1 地域における新たな総合的枠組みの形成
(1) 環境基本条例等
地方公共団体においては、地球環境、都市・生活型公害などを含め今日の幅広い環境問題に対応し、地域における環境保全施策の総合的かつ計画的な推進を図る立場から、「環境基本条例」の制定や検討の動きが活発化しつつある。熊本県では、平成2年10月に「環境基本条例」を制定し、次いで川崎市が平成3年12月に制定している。両条例では、地球環境の保全への取り組み等を明記し、環境保全についての行政、事業者、住民の責務を掲げ、さらに政策の総合的推進のため「環境基本計画」の策定を規定している(川崎市では、本年2月同計画を策定)。
また、東京都においては地球環境問題も視野に入れた「環境基本条例」について平成5年11月懇談会報告を取りまとめた。また、大阪府においては地球環境問題も視野に入れた「環境基本条例」を本年3月に制定している。さらに、神戸市でも、神戸市環境基本問題検討委員会の答申、環境基本法の制定等を踏まえ、現行の「神戸市民の環境をまもる条例」を全面的に改正する条例が本年3月に制定された。
(2) 地球環境保全の視点を盛り込んだ方針、計画等
近年、地球環境保全を目的とした方針や計画などが策定されつつある。山梨県「地球環境問題への取組方針」(平成2年5月)、愛知県「地球環境問題への取組方針」(平成2年7月)、栃木県「地球環境保全への取組方針」(平成2年11月)など、平成4年10月現在で都道府県・政令指定都市のうち45団体で策定、あるいは検討されている。
また、平成4年5月には、東京都において、地球温暖化、酸性雨、オゾン層破壊など各種の地球環境問題への取組に関する「地球環境保全行動計画」が初めて策定された。さらに、その後静岡県「地球にやさしい実践行動計画」(平成4年6月)、神奈川県「アジェンダ21かながわ」(平成5年2月)、広島県「エコネット21ひろしま」(平成5年8月)、千葉県「地球環境保全計画」(平成5年11月)等で計画が策定されている。
地球サミットで採択されたアジェンダ21では、地方公共団体における「持続可能な開発」の達成に向けた取り組みを重視し、その地域での具体的な行動課題を示すローカル・アジェンダ21を策定することを呼び掛けている。上記の「アジェンダ21かながわ」及び「エコネット21ひろしま」はアジェンダ21にいうローカル・アジェンダ21として策定されたものであり、地球規模の問題意識の下に、市民や企業との対話を経て、行政のみならず市民や企業等の具体的な行動の方向を盛り込んで策定されている。この他にも都道府県を中心として多数の地方公共団体において策定が進められているか又は検討されている。環境庁においても、平成5年12月にローカル・アジェンダ21策定指針検討会を開催し、検討を行っているところである。
一方、環境を総合的に保全するため従来から地方公共団体が取り組んできた環境管理計画へ地球環境保全の観点を盛り込むことも試みられている。「北海道環境管理計画」(平成元年2月)、「大阪市環境管理計画」(平成3年7月)、「大阪府新環境総合計画」(平成3年9月)などは、いずれも地球環境保全への配慮が盛り込まれたものとなっている。
地球温暖化防止行動計画では、地方公共団体に対しても可能な取組を期待するとしており、国は地方公共団体の必要な協力を得るため、地球温暖化防止に係る地方公共団体の取組に関し、情報提供や基本的方向の提示、対策の実施に当たっての条件整備等地方公共団体に対する支援措置を講ずることとされている。このため、環境庁では、平成4年度より、地域の特定地区におけるまちづくりに各種温暖化対策を組み込むための地球温暖化対策地域事業実施計画策定に対する補助制度を創設した。さらに、今後の地方公共団体における地球温暖化防止施策のより一層の促進を支援するため、「地球温暖化対策地域推進計画策定ガイドライン」を作成し、これと併せて、本年度から地方公共団体の地球温暖化対策地域推進計画(マスタープラン)策定に対しても補助を行うよう制度を拡充した。なお、平成4年度に神戸市、大阪市、越谷市において策定された地球温暖化対策地域事業実施計画の概要は第3-2-13表のとおりである。
平成5年度には、地域推進計画が愛知県、兵庫県、佐賀県、大分県、仙台市、千葉市、福岡市で、また、地域事業実施計画が岡山県で、それぞれ環境庁の補助を受けて策定された。
(3) 横浜市では、平成5年12月に、地球温暖化や大気汚染、エネルギー資源の有限性などに対応するため、市民、事業者、行政が一体となってエネルギーの効率的利用を推進し、省エネルギー型社会への転換を図るための指針となる「横浜市エネルギービジョン」を策定した。同ビジョンでは、エネルギーの効率的利用の推進に当たっての目標としての基本方針として?「石油代替エネルギー供給目標」の前提となっている中、長期エネルギー需要見通しにあわせ、同市域における1990年度から2010年度の最終需要エネルギー消費の年平均伸び率が、1、2%を上回らない、?「地球温暖化防止行動計画」の目標の一つである「一人当たり二酸化炭素排出量について、2000年以降、概ね1990年レベルでの安定化を図る」ことを同市域においても達成する、こととしている。この目標達成のため、各部門において導入、推進すべき施策を具体的に示している。また、目標達成に向けた各種施策のエネルギー削減効果を試算している(第3-2-14表)。
(4) 地球環境保全の視点を盛り込んだ憲章、宣言等
地球環境問題に対する地方公共団体の立場を明らかにするものに宣言や憲章があり、東京都の「地球環境保全東京宣言(平成3年)」や福岡市の「環境にやさしい都市を目指す福岡市民の宣言」(平成4年)などが採択されている。