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第2節 

1 地球サミットの成果

(1) 地球サミットの概要
 地球環境問題に関する世界的な関心の高まりを背景として、1992年(平成4年)6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおいて、持続可能な開発の実現のために環境と開発を統合することを目的として、「環境と開発に関する国連会議」(UNCED/地球サミット)が開催された。地球サミットは、また、環境問題を初めて国際的な場で議論した1972年(昭和47年)の「国連人間環境会議」の20周年を記念するという意味もあった。
 この会議には、「地球サミット」の名のとおり、世界中のほとんどの国(約180か国)が参加し、約100か国の元首・首脳に加え、約10,000人に及ぶ政府代表団が出席したといわれ、史上空前の大会議となった。また、この会議と並行して行われたさまさまなNGO(非政府組織)の会合には、我が国を含め世界中より、約24,000名の代表が参加したといわれている。
 地球サミットでは、人と国家の行動原則を定めた「環境と開発に関するリオ宣言」そのための詳細な行動計画である「アジェンダ21」及び「森林に関する原則声明」を採択したほか、別途交渉が行われてきた「気候変動に関する国際連合枠組条約」「生物の多様性に関する条約」が署名のために開放され、それぞれ150か国以上が署名した。
(2) 成果の概要
ア 環境と開発に関するリオ宣言
 環境と開発に関する国際的な原則を確立するための宣言。前文及び27の原則から構成され、持続可能な開発に関する人類の権利、自然との調和、現在と将来の世代に公平な開発、グローバルパートナーシッブの実現等を規定している(第8-2-1表)。
イ アジェンダ21
 環境と開発の統合のための21世紀に向けた具体的な行動計画。前文及び?社会的・経済的側面、?開発資源の保護と管理、?主たるグループの役割の強化、?実施手段の4部から構成されている。大気保全、森林、砂漠化、生物多様性、淡水資源、海洋保護、廃棄物等の具体的な問題についてのプログラムを示すとともに、その実施のための資金メカニズム、技術移転、国際機構、国際法の在り方等についても規定している(第8-2-2表)。
ウ 森林原則声明
 前文及び15の原則から構成されており、森林の経営、保全、持続可能な開発に貢献し、森林の多様かつ補完的な機能の保持と利用を行うための原則をうたった世界で初めての合意文書である。
 なお、地球サミットの際に署名のために開放された2条約の概要は次のとおりである。
ア 気候変動枠組条約(気候変動に関する国際連合枠組条約)
 大気中の温室効果ガスの濃度の安定化の達成を目的とし、気候変動に対処するための国際的な枠組みを定めることを内容とする条約。
イ 生物多様性条約(生物の多様性に関する条約)
 生物の多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用及び遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分を目的とする条約。


(3) フォローアップのための取組
 地球サミット直後の1992年(平成4年)7月にミュンヘンで開催された先進国首脳会議では、地球サミットで高まった機運を持続させるため、他の国々が先進7か国とともに地球サミット等のフォローアップを含めた地球環境保全のための行動をとることを要請した(第2節4.参照)。
 さらに、第47回国連総会においては、地球サミットのフォローアップについて議論され、?アジェンダ21の中で予定されていた「持続可能な開発委員会」の組織等につき合意がなされ、国連によるアジェンダ21の実施状況及び環境と開発の統合に関係する活動を監視するとともに、各国によるアジェンダ21の実施のための活動等についてまとめたレポート等を検討することなどを主要な役割とする国連機構として「持続可能な開発委員会」を設立すること、?1994年(平成6年)6月までに条約を完成させることを目的に「砂漢化防止条約交渉委員会」を設立すること、?遅くとも1997年(平成9年)までに環境と開発に関する国連特別総会を開催すること等を内容とする決議が採択された。
 この国連での決議を受け、1993年(平成5年)1月、「砂漠化防止条約交渉委員会組織会合」が開催され、条約交渉がスタートした。また、同年2月、「持続可能な開発委員会」が設立され、6月には第1回会合が行われることとなった。
(4) 我が国の地球サミットへの貢献
 我が国は、地球サミットの準備段階から、地球サミットヘ向けての合意形成に積極的にかかわってきた。地球サミット準備会合、気候変動枠組条約交渉会議、生物多様性条約交渉会議、「G7環境大臣会合」及び「第2回開発途上国環境大臣会議」等の各種会合に積極的に参加するとともに、平成3年7月には、アジア・太平洋地域の環境大臣等の出席を得て、東京で「アジア・太平洋環境会議」を開催し、この地域での各国の政策調整に主導的役割を果たした。また、4年4月には、地球環境問題を解決するための資金協力のあり方の議論を促進するため、「地球環境賢人会議」の開催に協力した。
 地球サミットには、我が国から中村環境庁長官(当時)を政府代表とする代表団が参加した。宮沢総理大臣は出席できなかったものの、総理演説は公式記録として会場で配布され、その中で、我が国は1992年度からの5年間に環境分野の政府開発援助を9千億〜1兆円を目途に大幅に拡充強化すること等、我が国が地球環境保全に重要な役割を担う決意であることを表明した。
 また、6月5日には、中村環境庁長官が政府代表演説を行い、我が国の過去の経験からみて環境保全と経済発展の両立は可能であり、我が国としても地球温暖化対策を始めとして地球環境問題の解決に向け最大限の努力をすることを表明した。
 さらに、我が国は、4年6月13日、気候変動枠組条約と生物多様性条約に署名を行い、他の諸国とともにこれらの条約に参加し地球環境の保全に向けて努力していくことを明らかにした。
 また、地球サミット後のフォローアップに関する国際的な取組に関しても、第47回国連総会に、中村環境庁長官が出席し、地球サミットの報告に関する一般演説を行う等積極的に貢献した。

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