人類の存続の基盤である健全で恵み豊かな環境を将来の世代に継承していくことは現代に生きる我々の大きな責務である。我々は現在の我が国の環境をストックとしてとらえ、その状況と変化の方向を正しく認識し、将来の世代にどのような環境ストックを引き継いでいけるかということを考える必要がある。我が国の環境の状況については第5章207/sb1.5>において全般にわたって記述するところであるが、本章では、これらの環境ストックのうち重要で注目すべき動きのある3つの視点に特に着目して現状を概観するとともに、将来世代は、我々からどのような形でそれらの環境ストックを受け継いでいくことになるのか見ていくこととしたい。
その第1点は、「土」である。土は、大気、水と並ぶ主要な環境構成要素であり、自然の物質循環を支える重要な要素でもある。ここでは、土の持つ環境保全機能を適切に評価しつつ環境への負荷の状況、物質の循環の状況、人と土の多面的な関わりなどを含めた土に係る環境の現状を見るとともに、次世代に伝えるべき土の重要性について見ることとする。
第2点は、平地自然地域、里地自然地域における自然環境の状況である。これらの地域には、多くの人々が住み、農林業等の産業を通じた関わり、市街化による自然の減少といった点を含めて人々と自然との深い関係がある。また、同地域の自然環境は将来的にも人々が自然と接する身近な場としてますますその重要性が高まってくると考えられる。ここでは、これらの地域に着目して、我が国の自然環境の現状及び次世代に伝えるべき自然環境並びにこれとの共生のあり方について見ることにする。
第3点は、地球温暖化が我が国の環境にもたらす影響についてである。地球温暖化は最も懸念される地球環境問題の一つであり、地球温暖化がこのまま進行すれば我が国を含む地球の将来の環境に大きな変化が生ずることが考えられる。ここでは大気中における温室効果ガスの増加による地球温暖化が、ストックとしての水環境や自然環境など我が国の環境にどのような影響をもたらすおそれがあるのかを概観することにより、地球温暖化にどのように対処し将来世代にどのような環境を残していくべきかを考えたい。