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第4節 

1 野生生物の保護管理の推進

 環境庁が実施した「緊急に保護を要する動植物の種の選定調査」によって、我が国に生息・生育する多くの野生動植物が絶滅の危機に瀕していることが明らかにされた。世界的にも絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護は緊急の課題となっており、従来の鳥獣保護施策の強化に加え、我が国に生息する野生動植物全般を包含する体系的な保護対策の推進が課題となっている。
(1) 絶滅のおそれのある野生動植物保護のための新たな法制度の整備
 環境庁では平成3年10月1日付けで、自然環境保全審議会に「野生生物の保護に関し緊急に講ずべき保護方策について」の諮問を行った。審議会では絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存の在り方に関する検討が行われ、平成4年2月24日付けで、同部会の答申として、絶滅のおそれのある動植物の種の保存に関する基本的な考え方と保護のための法制度の整備が早急に必要との意見が示され、これを踏まえて制度的な検討を進めた結果、第123通常国会に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律案」を提出したところである。
(2) 絶滅のおそれのある野生生物の保護対策の推進
 絶滅のおそれのある種の保護対策として、以下のような調査や事業を実施した。
ア 環境庁が作成したレッドデータブック掲載種のうち約70種を対象に、地域の専門家や学会の協力を得て生息状況のモニタリング調査を実施した。
イ 特殊鳥類に指定されているアマミヤマシギ、キンバト、ヤイロチョウについて生息状況の現状調査を実施した。
ウ 我が国には2羽のみとなったトキについて、日中共同のトキ保護増殖事業として、平成2年3月に雄1羽(ミドリ)を中国北京動物園に移送し、中国産のトキと番いで飼育を継続している。また、佐渡においては、今後の日中共同トキ保護協力事業の拠点とするため、平成3・4年度の2カ年で新佐渡トキ保護センターの整備に着手した。
エ イリオモテヤマネコ及びツシマヤマネコについて、保護増殖対策の一環として、冬期間の給餌及び生態観察を実施した。
オ カワウソについて、生息状況を把握するとともに今後の保護増殖対策を検討するための緊急調査を実施した。
カ タンチョウについて冬期間の給餌を実施した。また、生息数については557羽を確認した。
キ シマフクロウについて、巣箱の設置及び給餌事業を実施した。また、北海道全域での分布状況を把握するとともに、今後の保護方針を策定するための生息特別調査を実施した。
ク 下北半島のサル、ライチョウについて、生息状況の監視や生息環境保全のための措置を講じた。
ケ 絶滅のおそれのある淡水貝類、カワシンジュガイ及び絶滅のおそれのある植物オニバスについて、人工的な繁殖のための事業を実施した。

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