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第1節 

5 野生生物の保護

(1) 問題の概要
 現在、人間活動による生息・生育地の破壊や乱獲のため、地球の歴史が始まって以来のスピードで、野生生物の種の減少が進んでおり、1990年(平成2年)以降30年間に全世界の5〜15%の種が絶滅するとの予測がなされている。
 野生生物は、地球の生態系を形づくる基本的な構成要素であり、人類にとって有用な資源として、また、生活に潤いや安らぎをもたらす存在として、不可欠なものである。種の絶滅の防止は世界的にも緊急の課題となっている。
(2) 対策
 現在、我が国の国際的な野生生物保護への取組としては、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約。1973年(昭和48年)3月採択、1975年(昭和50年)7月発効、1980年(昭和55年)11月我が国について発効)、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約。1971年(昭和46年)2月採択、1975年(昭和50年)12月発効、1980年(昭和55年)10月我が国について発効)等の多国間条約及び米国、オーストラリア、中国、ロシアとの間での渡り鳥の保護等を目的とした二国間条約を通じた保護への取組、生物の多様性に関する条約の締結等が挙げられる。
 これらのうちラムサール条約について、1993年(平成5年)6月北海道釧路市で開催された第5回締約国会議の決議、勧告に基づき東アジアにおける湿地保全及び水鳥の保護等を一層推進するため、1994年9月〜10月に湿地及び渡り鳥保全研修、11月下旬〜12月初旬に東アジア〜オーストラリア地域湿地・水鳥ワークショップを開催した。
 ワシントン条約については、1994年(平成6年)11月、米国において第9回締約国会議が開催され、規制対象種を定める付属書への動植物種の掲載に係る新基準が採択されたほか、我が国は常設委員会の議長国に選出され、我が国の役割は一層重要なものとなった。
 渡り鳥等保護条約については、日ソ渡り鳥等保護条約に基づくプロジェクトとして、昨年に引き続き7年2〜3月にロシアの研究者を招待し、北海道において衛星発信機を利用したオオワシの渡りルート解明等に関する共同調査を行った。
 生物の多様性に関する条約は、地球上の多様な生物をその生息・生育環境とともに保全し、生物資源の持続可能な利用を確保するとともに、遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分することを目的とする国際的な枠組みを定めたものである。同条約は1993年(平成5)年12月に発効し、平成6年11月には第1回締約国会議が開催された。同会議では条約の実施体制が概ね整備され、条約の実施が今後、本格化することとなった。我が国は、関係省庁連絡会議において、条約に基づく国家戦略の策定に着手した。
 このほかの国際的な取組としては、開発途上国における野生生物保護を支援するための協力事業等があり、また、JICAによる野生生物保護プロジェクト等が実施されている。

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