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第4節 

1 総合的推進

(1) 我が国の交通機関は、戦後の経済復興とそれに続く高度経済成長の時期を通じて、極めて急速な進展を遂げた。この間における交通機関の高度かつ多様な発展は、多くの社会的効用をもたらした反面、大規模な交通施設の周辺地域等で交通公害問題を惹起するに至っている。また、大都市部においては、人口や産業の集中に加えてサービス経済化、業務ビル等の整備等に伴って交通量が増大する一方、交通施設と周辺土地利用の整合や交通量の抑制といった交通環境の保全の観点からの配慮が必ずしも十分でないまま各種の都市施設が錯そうするといった都市の構造に関わる問題もあり、交通公害問題の解決は一層困難となっている。
(2) 道路交通公害としては、自動車の走行に伴い発生する排出ガス、騒音、振動が問題となっており、今後とも、窒素酸化物等の排出ガス対策、騒音対策、振動対策、それぞれについて一層の取組が必要であり、後述する各種の対策を総合的かつ強力に推進していく必要がある。
(3) 航空機騒音対策については、航空輸送の拡大が予想されるなかで、環境基準の達成に向けて従来よりの発生源対策、飛行場構造対策を今後とも強力に推進していく必要がある。特にこれらの対策だけでは環境基準の達成が見込まれない地域については、当面住宅防音工事等の障害防止対策を実施するとともに、著しい騒音が及ぶ地域については住居系の土地利用から騒音による障害の少ない土地利用への転換や新たな住居系の土地利用の抑制を図るなど計画的な周辺土地利用対策を推進していく必要がある。
(4) 新幹線騒音・振動対策については、環境基準等の達成に向けて、発生源対策を基本的施策としつつ、障害防止対策、周辺土地利用対策を総合的に推進していく必要がある。
 特に、騒音については東海道、山陽新幹線及び東北、上越新幹線について環境基準の達成状況がはかばかしくなく、環境基準の早期達成に向けて下記の施策の着実な推進を図っていくこととしている。
? 基本的施策である音源対策の推進
? 環境基準を超える区域の住宅防音工事の推進
? 騒音低減技術開発とその活用
? 沿線地域の土地利用の適正化(新たな住居系の土地利用の抑制、騒音により機能を害されるおそれの少ない公共施設等の配置等)
(5) 船舶から排出される窒素酸化物、硫黄酸化物等については、現在は規制が行われていないが、国際海事機関(IMO)において、1995年(平成7年)以降可能な限り速やかに採択することを目指して現在具体的な検討がなされている。また、我が国においても、大港湾を抱える都市において、今後船舶による大気汚染寄与が無視できないものとなる可能性もあることから、船舶からの排出実態、排出削減技術の動向等を把握して、国際的動向に対応した排出削減手法を検討しているところである。

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