3 運輸・交通
交通に係る環境への負荷を低減するためには、自動車構造の改善、道路交通管理、道路構造、物流の効率化等の面から交通環境の保全を総合的に推進する必要がある。そのため、以下の対策を実施している。
環境保全の観点から望ましい交通体系のあり方について、総合的な検討を実施する。
平成元年の中央公害対策審議会答申にそった自動車排出ガス規制の強化を引き続き図るほか、車種規制の着実な実施を始めとする「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」に基づく施策を関係省庁、地方公共団体との連携の下に総合的に推進する。
また、地球温暖化防止行動計画に基づき、二酸化炭素排出の少ない交通体系の形成を進める。
低公害車の普及については、国や地方公共団体において、庁用車として積極的に低公害車の導入を図るとともに、その開発・利用等を支援していく。具体的には、公営及び民営のバス事業者に対して、低公害バスを導入する事業等を対象にした補助を引き続き行うほか、民間事業者等に対する公健法の基金による助成等を行う。
道路交通管理については、交通の分散・円滑化のための交通管制システムの整備及び信号機の高度化等を図り、あわせて光学式車両感知器の整備を推進するなど道路交通情報収集・提供機能の拡充等に努めるとともに、違法駐車の排除を中心とした駐車対策、整備不良及び過積載車両の違反の指導取締等を推進する。また、居住環境の保全の観点から、大型車を中央寄りに走行させるための通行区分の指定等の交通規制及び各種生活ゾーン規制を推進していく。さらに、新しい通信・放送メディアを利用した道路交通情報提供システムの高度化を推進するため、「道路交通情報通信システム(VICS)という総合的な概念で具体化を図る。
道路整備の面からの対応としては、バイパス、環状道路をはじめとする道路網を沿道環境保全に配慮しつつ体系的に整備し、道路交通を分散・円滑化するとともに、交差点改良や新交通システム、駐車場・駐車場案内システムの整備等により交通混雑を緩和し、環境負荷の軽減を図る。なお、道路交通情報システムについては、情報収集・提供のための機器を整備拡充する。
道路構造面からの対策としては、環境施設帯や遮音壁等の整備、質の高い道路緑化等を推進するほか、高架裏面吸音板、低騒音舗装等に関する試験施行の拡大や、道路地下空間等を利用した新たな物流システムの研究・開発を行う。
沿道環境対策としては「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づく沿道整備道路の指定、沿道整備計画の策定、沿道整備を推進するための施策の拡充を行うとともに、高速自動車国道等の周辺における住宅の防音工事助成等を実施する。さらに、道路開発資金制度により沿道環境の向上に資する建築物の建築等に対する長期の低利融資を行う。このほか、各道路管理者においては、道路交通情報の収集・提供、車輌制限令違反車両等の指導取締り等により沿道環境の保全に努める。
物流の効率化については、中長距離の物流拠点間の輸送において、鉄道・海運の積極的活用を通じた適切な輸送機関の選択を促進するため、税制上の優遇措置や日本開発銀行等の融資により複合一貫輸送用機器等の整備を促進するとともに、鉄道貨物輸送力増強に必要な基盤整備に対する財政上の支援措置、船腹調整制度の弾力的運用等による内航コンテナ船、RORO船等の整備、内貿ユニットロードターミナルの整備等の施策についてもあわせて講じていくこととしている。また、空港・港湾といった主要な物流拠点とのアクセスを強化する道路整備と広域物流拠点との一体的整備、営業用トラックの利用促進、地域内共同集配システムの整備を推進するほか、物流拠点の集約化・適正配置等により交錯輸送の縮減を測っていくこととしている。
一方、現在の大気保全は、石油製品の一定の品質を前提として成り立っているが、特定石油製品輸入暫定措置法が平成8年3月の期限をもって廃止され、石油製品(ガソリン、軽油及び灯油)の輸入主体が拡大される見通しであり、これにより品質の劣る石油製品が流通した場合、大気環境に悪い影響が生じるおそれがある。このため、自動車燃料について大気保全上必要な品質の確保等を図り、あわせて、広く国民に対しても自動車排出ガスの抑制のため自動車の適正な使用等を求めるための規定を設ける等を内容とする大気汚染防止法の一部を改正する法律案を第132回国会に提出したところであり、本法案の成立を受けて、自動車燃料の許容限度の設定等必要な措置を講じていくこととしている。