この環境白書(「総説」、「各論」)は、環境基本法第12条の規定に基づき政府が第132回国会に提出した「平成6年度環境の状況に関する年次報告」及び「平成7年度において講じようとする環境の保全に関する施策」である。
「各論」の執筆に当たった省庁は、総理府、公害等調整委員会、警察庁、環境庁、国土庁、法務省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省及び自治省であり、環境庁がその取りまとめに当たった。
はじめに
今回の環境行政に関する政府の年次報告は、平成6年12月の環境基本計画策定後初めての報告となる。
そのため、今回の報告では、各論のうち、平成7年度において政府が講じようとする施策については、従来の構成を変更し、環境基本計画の構成に沿って記述した。ただし、平成6年度において政府が講じた施策については、同計画が年度後半の策定ということもあり、昨年の報告に沿った構成のままとした。次回の報告においては、政府が講じた施策についても環境基本計画の構成に沿ったものとする予定である。
総説については、平成7年1月に内閣総理大臣に対し報告された21世紀地球環境懇話会(近藤次郎座長)の提言「新しい文明の創造に向けて」も踏まえつつ、第1章において、人類の文明と地球環境について、古代文明と環境との関わりを含め幅広い考察を行い、現代文明の問題点と今後の目指すべき方向について記述した。
第2章においては、アジア・太平洋地域の環境問題を取り上げ、日本と関わりの深いこの地域の環境を概観するとともに現状と将来の展望を試み、我が国がこの地域の諸国と共に持続的発展が可能な社会を築きあげていくための方途について考えてみた。第3章では、我が国の環境について、これを未来から見たストックとして位置付け、土や平地・里地の自然等いくつかのトピックについてその現状等について概観した。
さらに、第4章において、国・地方公共団体や民間を問わず、環境対策を今後より効果の高いものとしていくことの重要性を訴え、そのための視点の整理を試みると共に、その具体的な対策の進展状況をいくつかの例を取り上げ考察した。また、そのような視点を踏まえ、環境基本計画の全体をやや詳しく紹介した。最後の第5章では、昨年と同様、第1章から4章までの背景をなす基礎的、基本的な最新の環境データを記述した。なお、今回の報告では、特に同章の10節として、「阪神・淡路大震災による環境の影響」を追加して記述した。
環境問題には、今日高い関心が寄せられ、また、多くの人々がそれぞれの立場から取り組みを進めているが、残念ながら都市・生活型公害や地球環境問題などの改善状況は目に見えるものとなっているとは言いがたい。また、自然とのふれあいをはじめ、自然と共生したより質の高い生活への要求も高まってきている。
私たち一人ひとりが、現在置かれている環境の状況とそれらを形作ってきた現代文明の歴史的状況や経済社会システムの問題点などを直視し、自らの意思と行動によって、持続可能な新しい地球文明を形作っていくことが求められている。