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第3節 

3 地域における環境国際協力の進展

 地方公共団体や産業界など地域がこれまで培ってきた環境保全に関する知見を活かして国際環境協力を進める特色ある取組が全国各地域で進められつつある。
(1) 国際協力のための団体の設立
 環境国際協力を進めるための団体の設立が進めれらている。
 このような団体の最初のものが滋賀県が中心となって昭和61年に設立した(財)国際湖沼環境委員会である。同委員会の目的は途上国をはじめとする世界の湖沼及びその集水域における適正な環境管理を促進することである。世界各国からの19名の委員からなる科学委員会のネットワークを活用して、UNEP等の国際機関との協力によって、世界の湖沼に関するデータブックの出版や「世界湖沼会議」の開催などを行なってきた。また、UNEP国際環境技術センターの設置に伴い、同センターの支援団体として経済界や地元自治体の支援をつなぐ役割も果たすようになっている。同委員会が中心となって開催している「世界湖沼会議」は、最近では1993年5月にイタリアで第5回目の会議が世界44カ国の出席者を集めて開催され、次回は1995年に我が国の茨城県で開催される予定となっている。
 また、UNEP国際環境技術センターに関連して、大阪府及び大阪市が中心となって(財)地球環境センターが平成2年に設立されている。その目的は、先進諸国における大都市環境の総合管理に関する情報、環境技術等を集積し、UNEP国際環境技術センターに対して提供することにより、同センターが実施する開発途上国等に対する環境にやさしい技術の移転を支援するほか、環境に関する国際会議・シンポジウムなどの企画・運営により環境問題に対する意識の啓発を図るとともに、開発途上国の機関、研修者との交流を通じ、国際環境協力技術協力に貢献する事業を行うことである。
 閉鎖性海域の環境の保全と適正な利用をテーマとした世界閉鎖性海域環境保全会議(EMECS)が、兵庫県、神戸市、瀬戸内海環境保全知事・市長会等を中心にして1990年に神戸市で開催された。さらに、第2回が、1993年47ケ国からの参加者を集めてアメリカのメリーランド州で開催され、第3回は、1996年スウェーデンのスットクホルムで開催される予定である。さらに兵庫県では神戸市に国際EMECSセンターの設立を構想しており、第2回会議で採択された宣言でも同構想が支持された。
 また、産業公害防止を中心とした分野では、(財)国際環境技術移転研究センターと(財)北九州国際技術協力協会のKITA環境協力センターが設立されている。(財)国際環境技術移転研究センターは、三重県、四日市市、地元産業界等が中心となって、平成2年(1990年)に設立されたもので、我が国が蓄積した環境保全に資する産業技術と行政施策を活用して、諸外国の地域環境破壊の防止と改善更には地球環境の保全を目指しており、産業公害防止に関する研修・技術指導、研究開発、調査・情報提供等を行っている。(財)北九州国際技術協力協会(KITA)の内部組織としてKITA環境協力センターは、福岡県、北九州市、地元産業界が中心となってが平成4年に設立されている。同センターは、かつての厳しい環境汚染を克服した過程で蓄積した公害防止、環境整備等の技術、経験や人材を活かし、同市で従来取り組んできた環境国際協力を一層効果的かつ総合的に推進し、これにより開発途上国の環境問題の解決、ひいては地球的規模の環境問題の解決に貢献することを目的としている。
(2) 国内での国際会議開催への協力
 国際会議の開催については、平成4年度において13団体から報告がなされており、湿原保全国際フォーラム(北海道)、環日本海環境協力会議(新潟県)、アジア湿地シンポジウム(滋賀県)、UNEP国際環境技術センター開設記念シンポジウム等が行われた。
(3) 地方公共団体職員の派遣と途上国からの研修員受け入れ
 環境分野での技術協力や行政施策の支援を行うためJICA事業等により開発途上国に派遣される地方公共団体の職員が年々増加しており、平成5年度には16団体から18件の事例の報告があった。具体的な長期派遣の例としては、東京都、奈良県よりタイ環境研究研修センター、名古屋市よりインドネシア環境管理センター等がある。なお、途上国からの要請に応じた地方公共団体職員の長期派遣を今後とも円滑に進めるためには、語学力の向上や派遣元組織の適切な理解と協力が望まれる。
 また、途上国からの研修員受け入れも盛んに行われており、JICA事業を中心に21団体24件の取組が報告されている。
(4) その他の途上国支援
 以上のほか、途上国における環境保全への支援として、途上国への清掃車両の譲渡や清掃技術に関する技術協力(東京都)、青年による東南アジアでの熱帯林保護活動を支援する「青年の翼事業」(福岡県)、上海市騒音マスタープランの策定支援事業(大阪市)などがある。
(5) 国際環境自治体協議会
 地方公共団体の国際環境協力は個々の自治体の取り組みの枠を超えて、さらに「国際環境自治体協議会」(ICLEI)という形で国際的な集まりを形成しつつある。ICLEIは、1990年にUNEPの後援のもとに開催された「持続可能な未来のための地方自治体世界会議」において設立されたものであり、本部はカナダのトロントに設置されている。そのアジア太平洋事務局・日本事務所は平成5年(1993年)10月に、(財)地球・人間環境フォーラムに設置された。我が国では、本年3月末現在、山梨県、北九州市等9団体が加盟している。ICLEIでは、持続可能な地域社会の形成を目指して4つの戦略プランを進めている。その第1は、加盟地方公共団体が持続可能な開発を地域内で進める力をつける支援をすることであり、第2は、加盟自治体のネットワークで確立されたノウハウをいかして気候変動や廃棄物処理などの具体的な問題を解決するための新しい手段や対策を試みることであり、第3は、「人間エコシステム・マネージメント」という地方公共団体行政の新しい理念を創造することであり、第4は以上の動きと国や国際機関での環境政策とを結び付けて地域での活動を支援することである。ICLEIの地域事務所は、欧州(ドイツ・フライブルグ)にも設立されており、このほか、1996年末までにアフリカ、中東、南米にも設立される予定である。

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