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第2章 健全な経済社会の発展を支える環境保全

 経済と環境の関係については様々な議論があり、環境保全が経済にマイナスの影響を及ぼすのではないかという懸念が、人々の間に根強く存在する。今日までを振り返ってみると、急速な経済発展に伴い産業公害が激化していた時期には、環境保全と経済成長を対立するものととらえるのが一般的であった。また、人類の存続の基盤である環境を将来に継承するために、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な経済社会を構築することの重要性が認識されつつある今日でも、「短期的、ミクロ的には環境への投資はコスト負担増につながり景気抑制に働く」とか、「業績が悪化している企業が多い現況では、環境への投資を経済的に負担と感じる企業が多いのではないか」などといった議論も見られ、環境と経済の関係について一致した結論が得られているわけではない。
 そこで、本章では、環境保全による経済の長期的動向への影響、環境保全によるマクロ経済への比較的短期的な影響、そして環境保全が個々の企業へ与えるミクロの影響を中心に、環境と経済との問題について多角的に検討を加えるとともに、こうした環境と経済の関係についての認識の変化を背景とする最近の産業界の環境保全へ向けた努力と今後の課題について見てみたい。

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