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第4節 

1 地域における環境保全施策の計画的、総合的推進

 持続可能な社会づくりの基礎は地域の環境の保全であり、地方公共団体の役割は大きい。このため、地方公共団体は、地域の自然的社会的条件に応じて、取組の目標・方向等の設定・提示、各種制度の設定や社会資本整備等の基盤づくり、各主体の行動の促進など、国に準じた施策やその他の独自の施策を自主的積極的に策定し、国、事業者、住民等と協力・連携しつつ、多様な施策を地域において総合的に展開することが期待されている。平成6年12月に閣議決定された環境基本計画においては、こうした認識に立って、地方公共団体に期待される役割を次のように定めている。
? 地域づくりにおいて、地域の自然的社会的条件に応じて、汚染の防止はもとより、リサイクルの促進等により環境への負荷を低減していく。
 また、地域の自然とのふれあいの確保、快適な環境(アメニティ)の確保の一環としての自然環境の保全等により、恵み豊かな環境を保全する。
? 事業者、住民等との緊密な連携を図りつつ環境保全を進める。このため、学習拠点の整備、人材の育成・確保、学校教育等により環境教育・環境学習や環境保全活動を推進するとともに、情報の提供を進める。また、事業者の環境保全対策を指導し、促進する。
? 周辺地方公共団体や国とも連携、協力しつつ、流域を考慮した水環境の保全など広域的な視点からの取組を進める。
? これまで培ってきた環境の保全に関する知見を活かした国際協力等の取組を進める。
? 地域の環境保全に関する基本的な計画の策定等により施策を総合的かつ計画的に進める。
? 事業者・消費者としての環境保全に関する行動を率先して実行する。
? なお、市町村は基礎的な地方公共団体として、地域づくりにおける取組をはじめ多様な施策を実施する。都道府県は主として広域にわたる施策の実行や市町村が行う施策の総合調整を行う。
 地方公共団体に期待される以上のような役割が円滑、確実に発揮されるよう、平成6年度にも、国において、地方公共団体に対する必要な協力、連携が図られた。各個別の項目についての協力等に係る国の施策については、本年次報告のそれぞれ該当の箇所に掲げるとおりであるが、地域における環境保全施策を総合的に推進することに向けては、次のような各種の施策を講じたところである。
(1) 地方公共団体においては、かねてより、公害の防止と自然環境の保全等を一体的に進めるべく、多くの場合、環境管理計画といった名称で計画の策定が図られてきており、環境庁においては、その策定への技術的支援などを行ってきた。こうした中、国においては、環境問題が将来世代にもわたる時間的広がりや地球規模にも及ぶ地理的広がりを持つに至ったことなどを踏まえ、環境基本法を制定し、これに基づき環境基本計画を6年12月に閣議決定した。このような国の動きを受け、地方公共団体においても、より総合的な立場から、環境基本条例を制定する動きが広がっており、多くの場合、こうした条例に基礎を置いて、総合的な環境計画づくりが進んでいる。
 環境庁においては、6年度において、環境計画担当者間の意見や情報交換の場の設定を行ったほか、地方の担当者の参加も得て、地方の環境計画づくりのためのマニュアルの策定に向けた検討作業を行うことなどにより、地方における計画的、総合的な施策の展開を支援した。また、計画的、総合的な取組の基盤となるよう、市町村における環境資源情報の整備、地域開発環境配慮指針の策定等に対し助成を行った。
(2) 日常生活等の中で環境保全活動を行っていくことに資するよう、環境保全に関する知識の普及・啓発事業を地域において継続的かつ着実に実施するため、元年度に各都道府県・政令指定都市に対し地域環境全基金の設置に係る助成が行われ、各地で基金が設けられたが、その後、各地方公共団体においてそれぞれの基金拡充が図られている。この基金により、ビデオ、学校教育用副読本等の啓発資料の作成、地域の環境保全活動に対する相談窓口の設置、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援等が行われている。
(3) 単一の都道府県を越える広域的な環境保全に係る地方公共団体の取組に関しては、環境庁において、2年度から4年度にかけて、三大都市圏のそれぞれにおける広域的な環境管理の基本的な方策について検討を行い、その結果を関係都府県に周知し、活用を促している。このほか、大阪湾臨海地域については、4年に制定された「大阪湾臨海地域開発整備法」において、環境庁長官も主務大臣として、環境保全の観点から、地域の指定や基本方針の決定に関与することとなり、5年度において、これらの指定等を行った。
(4) 地方公共団体が海外における環境対策に協力することに関しては、国としてもこれを支援すべく、環境庁において、「地方自治体による開発途上国への環境協力のあり方」に関する検討を行い、6年度においては、その結果を周知したほか、我が国の地方公共団体と他のアジア地域の地方公共団体との間での環境協力の可能性を探り、それを拡大していくため、内外の54地方公共団体の参加を得て、「アジア地域地方公共団体環境イニシアティブ推進事業」を、国際環境自治体協議会(ICLEI)等の協力を得て開始した。
(5) 事業者、消費者としての地方公共団体が環境保全に関する行動を率先して実行することに関しては、国としての今後の対応の基礎資料として、地方における取組の現状等についての調査を行った。
(6) 近年、特に都市部等においては、土地の高度利用の観点から地下空間の開発の要請が高まり、とりわけ通常土地所有者の利用が及ばない地下空間を鉄道、道路、水路等の公共的目的に利用するため、関係省庁において制度化の検討が進められている。地下空間の利用に伴っては、地盤沈下、温泉源への影響等環境への影響が発生することが懸念される。
 このため環境庁では、予め地域ごとの潜在的な地盤沈下の危険性を示し、地下空間利用事業の計画段階での環境影響の検討に活用できる情報を整備するための調査を行った。

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