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第4節 

1 絶滅のおそれのある野生生物の保護の推進

(1) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の施行
 国内外の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を体系的に図るため、平成5年に施行された「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(以下「種の保存法」という。)に基づき、各種施策を推進した。
 さらに、ワシントン条約の趣旨に沿い、その徹底を図るため、希少野生動植物種の「器官及び加工品」についても譲渡し等の規制の対象とするべく、平成6年6月に同法の一部を改正した。
 種の保存法では、本邦において絶滅のおそれのある種を国内希少野生動植物種に指定し、捕獲、譲渡し、輸出入等の規制を行うとともに、必要に応じ、その生息・生育地を生息地等保護区として指定し、各種の行為を規制している。また、個体の繁殖の促進や生息・生育環境の整備等を内容とする保護増殖事業を積極的に推進することとしており、その適正かつ効果的な実施のために保護増殖事業計画を策定することとしている。
 国内希少野生動植物種として、すでに指定されている44種に加え、平成7年2月にはキクザトサワヘビ、アベサンショウウオ、イタセンパラ、ハナシノブの4種を追加指定した。また、6年12月には、新たに我が国での繁殖や生息が確認されたワシミミズク、イリオモテボタル及びクメジマボタルの3種を初の緊急指定種に指定し、3年以内の期間について捕獲、譲渡し等を規制するとともに、分布、生息状況等の調査を開始した。
 また、平成6月11月に開催されたワシントン条約締約国会議における付属書改正審議の結果を受けて、国際希少野生動植物種についても7年2月に追加・削除を行った。
 生息地等保護区については、平成6年12月に羽田(ハンダ)ミヤコタナゴ生息地保護区(栃木県大田原市)と北岳キタダケソウ生育地保護区(山梨県芦安村)を、初の生息地等保護区として指定した。
 さらに、種の保存法の適正な施行のため、平成6年7月には、国立公園管理事務所を廃止し国立公園・野生生物事務所を新たに設けて、現地管理体制の充実を図るとともに、希少野生動植物種保存推進員を委嘱し、種の保存に係る普及啓発等を進めた。
(2) 絶滅のおそれのある野生生物の保護対策の推進
 絶滅のおそれのある野生動植物の保護対策として、引き続き以下のような調査や事業を実施した。
ア 絶滅のおそれのある野生動植物種のうち約110種を対象に地域の専門家や学会の協力を得て、生息・生育状況のモニタリングを実施した。
イ 国内希少野生動植物種であるオオトラツグミ、オーストンオオアカゲラ、ルリカケス及びアマミヤマシギについて、生息状況の変化を把握するための調査を実施した。
ウ トキの保護事業や普及啓発の拠点施設である佐渡トキ保護センターにおいて、引き続き個体を飼育するとともに、細胞等の保存のための体制の整備を進めた。また、日本と中国との間の協議に基づき、トキ保護のための繁殖研究等に着手した。
エ イリオモテヤマネコを中心とした西表島に生息する希少野生生物の調査・研究、保護増殖事業及び普及啓発の拠点となる西表野生生物保護センターを整備するとともに、イリオモテヤマネコの生息状況のモニタリングを実施した。
オ ツシマヤマネコの生息地への再導入を目的とした飼育下における繁殖を行うための調査、捕獲に着手するとともに、生息状況のモニタリングを実施した。
カ アホウドリの既存の繁殖地の環境を維持・改善する工事を実施するとともに、新たな繁殖適地に個体群を誘致するための事業を実施した。
キ タンチョウについて、冬期の給餌及び生息状況のモニタリングを実施した。生息数については、平成7年1月の一斉調査により607羽が確認された。
ク シマフクロウについて、巣箱の設置及び給餌事業を実施した。また、平成5年度に整備した釧路湿原野生生物保護センターの飼育ケージを活用しつつ、若鳥等の新生息地への導入のための事業を進めた。
ケ ミヤコタナゴの生息地において、本種の生息に影響を与える外来種を除去するとともに、生息環境の改善、安定化のための方策についての検討を行った。
コ 小笠原の希少植物について、人工増殖及び自生地への再導入を実施した。

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