1 経済活動の進展と物質・エネルギー循環等の視角
我が国は、その経済活動に伴い、自然界から鉱物資源や生物資源などの資源を大量に採取し、利用した後、排水、排気ガス、ごみなどの不用物として再び自然界に排出している。こうした物質利用の状況を把握するために、我が国の経済活動に係わる物質の流れを総合的に計算した物質収支(マテリアル・バランス)を見てみよう。平成4年度には、国内外で合わせて約20億トンの資源が採取され、約6千万トンの輸入製品等と合わせて、合計で約23億3千万トンの物質が新たに我が国の経済活動に投入された。この結果、約7億9千万トンの不用物が排出され、約9千万トンの製品が輸出され、残り約12億4千万トンは建築物や耐久消費財として蓄積された。再生資源として再び投入に回されたのは約2億トンであった(第序-2-1図)。資源採取量と不用物排出量について見ると、3年度の資源採取量は20年前の約1.4倍、不用物排出量は同じく約1.8倍となっている。
我が国の経済活動に伴う資源採取量と不用物排出量は一貫して増え続けており、これによる環境への負荷は増加し続けている。こうした中で、我が国の経済を環境への負荷の小さなものとしていくためには、資源の採取と不用物の排出の質を自然の生態系に適合したものとしていくとともに、それらの量そのものを減らすことが必要となっている。
昨年の環境白書では、このために、有用性の低い物資や無駄なエネルギーの消費を減らすこと、持続可能な形で生物資源や自然エネルギーの利用を進めること、自然環境中に不用物を排出する場合は、無害かつ極力分解可能な形で行うことなどの取組が必要であるとの認識を示した。今回は、物質の循環を具体的に考察し、我々の社会活動が物質の循環にどのような影響を与え、また、それによってどのような環境への影響が生じているのかを見てみたい。もとより、物質・エネルギーの循環は極めて複雑かつ精妙であり、それらのすべてを把握することは大変に困難である。このため、ここでは特に、?都市・生活型公害を始めとする環境問題でよく見られる窒素、?我々の生活に欠くことのできないエネルギーに関して、主として化石燃料、?再生可能資源である森林資源について、主として近年その保全が危ぶまれている熱帯林を木材資源の観点から取り上げ、循環ないし移動の実態とその課題及びその解決のための糸口について検討してみたい。