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第2節 

4 公害防止のための融資助成税制措置等

(1) 環境事業団による助成
ア 事業団の事業
 環境事業団は、昭和30年代における我が国経済の高度成長の過程で深刻化した大気汚染、水質汚濁等の産業公害問題を解決するため、昭和40年10月公害防止事業団として、公害防止事業団法に基づき設立された。以来、公害防止の専門助成機関として、事業者等が講ずる公害防止対策に対する助成を積極的に推進してきた。
 その後、環境行政の主要課題の変化に対応するため、平成4年10月の法改正により、事業の見直しが行われ、国立・国定公園集団施設地区の整備等の公害防止にとどまらない環境保全のための事業を開始するとともに、名称が「環境事業団」に改められた。
 また、平成5年5月の法改正により、民間団体が行う地球環境保全のための活動を支援するため、環境事業団は「地球環境基金」を開設した。
(ア) 建設譲渡事業
 建設譲渡事業は、?集団設置建物、?共同福利施設(緩衝緑地、公園施設)、?大気汚染対策緑地、?産業廃棄物処理施設・一体緑地、?国立・国定公園複合施設に大別される。事業団は、これらの施設を設置しようとする事業者等からその事業を受託し、工事施行に伴う事業全般を行い、完成施設は建設原価をもって長期かつ低利の返済条件で譲渡するものである。
(イ) 融資事業
 融資事業は、?産業公害防止施設、?産業廃棄物処理施設、?市街地土壤汚染・地下水汚染防止等事業、?合併処理浄化槽の設置のための費用の融資事業を対象として、これらの施設を設置する者又は事業を実施する者に対して融資を行うものである。
(ウ) 地球環境保全事業
 地球環境問題への対応として、?事業団に蓄積している情報・技術的知識で、開発途上地域の環境保全に資するものを内外の関係機関に提供する海外環境情報提供事業を実施するとともに、?地球環境基金により、民間団体が行う地球環境の保全のための活動に対し、助成その他の支援事業を実施している。
イ 平成5年度の事業
 平成5年度の事業計画(新規契約額)は1,000億円(建設譲渡事業630億円、融資事業370億円)であった。また、地球環境基金事業を実施するため、環境事業団出資金として10億円、環境事業団補助金として5億円を確保した。
(2) その他の政府関係機関による融資
ア 中小企業設備近代化資金制度による融資
 設備近代化資金貸付制度は、「中小企業近代化資金等助成法」に基づき中小企業の設備近代化の促進を目的として都道府県が窓口となって個別中小企業に対して貸付けを行うものである。この一環として公害防止施設に対しても融資(通達で定める施設のみ)が行われており、平成5年度貸付けは総資金枠471億円のうちで行った。また、小規模企業者等に対しては、各都道府県に設立されている貸与機関から設備を貸与する設備貸与制度が設けられており、平成5年度貸与は総貸与枠594億円のうちで行った。
イ 中小企業金融公庫、国民金融公庫及び沖繩振興開発金融公庫による融資
 平成5年度は、中小企業金融公庫、国民金融公庫及び沖繩振興開発金融公庫による産業公害防止施設等に対する特別貸付け、過密解消及び公害防止のための中小企業の工場移転等に対する特別貸付けを行った。
ウ 中小企業事業団による融資
 中小企業事業団の高度化融資制度では、中小企業構造の高度化に寄与する事業を行う中小企業者に対し、長期・低利の融資を行っている。この一環として住工混在の解消等を目的として工場適地に移転する工場の集団化事業や、中小企業の組合の行う共同公害防止処理施設設置事業等に対して、融資を行った。
エ 日本開発銀行による融資
 既存融資制度を活用することにより、公害防止施設整備のための融資を行った。
オ 北海道東北開発公庫による融資
 北海道及び東北における望ましい環境水準の維持達成に資するため、公害防止施設整備のための融資を行った。
カ 農林漁業金融公庫による融資
 畜産経営に起因する環境汚染の防止を図り、併せて生産性の高い畜産経営の育成に資するため、農林漁業金融公庫から畜産経営環境保全に係る資金として、地域及び経営の実情、環境汚染の実態等に応じた環境保全対策に必要な家畜排せつ物処理施設の設置等に要する資金を融通した(平成5年度融資枠14億円)。
キ 金属鉱業事業団による融資
 「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」に基づく使用済特定施設に係る鉱害防止事業に必要な資金(休廃止鉱山に係る坑廃水処理に必要な資金を含む。)及び「公害防止事業費事業者負担法」による事業者負担金に対して融資を行った(平成5年度融資枠41億円)。
(3) 税制上の措置
ア 国税関係
(ア) 環境事業団に地球環境基金を設置したことに伴い、環境事業団を特定公益増進法人に追加した。
(イ) 特定フロン等排出抑制・回収設備に係る特別償却措置の適用期限を延長した。
(ウ) 個人又は法人が「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく生息地等保護区のうち管理地区内の土地を国等に譲渡した場合について、譲渡所得等の特別控除(1,500万円)を認めることとした。
(エ) 「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」の制定に伴い、中小企業者等が同法における特定地域内に使用の本拠を有する特定自動車排出基準に適合しない自動車を廃車して、基準適合車に買い換えた場合をエネルギー需給構造改革推進投資促進税制の適用対象に追加し、税額控除又は特別償却措置を講じた。
(オ) 廃棄物再生処理用設備(空罐選別圧縮装置及びガラスくず処理用異物除去装置)に係る特別償却措置の適用期限を延長するとともに、古紙脱墨処理装置についてはエネルギー需給構造改革推進投資促進税制の対象に移行し、軽減措置を拡充した。
(カ) 公害防止用設備(汚水処理用設備、ばい煙処理用設備、窒素酸化物抑制設備及び産業廃棄物処理用設備)に係る特別償却措置の適用期限を延長した。
(キ) 「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」の承認事業計画に基づく環境技術開発等に係る試験研究費について税額控除制度(特別試験研究促進税制)を創設した。
(ク) 「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」に基づく事業計画について承認を受けた製造事業者が行う再生資源の分別回収又は当該再生資源を利用して製造した製品の市場の開拓に要する費用の支出に備えるための再生資源利用促進準備金制度を創設した。
イ 地方税関係
(ア) 特定フロン等排出抑制・回収設備に係る固定資産税の軽減措置を延長するとともに、トリクロロエタン排出抑制・回収設備を同措置の対象に追加した。
(イ) 「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」を制定したことに伴い、同法における特定地域内に使用の本拠を有する特定自動車排出基準に適合しない自動車を廃車して、基準適合車に買い換えた場合の自動車取得税の軽減措置を創設した。
(ウ) 平成6年窒素酸化物排出ガス規制適合車に係る自動車取得税の軽減措置を創設した。
(エ) 天然ガス自動車に係る自動車税及び自動車取得税の軽減措置を創設した。
(オ) 電気自動車に係る自動車税、軽自動車税及び自動車取得税の軽減措置を延長した。
(カ) 登録廃棄物再生事業者の事業の用に供する施設に係る事業所税の軽減措置を延長した。
(キ) 工業用水道等への転換設備に係る事業所税の非課税措置を延長した。

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