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第5章 環境の現状

 前章までにも述べたように、今日の環境問題は、特定小数に起因する激甚な公害や自然破壊が中心であったかつての状況から、大量生産、大量消費、大量廃棄型社会において、大規模になった通常の経済社会活動による地球規模にまで及ぶ環境問題が重要性を増している状況に移りつつあるといえる。二酸化硫黄の排出量及び大気中濃度は昭和40年代前半をピークにその後著しく低下したが、他方、自動車交通等に起因する二酸化窒素や浮遊粒子状物質等による大気汚染、化石燃料の消費増大に伴う地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の増大、生活排水等に起因する閉鎖性水域等の水質汚濁、廃棄物の増大などにそのような状況が現れている。
 昨年12月に閣議決定された環境基本計画では、「循環」と「共生」を長期的目標に掲げた。「循環」は、自然の物質循環を損なうことによる環境の悪化を防止するため、環境への負荷をできる限り少なくし、循環を基調とする経済社会システムを実現する、という目標である。「共生」は、環境に適切に働きかけ、賢明な利用を行うとともに自然と人との間に豊かな交流を保つことによって健全な生態系を維持、回復し、自然と人間との共生を確保する、という目標である。
 本章では、環境基本計画のこのような観点を踏まえつつ、第1節から第4節では主として「循環」に関わる問題を、第5節及び第6節では主として「共生」に関わる問題について具体的に見ていくことにする。
 また、環境基本計画は、「循環」と「共生」を実現するための「参加」も長期的目標に掲げており、これについて第9節で述べる。
 さらに、阪神・淡路大震災と環境の関わりについて第10節で見ることにする。

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