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環境白書の刊行に当たって

国務大臣 環境庁長官 地球環境問題担当
林 大幹
 平成5年の環境白書をここに公表いたします。
 毎年の白書は、主に前年度のでき事を報告していますが、昨平成4年度は、内外の環境行政にとって大きな節目の年でした。世界では、4年6月に国連が地球サミットを開き、また、日本では、5年3月に政府が「環境基本法案」を決定し、国会に提出しました。環境行政は、今、大きく変わろうとしています。
 今年の環境白書は、こうした大きな転換点に立って、私達や私達の子孫が、また、世界の人々が、環境と共に末長く暮らしていくために、特に大切と思われることを一つに絞って訴えています。それは、今日見られる人と人との関係を見直し、より協力的なものへと築き直していくことです。
 環境の将来を考えると、暮らし方、仕事の進め方、生産や消費などをこれまでのとおりに続けていくわけにはいきません。しかし、暮らし方などを変えることはつらいことです。これに伴って、今までにはなかった余分な手間や費用をかける必要が生じますが、それぞれの人が自分の損得だけにこだわっていては、こうした手間などは十分にかけられず、結果として、環境は守られなくなっています。他方、しっかりした責任、納得できる役割分担などの下、高い見地に立って、人々の間で互いの長所を生かし、短所を補うような積極的な協力が進められるようになれば、それぞれの負担も節約でき、社会全体としての成果もずっと大きなものとなります。
 それでは、私達の営む経済、社会の中の様々な関係にはどのような至らない点があるのでしょうか、また、どうしたら望ましい協力関係を築いていけるのでしょうか。これらの点を国民の皆様一人ひとりが自分の問題として考えていただく上で、この環境白書がお役に立つことを祈っております。
平成5年6月

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