も環境への配慮を欠けば、地球の至る所に我々の文明社会が崩壊した跡を残していくことになりかねないという深刻な危機感を持たざるを得ません。
現代の文明は、資源の面でも環境の面でも有史以来初めて地球的規模で限界が見えつつあるところに至っており、私たち人類が生存し続け、子孫にも生存の基盤たる地球環境を引き継いでいくためには、経済社会の仕組みを真に持続的発展が可能なものに転換していかねばなりません。また、このような認識の下、我が国は地球環境保全を進めるため、この分野での合意形成につとめ、国際的なイニシアティブを発揮していくことが大切でありましょう。そして、我が国と密接な関係にあり今後急速な経済発展の見込まれるアジア・太平洋地域を始めとして国際的な協力を更に深めることが必要であり、さらに、これからの環境対策をこれまで以上に効果の高いものにしていく努力も忘れてはなりません。
本白書が、健全で豊かな環境に恵まれた持続可能な経済社会の構築に向け、国民の皆様一人ひとりの関心をより一層高め、具体的な取組に際しての参考になれば、これに過ぎる喜びはありません。
平成7年6月