これまで見てきたように、新たなフロンティアを求めてその活動範囲を拡大しつつ発展してきた現代の文明は、人類がかつて経験したことのない地球的規模での環境の限界に達しつつあり、その根源的な見直しを迫られている。特に、貿易等を通じ広く世界の国々との関係を深めつつ急速な経済成長を遂げ、先進工業諸国の一員として、国際社会において経済的にも、また環境への負荷という面から見ても大きな影響を有するようになった我が国が、環境問題の解決に向け国際社会で果たすべき役割は大きい。
このような状況の中で、我が国は平成5年に環境基本法を、また、平成6年に環境基本計画を策定し率先して持続可能な社会を構築していくことを世界に示したところである。しかし、環境政策の基本的な方向は定まったものの、具体的に現在の経済社会のシステムを変えていく環境対策の展開はこれからがまさに本番である。この環境対策は、国や地方公共団体のみならず事業者、国民、民間団体などあらゆる主体によりそれぞれの立場に応じた公平な役割分担の下で自主的積極的に行われるものであるが、そのための資金や労力は決して無尽蔵ではない。また、このままの傾向が推移すれば近い将来である21世紀中にも地球温暖化を始めとする深刻な環境問題が顕在化するおそれもあり、実効性のある環境対策をそれぞれの主体が進めていく時間的余裕も限られてきている。
そのため、これからの環境対策については、国、地方公共団体や民間を問わず、資金や労力あるいは時間といった環境対策のために投入するコストに対し、できるだけ高い効果を得ることが極めて重要である。このような観点から、本章では、今後の環境対策の効果の高さを確保するための視点について整理を試み、併せてその中のいくつかの環境対策事例について最近の動きを見ていくことにしたい。