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第9節 

3 環境保全活動の推進

(1) 環境保全活動一般
 環境問題に対する関心の高まりとともに、環境保全活動に参加したいと考える者が増加している。また、企業においても環境保全型の活動に対する関心が高まっている。
 しかしながら、どのような活動が「環境にやさしい」のか、どのように環境保全活動を実施するのか等、実行段階で様々な混乱や問題点が生じており、適切な情報提供を行うとともに社会的な条件整備を図る等、地域や企業における環境保全活動を一層促進していくための施策を充実していくことが必要となっている。
 環境庁では、地域における環境保全活動を促進するため、平成4年度においては、高知県において「環境保全リーダー研修会」を実施するとともに、「地域環境保全基金」を活用した地方公共団体の施策を促進するため、情報交換等の支援策を行った。
 また、市民による環境保全活動の中心となる民間団体の活動状況を全国的に調査するとともに、企業における環境保全活動の現状を調査し、環境にやさしい企業行動について、国内での取組事例を踏まえつつ、諸外国における取組も参考として、具体的な目安になる指針(環境にやさしい企業行動指針)の作成・公表を行った。
 さらに、環境にやさしい商品生産及び環境に配慮した消費行動を促進するため、エコマーク制度の指導育成事業を行った。
 通商産業省では、地球環境問題への企業の取組の促進を目的として、平成4年10月12日、広く産業界(87業界団体)に対し、自主的な環境問題への対応のための行動計画(環境に関するポランタリー・プラン)を作成するように要請した。
 また、平成4年11月25日には、産業構造審議会等三合同会議の報告書「今後のエネルギー環境対策のあり方について」がとりまとられた。この中で、環境調和型企業行動の促進が提言されたことを受けて、第126回国会に「エネルギー需給構造高度化のための関係法律の整備に関する法律」及び「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」を提出し、成立した。
(2) 民間団体による地球環境保全のための活動の推進
 近年、欧米諸国を中心として、民間団体による地球環境保全のため様々な活動が活発となっている。特に、今年度は、平成4年6月にプラジルで開催された地球サミットに際し、世界各国から集まった民間団体がグローバル・フォーラムを開催するなど、その活動は世界の注目を浴びることとなった。
 我が国においても、国内の環境保全にとどまらず、開発途上国を中心とした海外においても、植林や野生生物の保護などの環境保全活動を展開する民間団体が増えており、これらの活動に対する国民や企業の関心も高まってきた。地球環境保全のためには、こうした草の根の環境協力や幅広い国民の参加による足元からの行動は極めて重要であり、特に我が国においては、自らの経済社会活動の見直し、開発途上国への支援強化の両面で民間団体(いわゆるNGO)の活動の強化が必要であることから、これらの活動を支援することが喫緊の課題となっている。
 このため、平成4年5月の地球環境保全に関する関係閣僚会議の了承、6月にとりまとめられた新経済計画の中で、地球環境保全のための活動を行う民間団体の役割の重要性とこれらの活動支援の必要性が強く指摘されるに至っている。
 このような情勢を受け、地球サミットの場において、政府は、民間資金を中心とした民間活動への資金支援の仕組みを整備することを表明し、これを受け、政府の出資及び民間の出捐による「地球環境基金」を環境事業団に創設することとし、平成5年度予算案に地球環境基金関係経費を盛り込むとともに、「環境事業団法の一部を改正する法律」を平成5年2月12日に閣議決定し、国会に提出した。
 同法案では、環境事業団に「地球環境基金」を置くこととし、事業団は同基金により、我が国の民間団体や海外の民間団体による開発途上地域の森林再生、野生生物保護等の環境保全活動、我が国の民間団体が国内で行う緑化、リサイクル等の環境保全活動に対し助成を行うとともに、これらの民間活動の振興に必要な情報提供、研修等を実施することとしている。
 なお、外務省のNGO事業補助金及び小規模無償資金協力、郵政省の寄附金付郵便葉書等による寄附金の配付及び国際ボランティア貯金制度等においても、対象の一部として民間団体の環境保全活動が取り上げられ、支援が行われている。
(3) リサイクル活動の推進
 「再生資源の利用の促進に関する法律」及び廃棄物の再生を明記した「廃棄物の処理及び清掃に関る法律」の改正法が整備されたことを受けて、様々な主体によるサイクル活動の一層の促進を図るこが必要となっている。
 このため、毎年10月の「リサイクル推進月間」において、リサイクル関係省庁である経済企画庁、環境庁、大蔵省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省及び建設省は、再生資源の利用の促進に関する国民の理解と協力を得るため、広範な普及啓発活動を実施することとしており、平成4年度においては、各種シンポジウムの開催、リサイクル推進功労者の表彰等を行った。
 環境庁では、リサイクルに関する各種の調査研究を進めるとともに、市況の低迷等により、リサイクルが経済的に引き合わず、円滑に進まない事態も生じていることから、リサイクル経済社会活動の中に定着させていくため、リサイクルに関する経済的手段のあり方について検討を行った。
 経済企画庁では、各都道府県に設置されている省資源国民運動地方推進会議を通じ、リサイクル活動団体へ支援を行っている。
 厚生省では、新たにごみ減量化促進対策補助金の制度を設け、ごみの資源化ルートの構築や組織づくり等に対して補助を行うとともに廃棄物の減量化や再生利用を促進するための各種啓発活動を行った。
(4) 空き缶の散乱防止
 缶飲料の生産量は急速に増大し、昭和56年には100億缶程度であったものが、平成4年度には309億缶を超える状況にある。これら缶飲料の空き缶の一部が道路、海岸・河川等に散乱し環境美化の観点から問題となっている。環境庁が平成3年度に全国の約700市区町村について実施した調査の結果では、近年の傾向と同様、散乱状況に顕著な改善が見られず横ばい状況にある。
 空き缶散乱防止対策としては、それぞれの立場から様々な取組が行われている。地方公共団体においては、それぞれの地域の実情に応じた各種の対策を講じており、空き缶散乱防止に関する条例や要綱の制定、投げ捨て防止のキャンペーン、清掃の強化等のほか、一部の地方公共団体等においては、空き缶回収機を活用して、一定の枚数を集めると図書券等に交換できる補助券を発行する方式や預り金方式(デポジット)などの導入により空き缶回収等を行っている例もみられる。
 国においては、関係11省庁からなる「空き缶問題連絡協議会」における申合せに基づき、普及啓発活動の充実を図っているほか、環境庁及び厚生省は「環境美化行動の日」の設定を地方公共団体に呼びかけ、空き缶散乱防止を含め、広く環境美化のための国民各層の積極的行動の推進を図っている。
 事業者においては、普及啓発活動を全国的に行うとともに、美化キャンペーンとしてごみ持ち帰り袋配布、くずカゴの設置、全国各地での空き缶回収活動の推進及び自動販売機脇への空き缶入れの設置の促進等を行っている。
 住民等においては、空き缶持ち帰り運動やごみの分別収集に協力するとともに、全国各地で散乱空き缶の回収、資源化等でユニークな活動を行っている。

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